イラストレーター
かざあな『WIXOSS-ウィクロス-』(タカラトミー)のカードゲームイラストや、FDzの1stアルバム『ミュージックサワー』ジャケットなどの作品を担当してきたイラストレーター・かざあなさんによる、液晶ペンタブレット「Cintiq 27QHD touch」を使ったライブペインティングを公開!
かざあな インタビュー
- ―― イラストレーターのみなさんは物心つく前から絵に親しんでいる方が多いようですが、かざあなさんもそうでしたか?
- 物心つく前から描いてました(笑)。自分が絵描きでもないのに、親も絵を勧めてきたんですよね。そんな流れで絵を描いていたら、小学校の頃にはクラスでいちばん上手くなっていて、何か絵を描く必要があったらその仕事を任されるということが、中学卒業くらいまでは続いていましたね。でも、その反動なのか、自分から絵を描く行事などに積極的に取り組んだことは一切ありませんでした。中学では美術部に一応入っていたりもしたんですが、実際には一度も行ってないです。
- ―― では、絵の勉強は独学でされた感じなのでしょうか。
- 単に好きなことをやっていただけですね。たとえば僕は『週刊少年ジャンプ』が好きで、特にきたがわ翔さんや萩原一至さんの美しい絵柄に憧れたんですよ。それで、部活動には行かなかったくせに、アクリル絵の具を用いて模写しまくっていた感じでした。いちばん影響を受けたのは『ストリートファイターⅡ』のイラスト担当のあきまんさんです。あきまんさんの画集をたくさん買い込んで、とにかく家の中でひたすら真似しまくりましたね。
- ―― その成果が技術に結びついていたんですね。高校以降はどのような進路でしたか。
- 家庭の事情で定時制高校に入学したんですよね。高校生の身分ながら自活をする必要があったので、昼間はバイトを頑張って夜に学校に通うという生活をしていました。そのため、絵を描く余裕は高校の4年間でほとんどありませんでしたね。ただ、頑張って働いたおかげでいくらか蓄えもできたので、高校卒業後には札幌の専門学校に入って、やりたかったイラストの勉強を始めました。ところが、この学校は一年でやめてしまったんですけれども。
『Ayumi. 10th Anniversary Collection ~あゆコレ~』
ジャケット
©かざあな/TEAM Entertainment Inc.
- ―― えっ、苦労して入学された学校だったんですよね?
- この学校ではデジタル制作のカリキュラムがまだ整っていなかったんですよ。ちょうどその頃、テレビでCAPCOMを取材した番組を見る機会がありました。そこにあきまんさんと西村キヌさんが出演していて、彼らがmacを使って制作をしていたんですよね。それを見て「俺もデジタルでやってみたい」と思って学校にかけあったのですが、なかなか難しかったんです。ただ、自分がアナログでちまちま絵を描いている間に、世の中の人がどんどんデジタルに移行していく様子がありありと想像できたので、なんとしてもこの流れに追いつきたいと思ってすぐにmacを買いました。それから東京でなら最先端の環境で勉強できると思ったので、勢いで上京することも決めてしまいました。
- ―― そんな早くからデジタルへの興味をお持ちだったんですね。その後、東京ではどのように活動されたのでしょう。
- ゲームメーカーの下請けにあたる会社の求人を何件か受けまして、すぐに入社できました。何やら300人受けて2人しか受からないというような倍率の求人だったらしくて、運がよかったんですよね。その会社で僕は3Dテクスチャの仕事をしていたんですが、どんどん仕事も覚えるし、担当できる業務も増えるしで、運だけでなく調子もよかったんですよね。とうとう社長にわざわざ呼ばれて褒められるような状況にまで至っていました。
『コミック・サードアイ』創刊準備号表紙イラスト
©かざあな
- ―― 素晴らしいですね。これまでの努力やデジタルへの興味が実を結んだということでしょうか。
- ところが、あまりにも褒められたせいで、勘違いしちゃったんですよね。自分が天才だと思ってしまって(笑)、これならもう一人だけで仕事をやっていけるんじゃないか、だったらそっちの方が自由でよいのではないかと思って、半年くらいで会社をやめてしまったんです。ずいぶん引き止められたんですけどそれも振り切って。でもやめた後は地獄でした。イラストの仕事なんて全然取れないので、日雇いで力仕事をやる毎日で、12年に渡ってバイト生活をし続けることになりました。
- ―― その間、イラストとはどのように関わっていたのですか。
