技術者のひらめきをそのままに
設計図面ワークフローのDXを推進
スズキ株式会社
四輪車両技術企画部設計支援グループ
大村 昭 氏
「現場の技術者のペーパーレス化への思いが、会社全体を大きく包んで行くことに期待しています。」
スズキ株式会社
四輪プラットフォーム設計部
コンベプラットフォーム設計グループ 係長
岩石 遼太 氏
「目の前にあるものに直接ペンで描く。これに勝る効率的なやり方はありません。」
スズキ株式会社四輪車体設計部
ドア設計グループ 係長
大角 拓矢 氏
「技術者の作業の多くは、ペンで描くことなんです。だからこのDXが大きな意味を持つと考えています。」
スズキ株式会社
https://www.suzuki.co.jp/1909年創業の日本を代表する100年企業であり、四輪車・二輪車で世界にその名をとどろかせるスズキ株式会社の自動車設計部門の皆様に、ワコムの液晶ペンタブレットによるDX推進についてお話を伺いました。早くからIT化を進め、常に最新の技術を取り入れる自動車設計の技術者が、これまで頑なに紙にこだわったものとは何だったのでしょうか。今、それを液晶ペンタブレットで デジタル化することによって、目指す未来についてお話を聞きました。
ワークフロー
設計業務における情報共有とグループワークの効率化を念頭に、技術者の作業のアナログ部分を生かしたままデジタル化を推し進める
これまでの課題
•アイデアを描き共有するという技術者の作業の中心にある紙の使用を削減したい
•文化と言葉に壁のある遠隔地とのコミュニケーションを、描くということで解決したい
•描くことの利点を残したまま、紙を使うことのデメリットを解消したい
取り組み
•液晶ペンタブレットの導入により、描いたアイデアのスムーズな共有と紙の使用量の削減を実現
•オンラインミーティングなどでの利用によって、遠隔地とのコミュニケーションがよりスムーズに
導入効果
•手書きの機密情報の保管や廃棄をデジタルデータとして簡単かつ適切に行えるように
•ポンチ絵から設計製図までの流れのすべてを記録することで、より詳細な技術継承への道筋を開拓
1. ポンチ絵を描くという作業のDXのために導入
スズキ株式会社では、現在全社をあげてDXを推進しています。常に先進的な技術を取り入れることに余念のない 設計部門でも、まだまだDXの余地は多いと現場の技術者の方は言います。
「技術者の仕事の多くは、いわゆるポンチ絵を描くことなんです。新人研修でも、イラストを描く研修があるほどです。思いついたアイデアをイラストや図にして描き留める。また、メンバー間での情報の共有や伝達にもイラストは重要な手段なのです。こうした、自動車設計の技術者の作業と液晶ペンタブレットの親和性の高さについては、以前からずっと気づいていました。また、私自身、学生時代からワコムのペンタブレットを使っていて、液晶ペンタブレットには憧れていたんです。入社後、デザイン部門にすでに導入されていた液晶ペンタブレットを見て、設計部門でも、きっと作業の効率化につながるだろうと考えていました」と四輪車設計部門の技術者である岩石氏は語りました。
また、液晶ペンタブレット導入の責任者として指名された、同じく四輪車設計技術者である大村氏は、導入決定前の印象を次のように振り返りました。「液晶ペンタブレットが設計部門のDXに大きな意味を持つことは、容易に想像できました。ですが、まずはテストをして実際にどれほどの効果があるのか検証することから始めました」
2.液晶ペンタブレットを使った実証実験で、作業時間の大幅短縮を確認
「まずは使ってみて、その良さを肌で感じてもらおう」そう考えた大村氏のチームは、デザイン部門が使用していた旧モデルの液晶ペンタブレットを借り受けて実証実験を始めることにしました。この液晶ペンタブレットの導入によって解決が期待される課題の一つとして、技術者の机にある紙の管理問題を、同じく四輪車設計技術者の大角氏に説明していただきました「。ある日、突然浮かんで来るモノづくりのアイデアを、サッと書き留めておくための紙の束が、いつも技術者のデスクの上にあります。そんなメモには非常に大事なことが描かれているにも関わらず不要だと思って捨ててしまったり、無くしてしまったりすることもしばしばです。ときには、簡単に処分できないような機密情報が書かれることもあります。こうした紙の束の代わりに、液晶ペンタブレットで画面に直接書き込んでいけば、後から必要になった情報を探し出すことも容易になり、機密情報の保管や廃棄もデジタルデータとしての確実な取り扱いが可能となるのです」
さらに大村氏のチームでは、紙との比較だけでなく、同じデジタルデータを扱う一般的なアプリケーションとの作業効率の比較も行ったそうです。それは、ある部品の画像写真を使って、接合面の伱間を指摘して修正を依頼するという工程において、Officeソフトを使った場合と、液晶ペンタブレットで直接画像に書き込んだ 場合の比較でした。結果は、これまで普通にやっていたOfficeソフトでの作業に比べ、液晶ペンタブレットでは、作業時間を半分以下に削減できたそうです。「これまでの部品画像の上にテキストボックスを配置して、指示をタイピングして入力するというスタイルに対して、画面に映る部品の画像に、直接ペンで指示を書き込むという直感的な作業がもたらす効率の向上を、数値で証明することができました( 岩石氏 )」
3.手書きだからこそ伝えられるコトがある
インドに設計部門を持つ同社では、日常的にインドの技術者との打ち合わせが行われているそうです。そんな遠方にいる相手との打ち合わせの場面でも、液晶ペンタブレットが活躍すると岩石氏は言います。「音声や映像を使ったオンラインミーティングで、一つの設計図やメモ書きを挟んでインドと日本で書き込みをし合う。リアルタイムで『YES』や『OK!』といった書き込みが加わっていくことで、これまで以上にスムーズなコミュニケーションを実感できています」
「正確な数値の上に成り立つ自動車設計。そんな自動車設計に携わる技術者同士のコミュニケーションにこそ、微妙なニュアンスを伝える手段が必要なのです(大角氏)」手書きだからこそ伝えられる温度感など、液晶ペンタブレットを導入したことで目には見えない効率化が実現しているのだそうです。
まだ社内には紙がいいと考えている方が多くいると言います。しかし、そんな方々も必ずしもDXに反対されている訳ではないそうです。こうしたDX推進という同じ目標を持ちながらも、紙の良さを重要視する方々の意見こそが、ペーパーレス化実現への課題を浮き彫りにしていると考えているそうです。「でも、そんなみなさんもワコムの液晶ペンタブレットの書き味や使い勝手については認めているんです(大村氏)」
4.技術継承で大切なことは、結果だけでなく「なぜそうなったか」という過程
先輩達が手がけてきた技術を、遡って検証する必要がでてくることがあると岩石氏は言います。なぜこの形になったのか、そこには、設計作業の途中経過に隠れて見えなくなっているものがあるのだそうです。
「今考えると、なぜこうしたんだろうと思われることも、当時の技術者間ではコンセンサスが得られていたんです。それはなぜなのか。こうした過程での技術者の考え方こそ、後輩に技術継承を行う上で大切にしなければならない要素なんです(岩石氏)」
最初のメモ書きから、技術者間の意見交換を経て、最終確認まで。あらゆる段階で行われる手書きという作業を、しっかりとデジタルデータとして残すことができるのが、入力端末としての液晶ペンタブレットであり、それを今導入することが、技術者の使命だと語りました。
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