赤ペン先生にとって手書きは第二の顔
株式会社ベネッセコーポレーション
1955 年に「株式会社福武書店」としてスタートし、1990 年には『Benesse=よく生きる』という企業理念を打ち出し、教育から生活や介護など事業を行っています。
近年の少子化、IT化、グローバル化の波、お客さまのニーズの多様化などの変化に対応しながらお客さまの課題を解決し、安全で安心してご利用いただける商品・サービス提供を行っています。
本プロジェクトの目的
脱ゆとり教育対策として2011 年度より教科書が平均25%増量に伴う
- 子どもの教科学習におけるつまずき・苦手の解消
- 学習内容の定着といった家庭ニーズへの対応
- 講座としての提供価値をさらに強化すること
株式会社ベネッセコーポレーションの通信講座「進研ゼミ小学講座」では、2011 年4 月からスタートする新年度プログラムにおいて、小学5~6 年生を対象とした新たなサービスとして「、添削指導問題のネット返却」をスタートしました。赤ペン先生の添削サービスは、受講生一人一人と向き合い、学習の添削・指導を行うために、紙と赤ペンをツールとして利用していました。今回の『添削指導問題のネット返却』サービスでは、ワコムのペンタブレット『Intuos4』を添削・指導用の手書き入力デバイスとして採用し、赤ペン先生の財産とも言えるきれいな手書き文字を忠実にデジタルで再現します。さらに子どもの学習ペースに合わせ、受講生が動く指導内容を閲覧し、問題の解答手順や指導を順番に確認することができるので、学習効果アップが望めます。またネット返却を選択した場合、添削問題の返却期間も今までの半分の1 週間程度に短縮することが可能となりました。
本プロジェクトの経緯・背景
2011 年度から使用される小学校の新教科書はページ数が平均で約25%まで増加します。今回の新サービス導入は今後高まると考えられる、子どもの教科学習におけるつまずき・苦手の解消、学習内容の定着といった家庭のニーズに対し、講座としての提供価値をさらに強化することを目的に2011 年4 月よりサービスを開始しました。
進研ゼミ小学生講座における手書きへのこだわり
進研ゼミ小学生講座では、約10,000 人の赤ペン先生が受講生より送られてくるテスト問題の添削・指導を手書きで行っています。本サービスは本講座が始まって以来、約30 年もの長い間、受講生や保護者の方々からとても評判の良いサービスです。
受講生や保護者の立場から考えると、担任制をとっている赤ペン先生の気持ちや真剣さが受講生に伝わり、先生の人柄も表す手書きを『第二の顔』として捉え、子どもたちの学習効果アップや定着化を促進する手書きによる添削・指導サービスを重要視されています。また、サービス提供の立場から考えると、学習効果を上げられるようできるだけ早く答案をお返しするために、システム化(デジタル化)は避けては通れない課題でもありました。これまで受講生に評価されている価値を担保しながら、今まで通りの紙と赤ペン同様な使い勝手で赤ペン先生が添削・指導が行えるようシステム化するためには、デジタル手書きの実現が必要不可欠でした。ベネッセ様ではデジタル手書きへの取組みは今から約4 年も前から始められており、手書きへのこだわりが伺えます。
デジタル手書きに最適な入力デバイスとは
手書きのできる入力デバイスについては、タブレットをはじめ、デジタルペンや手書き風フォントなどいろいろ検討されました。
「デジタルペンは、せっかくデジタルで添削が行える環境が整っているにもかかわらず、必ず紙に書いて利用しなければならないため、候補から外しました。また手書き風フォントも、やっぱり偽者なんですよね。私たちよりも子供たちの方がその点は敏感なんです。また赤ペン先生が添削を行う環境を考えると、今まで紙にペンで行っているので、それにできるだけ近い形で実現することも必要でした。実際に書いた手書きにこだわると実はそんなに選択肢はなく、グラフィックデザインの分野で多くの実績があるIntuos4を手書き添削・指導用の入力デバイスとして採用することに決めました。」
今回の添削指導問題のネット返却」サービス開始にあたり、ベネッセ様ではワコムのペンタブレットIntuos4 が数千台導入されました。
今回採用されたペンタブレットについて
ペンタブレットは、PC 上のデジタルファイルへ手書き入力を可能にする入力機器で、当社はコンシューマ向けモデルからプロフェッショナル向けモデル、業務用モデルまで幅広い製品を提供しています。今回進研ゼミで採用されたIntuos4 は、グラフィックスデザイン、画像編集、映画制作、アニメーション、工業デザインなどの分野において、高品質なデジタルコンテンツを制作するツールとして、世界中の多くのクリエイターに利用される高機能モデルです。ベネッセコーポレーションにおいては、答案の添削を行う際の自然で滑らかな書き心地や表現性、そして書き込むスピードへの追従性が高く評価され、採用に至りました。
