
- ――Tomatikaさんが絵を描きはじめたのはいつ頃からですか。
- 幼稚園の頃からです。小さいときから絵が好きで、描いたものをほめてもらえるとすごくうれしかったのを覚えています。今にして思うと、それが絵を描き続ける原動力になっているのかもしれません。 ただ、絵が好きだからといって特別に専門的な勉強をしたということはなく、小学生の頃にマンガクラブに入っていたくらいで、それ以外は全部独学で描いてきました。
- ――学生時代はどんなイラストが好きでした?
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大きく分けると2つあって、ひとつはディズニーものです。小さい頃からディズニーランドが大好きだったんです。はじめて行ったときに、エンターテイメントとしての完成度の高さにものすごく衝撃を受けて、ファン雑誌を買うくらいがっつりとハマってしまいました。
もうひとつはゲーム関連のイラストです。姉の影響で、マンガやゲームといったものに触れる機会が多くて、自分でもRPGをよくやっていました。当時はスクウェアやエニックスの作品、特に『ファイナルファンタジー』シリーズにかなりのめりこんでいて、中でも『ファイナルファンタジータクティクス』は、そこからさかのぼって同じスタッフが手がけた『タクティクスオウガ』をプレイしたくらい大好きな作品でした。好きになった一番の理由は、吉田明彦さんのキャラクターデザインですね。あの絵にはすごく感銘を受けました。吉田さんの絵との出会いは、今の私を形作っているというくらい重要なものですね(笑)。

- ――吉田明彦さんの絵柄のどこに一番魅力を感じましたか?
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私が生まれ育った函館は異国情緒溢れる街だったこともあり、いわゆる日本的な絵柄より外国風のものが好きでした。それで吉田さんのイラストから香る洋書の挿絵のような中世ヨーロッパの雰囲気と、品の良い絵柄にものすごく魅力を感じたんだと思います。
- ――デジタルでイラストを描きはじめたのはいつからですか?
- 中学生のときに両親がパソコンを買って、その中に入っていたペイントツールに触れたのが最初ですね。それを使ってよく遊んでいました。その後は、高校生になったときに自分用のパソコンを買ってもらったので、『ファイナルファンタジー』のファンサイトのチャットなどに出入りするようになったんですけど、そこで「お絵描き掲示板」「お絵描きチャット」というものの存在を知りました。まだ落書き程度のものでしたが、デジタルで絵を描くようになったのはそこからですね。当時はまだ色数も16色しか扱えず、今と比べると機能もだいぶ制限されたものでしたが、それでもすごく楽しかったことを覚えています。特に絵のうまい人と交流できることがうれしくて、ミーハーだったこともあり、うまい人を見つけるとがんばって交流しようとしたりしてたんです(笑)。実際、当時イラスト掲示板で交流したことがあった方の中には、竹さんや岸田メルさんといった今では第一線で活躍しているイラストレーターの方もたくさんいて、私もなんとなく鼻が高いんです。
- ――その頃に使っていたツールというのは?
- 最初はマウスを使っていました。90年代の頃はまだ、マウスだけで絵を描いている人も多かったんですよ。ただその後、ペンタブレットのほうが感覚的に線が引けるよと薦めてもらったのをきっかけに、ワコムの「FAVO」を買いました。その後、高校を卒業してからは看護学校に入ったんですけど、その頃に「Intuos3」に買い替えて、社会人になってからは「Cintiq 21UX」を購入しました。ソフトは線画でたまにSAIを使うくらいで、基本的にはPhotoshopひとすじです。
- ――学生時代からプロのイラストレーターを目指していたんですか?
- 専業のイラストレーターというのは選ばれたほんの数人がなれるものと思っていたので、職業としては考えていませんでした。高校卒業後に看護学校へ行ったのも、看護師として堅実に就職したいと思ったからで、絵はあくまで趣味の範囲として続けていました。高校のときに立ち上げたサイトがあったんですけど、そこに絵をアップするくらいでしたね。ただサイトへは私の期待以上にたくさんの反応をいただけて、そのことが励みになっていました。

- ――そこからプロのイラストレーターになったきっかけは。
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卒業後は看護師として地元の病院に就職したんですけど、その後も暇を見つけてはサイトの更新を続けていたんです。そうしたらサイトを通じて、カードゲーム関連などのイラストの依頼が少しずつ届くようになってきたんですよ。ただ当初は、それ一本でやっていけるようなものではなかったので、平日は病院で働きつつ土日に仕事の絵を描く、という兼業の生活を続けていました。
転機となったのは2008年ですね。ひとつはフライト・プランさんの『ポイズンピンク』というゲームのメインキャラクターデザインのお仕事、もうひとつはスクエア・エニックスさんの『LORD of VERMILION』というカードゲームのお仕事です。特に『LORD of VERMILION』は、憧れの吉田明彦さんも参加されていたので、「一緒の仕事ができる!」と舞い上がりました(笑)。そこで、その頃はちょうど貯蓄もある程度たまっていて、また親もイラストレーターへの道を応援してくれたので、それなら「一生に一度くらい自分のやりたいことやってみるか!」とフリーになる決心をして上京しました。
- ――上京してからの仕事はどうでしたか?
- ありがたいことに順調で、カードゲームや携帯電話アプリゲームのお仕事などをいただけました。基本的には在宅で、メールでイラストの発注をいただいたらそれを描いて納品するというスタイルでした。ただ段々と、単にイラストを描くだけじゃなく、シナリオライターの方やディレクターの方と話し合いながら、ゲームの製作という部分にまで参加したいと思うようになってきたんですよ。そんな中、上京して2、3年経った頃に、『LORD of VERMILION』から『LORD of VERMILION Re:2』までアートディレクターを務めていた河崎淳さんから、「アートディレクターに興味ない?」とお話を頂いて。それで「やってみたいです!」と即答したら、なんと『LORD of VERMILION Re:2』の「Ver Re:2.1 ~慟哭~」から、メインのカードアートディレクターをやることになってしまって(笑)。てっきり河崎さんのアシスタント的な仕事に就くものとばかり思っていたのでとても驚きました。

