イラストテクニック第126回/乃絵のえる
第126回は、乃絵のえるさんの登場です!
SAIを使ったイラスト作成過程を紹介します。
各項目のサムネイルをクリックすると、制作画面のスクリーンショットか、拡大画像を見ることができます。
ラフ
SAIでラフを描いていきます。
今回のイラストはほとんどの工程を
SAIで仕上げていきます。
テーマは「秋の暮れ」。
秋の終わりの少し寂しい雰囲気、かつ夕暮れと紅葉の色を使って、
綺麗な一枚にすることを目標に構図を考えていきます。
パースやデッサンはあまり気にせず、
こうしたいな、というイメージを念頭に置きながら描いていきます。
ここで配色もおおまかに決めていきます。
逆光で光と影のコントラストの強い、幻想的な一枚にしたいので、
この時点で光の光源や入り方、おおまかな色味と印象を固めていきます。
イラストはラフを詰めれば詰めるほど、後々考えがブレず、迷うことも少なくなり作業も楽になるので、ラフはじっくり詰めると良いと思います。
線画作成
ラフの上にレイヤーを作成し、線画を作成していきます。
私の場合、SAIの筆ペンツールをカスタマイズしたものを使って線画を起こします。
ペンの大きさは4~8px。
レイヤーフォルダを作って、キャラと背景で線画データを分けておきます。
また、塗りの際には非表示にする予定のアタリ線に色をつけておきます。
線画は見えない部分もしっかり描き込んでおくと、塗りで細かい変更をする場合、柔軟に対応できるので全て描いておきます。
特に仕事で頼まれて描くものは「ここは見えるように」「やはりこちらの方が」など、要求や変更することもありえるので、対応しやすくするために見越しておくのも大事です。
最終的な線画は、色分けに使用する線画だけにするので、見えない部分はマスクで消しておきます。
色分け
ラフを見つつ、まずはキャラクターの色分けを行います。
SAIのバケツツール[領域検出元]で[検出元に指定したレイヤー]を選択し、先ほど線画で分けた「キャラ」のレイヤーフォルダを検出元に指定します。
これで塗りたい箇所をクリックするだけで簡単に色を置けるので、色のレイヤー分け作業が楽にできます。
線のフチ等、完全に塗ることができない細かい部分は、塗り漏れがないかチェックして、塗り潰していきます。
また、この時点で目と眉のレイヤーを別のレイヤーフォルダに移動します。
仕上げの際、髪で隠れる目の部分をうっすら見せる作業をするので、目と眉は「キャラ」から独立させた方が作業しやすくなります。
背景もキャラと同じように色分けを行いました。
舞っている紅葉は作ったブラシをアタリ線の部分に置きました。
キャラもそうですが、この時点で置く色は「だいたい使いたい色」で置いています。
あとで色調整ができるデジタル彩色の強みをふんだんに活かしたいと思います。
背景の塗り
次の工程でキャラを塗る、という方が多いと思いますが、私は背景から塗っていきます。
特に今回は背景の演出がキャラの印象に深く関係するので、背景を塗った後に「キャラはやっぱりこう塗った方がよかった」など、
背景につられて塗りがブレないようにしたいためです。
Photoshopに移り、奥の背景から着手して、空や雲、作成した紅葉ブラシで木の形を塗っていきます。
光源は、キャラの真後ろにある奥の太陽なので、逆光を意識して形を作っていきます。
カーテンに透ける窓枠を作ります。
カーテンのレイヤーの上に乗算レイヤーを作成し、彩度の低い紫系の色を使って窓枠の形を塗ります。
また、窓のガラスもはめ込んでおきます。
ちょっと紅葉が固いのでPhotoshopに移って[ぼかし][移動]ツールでブラー効果をつけます。
紅葉は風に乗って画面下に落ちていくため、斜め下45度、30pxぐらいでぼかしました。
これで背景はだいたい作業完了です。
肌の塗り
SAIへ戻って、次はキャラを塗ります。
肌レイヤーに新規レイヤーをクリッピングし肌の影から塗っていきます。
肌の影色は、
・暖色方向へ色相をずらす
・明度をあまり下げない
・彩度を若干高めに調整する
キャラの塗りにはSAIの水彩筆をカスタマイズしたものを使用します。
1.形をつけて塗る筆(左)
2.柔らかく塗る、または調整する筆(右)
基本的な影やスカートから落ちる影などの固い影は1の筆、
太ももなど円柱に近い形を塗るときははエアブラシで色を置いて、2の筆で柔らかさの調整を行います。
目の塗り
髪の塗り
髪は生え際と流れを意識して毛先に向かって塗ります。
逆光なので、光が当たりやすい部分もさらに意識して影1の色で形を決めていきます。
ここで大体のキャラや雰囲気の印象も決まると思っているので、じっくり考えながら塗り進めています。
透明感が欲しいので顔周りの髪に、肌影1~影2色の中間あたりの色をエアブラシでふわっと塗ります。
また髪が流れて光の影響を受けやすくなっている部分にオーバーレイレイヤーを重ね、髪が光っているような効果をのせます。
服の塗り
効果
Photoshopへ移動し、覆い焼きレイヤーやオーバーレイレイヤーで、キャラの周りの光が当たる部分へ色を置きます。
キャラのフチ、髪の隙間などにエアブラシで置くように塗ると、奥から光が漏れるような表現ができます。
効果を含めたキャラクターのレイヤーを2つコピーして、新規レイヤーフォルダに格納し、フォルダ内のそれぞれのレイヤーを、
左:レイヤーモード:乗算、不透明度30%
右:レイヤーモード:オーバーレイ、不透明度30%
として、ガウスぼかしを30pxぐらいかけます。
最後にレイヤーフォルダの不透明度を20%にして、キャラクター全体にグロー効果(光っているような効果)を付け加えました。