小学高学年生の学習課題
小学高学年生になると、段階的に学習内容が難しくなります。
「本当は、自分自身で課題を見直しして、間違えた問題を理解し、次へ進む必要があります。その課題を理解せずに進めてしまうと、これから先、中学生や高校生に進学するにつれ、ますますわからないことがどんどん出てきてしまいます。また、保護者のかたとの学習の関わりも薄らぐ頃であり、子供たちは自分の間違いと向き合わなくなります。」実際に小学校高学年の学習状況の調査結果でも、毎回提出されるテスト課題の得点が低下する傾向があり、また学習におけるつまずきも増える傾向にあります。
添削指導問題のネット返却サービスとは
このような小学高学年生の学習課題をサポートするために、受講生が教材に取組んだ結果と向き合うきっかけ作りとして『学習へのモチベーションアップ』と『勉強が分かるようになったという実感向上』を図り、さらに「進研ゼミ中学講座」で効果・実績を上げている答案の早期返却システムを活用した「進研ゼミ小学講座」5・6 年生向け添削指導問題のネット返却サービスが企画されました。
『紙とペンと手書きという温かみのある赤ペン先生の指導にデジタルが本当に必要なのか?』という懸念はありました。しかし最終的には、紙とペンの代わりにワコムのペンタブレットを利用することで今までと同様な操作感で忠実に手書きのデジタル化を実現し、さらに答案の返却が早くなるだけでなく、『動く指導』という新しい付加価値学習サービスを提供できるようになります。
実際に新サービスの評価レビューを受講生や保護者の方々へ行った際、『先生がそばで教えてくれているみたい』という声が上がっており、新サービス導入に向けて手ごたえを感じたそうです。
期待する効果・メリット
1.動きのある指導で学習効果アップ
高学年生になると、例えば算数では図形や抽象的なものを扱い、問題がどんどん難しくなります。赤ペン先生の指導の様子が動くことで、受講生は問題のどこから順番に見ていけばよいか分かり、さらに手書きの効果で赤ペン先生がそばについていてくれるような感覚で答案を振り返ることができます。
2.赤ペン先生の添削・指導に最適な環境を提供
添削・指導を行うユーザインターフェースや機能などの工夫を凝らし、これまでの紙と赤ペンで指導していたときと同様の感覚で指導できるようにしています。デジタル化に伴い、修正やレイアウト調整がきれいに行いやすくなりました。
3.システム化に伴う効率化
これまでは、担任の赤ペン先生が添削指導を行うために提出された答案を機械や手作業で仕分け、赤ペン先生に届けるという物流部分に、大半の時間がとられる仕組みになっていました。今回の添削指導問題のネット返却サービスでは、子どもが郵送で提出した答案をスキャニングし、そのデジタル化したデータを担任の赤ペン先生がワコムのペンタブレットを使い、手書き添削・指導を行います。これにより従来2~3 週間かかっていた返却期間が、ネット返却選択の場合1週間程度に短縮でき、物流の時間の削減が可能になりました。
今後の展望
添削指導問題のネット返却サービスは、今年の4 月から開始し、既に赤ペン先生から『これまで紙で書いたのと同じレベルの文字を書けるようになれる』『デジタル化によって、より子どもと向きあって指導しやすくなった』、また受講生からも『赤ペン先生が目の前で指導してくれているみたいでやる気になる』『動く指導で分かりやすくなったし、見直しが楽しい』などサービスを利用した多くの感想が寄せられています。
「始まったばかりのサービスなので、これから少しずつ育てていかなければならないと思っています。赤ペン先生のパフォーマンスがサービスそのものです。バックオフィスのスタッフと赤ペン先生が、子どもたちに届けたいサービスやそこに向ける想いを一つにし、1人ひとりの子どもと向き合った指導サービスを届けていきたい。手段を中心に考えるのではなく、サービス基本である学習を中心に考えてサービスを展開していきたいと思っています。また今後も受講生が利用する端末は、ノートPCや最近話題のスレート端末など時代とともに変化すると思います。時代の変化に対応し、学習サービスに付加価値をつけて行きたいと思います。さらに子供たちや赤ペン先生より寄せられる声もしっかりと受け止め、サービスへ反映させていきたいと思っています。」
教育に対するベネッセ様の熱い思いが伝わってきました。
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