- ――カードアートディレクターの仕事内容というのは?
- カードゲームなのでまずは40人くらいのイラストレーターさんに声をかけてから、参加いただけるそれぞれの作家の方へどういった内容をお願いするかという企画会議をやり、その後のスケジュール進行、メールでの連絡、納品の締切管理をはじめ、カードの校正や印刷への立ち会いまで、カードイラストに関わるディレクション全般です。こういった調整をていねいにやらないとゲームとして統一感のあるものはできないだろうなと考えて、ずいぶんと熱心に打ち込んでいました。その分、自分が絵を描くという作業にはあまり時間を割けなかったんですが、その代わりクライアントさんからは高評価をいただけました。そのおかげか、次の『LORD of VERMILION Ⅲ』の製作にも関わらせていただけることになったんです。しかも今度は、カードイラストに加えてゲーム内部に使用するイベントイラストの監修やアバター製作などにも参加させてもらうことができました。すごくやりがいのある仕事でしたね。
- ――その後フリーになったきっかけというのは?
- やりがいがある分、大変な仕事ではあったのでちょっと疲れてしまって(笑)。また、絵のうまいイラストレーターさんや優秀なスタッフさんたちとやりとりしていくうちに、美術の学校などで専門的な勉強をしてこなかったことに少しコンプレックスを抱くようになってしまったんです。このままの自分では、昔感動をもらったような素敵なエンターテイメントの仕事ができないのではないかと。それでもう一回、絵をきちんと勉強し直したいと思うようになり、今はどこかに所属しての仕事は一旦ストップして、もう一度自分の力を磨きたいなと思っているところです。
- ――次のステップのための充電期間ということですね。
- そうですね。もちろんイラストのお仕事自体は継続していて、『LORD of VERMILION』シリーズは変わらず描いていますし、『ファミ通』さんではファンイラストという形で『ファイナルファンタジー』の絵の依頼をいただいたりもしています。あと何より、『電撃PlayStation』さんで『タクティクスオウガ』のイラストを描かせてもらったんですよ。これは個人的にすごくうれしかったです。

- ――今後やってみたいことなど、お仕事の目標はありますか?
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まずは少し休ませてもらって、その間にもっと絵の地力をつけたいと思うのですが、その後は今までのような受け身ではなくて、もっと自分から攻めの姿勢で動いていきたいですね。企画書を一から書いて、自分がやりたいものをもっとはっきりと打ち出していければなと。目標としているのは『ベイグラントストーリー』です。この作品もキャラクターデザインは吉田明彦さんが手がけられて、中心的な制作スタッフも『ファイナルファンタジータクティクス』と重なる作品なんですけど、世界観・シナリオ・ゲームシステムが一体となった理想のゲームのひとつだと思っています。やっぱり私は統一された世界観のあるアドベンチャーRPGが好きなんです。なので理想としては立ち上げから、それが無理でも、こうしたタイプの作品になるべく多く関わっていけたらうれしいですね。
また目標というよりは儚い夢くらいのものなのですが、映画にも関わってみたいと思っています。小さい頃から、B級映画好きの父に80年代のスピルバーグ監督であるとか、あの辺りの映画をよく観せられてきたんですよ。その影響もあって、最近のハリウッド映画に多いデジタル技術を前面に押し出したきれいで迫力満点のスペクタクルよりも、パペットを使った『グレムリン』のようなレトロで味わいのある映像のほうが好みで、最近では『パシフィックリム』や『ヘルボーイ』のギレルモ・デル・トロ監督が大好きなので、ああいうタイプの映画に登場するクリーチャーのデザインをやってみたいです。

- ――最後に、次回登場するイラストレーターさんのご紹介をお願いします。
- タイキさんです。10代の頃からお絵描き掲示板では有名な方で、現在はフリーのイラストレーターとして活動していらっしゃいます。『LORD of VERMILION』シリーズをはじめ、各種設定画など幅広いお仕事に参加されていて、うまいのに筆も早いというすごい方です。もともとは背景までしっかり描き込まれたイラストを得意とされていたのですが、キャラクターも魅力的で、新しい『LORD of VERMILION Ⅲ』ではメインキャラクターを16人もデザインしているんです。そのうえ、大量の設定まで手がけるという大活躍ぶりでした。今後のゲーム業界を引っ張っていってくれる方だと思います。今や『LORD of VERMILION』の顔とも言えるタイキさんを、この機会にもっと広く知ってもらえたらうれしいですね。
ゲーム紹介
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