- 仕事とは言えないような仕事をごくたまにやったりはしていました。たとえば似顔絵を描くサイトに登録してアイコン用の似顔絵を描いたり、同僚が劇団員だったので小道具用のイラストを提供したりです。転機としましては、仕事をやめて7年後くらいにあきまんさんのファンサイトに出会ったことですね。そこでは多くの上手い人たちが絵を投稿していたので、僕もそれに刺激されて参加し始めました。それからは、昼はバイトでしたが、夜は絵を描くということを毎日続けました。始めてから6年間はその調子でやっていて、途中でブログやpixivなども始めたので、それらにも大量の絵を投稿するようになりました。この修業のおかげで少しは絵が上達したのかなと思っています。
『天球儀』カバーイラスト
©かざあな/Mynavi Publishing Corporation
- ―― 商業的な活動を始めたきっかけを教えてください。
- 2010年頃にソーシャルゲームの流行があったことで、ブログなどを通じてイラストの仕事依頼を頂くようになりました。ブログやpixivで熱心に自分の存在をアピールし続けた甲斐がありましたね。このアピールが結構色々なところに届いているのか、企業からだけでなく個人の方からの仕事依頼もよく頂くようになりました。そのおかげか、3年くらい前からようやく絵の仕事だけに専念することができるようになりました。
- ―― イラストを描くときに気をつけていることはありますか?
- ダサくしないっていうことですね。もともと制作上のこだわりはなくて、できるだけクライアントの意向に沿うという仕事の仕方をしてきました。が、言われるままにやった結果不本意なものができあがることがあったりもしたんですよ。たとえばやりたいことを無理やり全部詰め込んだような指定をもらうことがありますが、こういうものはダサくなりがちだと思います。また、描きたい内容と構図がちぐはぐな場合も、やっぱりいい絵にはなりません。たまに、構図を指定した上に内容をゴテゴテに詰め込んだ指定が来ることもあります。格好よければいいんですけど、そういうときってやっぱり格好わるいんですよ。だから、要素を絞って、納得できる構図をしっかり模索することが大事だと思いますね。
『WIXOSS -ウィクロス-』「羅石セリクガ」カードイラスト
©かざあな/TOMY
- ―― 現在の制作環境を教えてください。
- Windows10のマシンで、CLIP STUDIO PAINTとPhotoshop CCを使用しています。ペンタブレットはCintiq 24HDを使用しています。もともとはCintiq 13HDを使用していたのですが、大きいサイズに乗り換えました。実は、購入の決め手になったのが、まさにこのDrawing with Wacomの近岡さんの動画を見たことだったんですよね。とても参考になりました。
- ―― 今回Cintiq 27QHD touchを使ってみた感想はいかがですか?
- Cintiq 24HDと感想が共通する部分が多いのですが、導入する前は気になっていた色味や視差の問題がぜんぜん無かったので驚きました。またCintiq 13HDのときは原寸で見たときにずれているということがあったのですが、こちらではそういうことがなくて素晴らしいです。またこれは液晶ペンタブレット全般の話ですが、板型のペンタブレットから乗り換えた結果、線画制作の作業が十倍くらい効率よくなりました。線画が必要でしたら絶対にお勧めです。今すぐ導入されるべきだと思います。
- ―― 最後に今後の展望を教えてください。
- まだまだ自分はイラストレーターとしては駆け出しの状態なのですが、CDジャケットのような看板になる仕事を任せてもらえるようになったことはとても光栄なので、こういった仕事を積極的にやってきていきたいと思います。それから継続的にやっている「WIXOSS」の仕事も、もっとクオリティを上げて名実ともに自分の代表作であるというところまで持って行きたいですね。
『ミュージックサワー』ジャケット
©かざあな/FDz
取材日:2016年3月15日
インタビュー・構成:梵天編集部
かざあな
デジタルのテクニックを駆使した 万華鏡のように繊細なデザインから、体温が伝わってくるようなリアルな人間の表情までを描き分ける新進気鋭のイラストレーター。『WIXOSS-ウィクロス-』(タカラトミー)のカードゲームイラストや、FDzの1stアルバム『ミュージックサワー』ジャケットなどを担当。キャラクター系のホビーから、アイドルやアーティストのCDジャケット、果ては似顔絵制作まで活動範囲は多岐にわたる。
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