株式会社ナンバーナイン (No.9) 様

国産webtoonのヒット作とともに
成長を続ける彩色クリエイターの液晶ペンタブレット活用法とは

© 江藤俊司/疾狼/3rd Ie/ナンバーナイン

株式会社ナンバーナイン

西澤 朱里 氏(ウェブトゥーン アートディレクター)
専門学校デジタルアーツ東京のコミックイラスト学科(現:マンガ・イラスト学科)で学んだ後、2022年4月よりナンバーナインに入社。
同社のオリジナルwebtoon作品「神血の救世主〜0.00000001%を引き当て最強へ〜」の立ち上げから着彩を手がける。

株式会社ナンバーナイン 西澤 朱里氏

2016年創業の株式会社ナンバーナインは、「漫画をつくる」「漫画を届ける」「漫画を広げる」の3つの領域で漫画の価値を最大化するIP創出カンパニーです。漫画とwebtoon(スマホに最適化された縦読みフルカラーコンテンツ)という2つのコンテンツフォーマットをベースに、作品の企画・制作をワンストップで行っています。同社のオリジナルwebtoon作品である『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』は、LINEマンガで月間販売額1.2億円を突破するなど(2024年1月)、いままさにグローバルにも広がるマンガ市場を目指す国産webtoon業界を牽引しています。

その「神血の救世主」の着彩およびアートディレクションを担当しているのが、同社クリエイティブ局クリエイティブ部第2スタジオ所属の西澤 朱里氏。幼少の頃から絵を描くのが好きで、高校時代に絵の仕事に就きたいと思い立ち、高校卒業後に専門学校デジタルアーツ東京のコミックイラスト学科(現:マンガ・イラスト学科)に入学。2年生の冬頃、学校にナンバーナインからの求人案内が届き、先生からの勧めもあって2022年1月からアルバイトとしてクリエイティブ業務に着手しました。それまでwebtoonにさほど興味を持っていなかった西澤氏ですが、実際に仕事をしていくうちに興味を覚えるようになり、同社からも実力を評価されてそのまま4月から正社員として働くようになりました。

「webtoonは漫画でありながら、1コマ1コマにイラストレベルのクオリティが求められます。私は漫画もイラストも両方好きで描いていたので、この仕事はまさに私に向いていると感じました」と西澤氏は話します。

西澤氏が担当する着彩は、作家やクリエイターから線画にベタ塗り(下塗り)されたものを受け取り、そこに陰影を付けたり効果を入れたりして勢いや臨場感を生み出し、読み手により物語にのめり込んでもらえるような作品に仕上げていきます。同社では通常この作業を1作品につき1週間に1話、月に4話というペースで行っていますが、入社当初は西澤氏1人で回していたといいます。

「神血の救世主」の話数の公開が進むにつれてビュー数が急激に増え続けるようになり、同社ではメンバーを増員して体制を強化し、西澤氏は現在「神血の救世主」チームのクオリティ管理に関わるアートディレクターとして活躍しています。

同社のwebtoon制作は現在3つのスタジオで行われており、そこでの作業は一律でワコムの液晶ペンタブレット Wacom Cintiq 16とCLIP STUDIO PAINT EXが使われています。こちらのツールを使用するメリットについて、西澤氏は次のように話します。

「CLIP STUDIO PAINT EXは、漫画制作に特化した機能を搭載していて、中でも複数ページを一括表示して作品全体を見渡しながら作業できる点は、webtoon制作においても最大のメリットといえます。また、作業中のファイルをクラウドに保存して、他のメンバーが入ったり出たりして共同で作業が行えるので、ファイルの受け渡しの煩わしさがなくとても効率的です。その際にファイルを別々のパソコンのモニターで表示させると、モニターの精度によってだいぶ色が違って見えることがあるのですが、ワコムの液晶ペンタブレットの液晶画面は一貫した色で表示されますし、こちら側で意図した色味に合うように調整しやすいのもメリットの一つですね」

15.6型液晶ディスプレイのWacom Cintiq 16の使用感については、「画面が大きすぎると、頻繁に行う描画のストロークが大きくなって疲れが出てきちゃうんですね。着彩の場合、わりと細かいところの集中作業が多いので、このくらいのサイズ感がちょうどいいです。パソコンを置いたり、プレビュー用の縦長ディスプレイを置いて作業したりすることもあるので、机の上はなるべく広いスペースを確保しておきたいというのもあります」

Wacom Cintiq 16は専用スタンドを装着することで、角度を19°から68°まで調整することが可能。西澤氏は画面を最大限に起こした状態で作業するといいます。

「なんでそんなに立てるの?ってよく聞かれるんですが、このほうが首が疲れないのと、私の場合、手首をそんなに動かさず、指先を使ったストロークで描くことのほうが多いので、立てた状態のほうが身体的負担が少なくできるというのもあります。一時期、美大を目指してずっとキャンバスに絵を描いていたこともあって、そのときのスタイルが身についているのかもしれませんね」

“ パソコンのモニターに依存せずWacom Cintiq 16でカラーを調整できるので複数のメンバーでファイルを共有して作業する際の色合わせに便利です。”
(西澤氏)

変化が激しいエンタメの世界において、既存の枠組みにとらわれず、新たな挑戦を続けるナンバーナイン。その中で、「神血の救世主」という国産webtoonナンバーワンといえる作品とともに著しい成長を遂げてきた西澤氏に、自身の今後の展望について伺いました。

「最近は作業分担もできるようになったこともあり、もう少し視野を広げてwebtoon以外に横読み漫画の制作にも興味がありますし、趣味でやっているMV制作も仕事に取り入れられたらいいなと思っています。webtoonにしても、現在はトレンドである男性向けバトルファンタジーが中心ですが、Vチューバーの衣装デザインなんかも趣味でやっていて、それが活かせるような女性向けロマンスファンタジーの作品にも挑戦してみたいですね」

表現と思考のプロセス

STEP 1 _

ネーム:ネームはいわば作品の設計図。後に続く各工程への伝わりやすさが求められます。

STEP 2 _

線画:ネームの指示に沿った線画が入ります。読者の目を引く魅力的なキャラクターが描かれます。

STEP 3 _

下塗り:着色前の下準備として、パーツごとに設定に沿った色を塗り分けします。

STEP 4 _

着色~仕上げ:場面に沿った着色を行います。エフェクトや装飾仕上げは作品のクオリティがぐっとあがる大事な工程です。

クリエイティブソリューション
この事例のソリューションや
製品に関するお問い合わせはこちら