液晶ペンタブレットという共通言語を持って。
2Dと3Dを超えた強力なコラボレーションが唯一無二のキャラクターデザインを創り出す

© CAPCOM
越智 猛(キャラクターデザイナー)
映像制作会社でCMやアニメの絵コンテ作りに携わった後、キャラクターデザイナーとしてカプコンに入社。「ストリートファイター6」のキャラクターデザインを担当するほか、一部で絵コンテやストーリーボードの作成にも携わる。
イ・ハンソル(3Dモデラー)
韓国出身、京都精華大学で2Dおよび3Dアニメメーションを学んだ後、2018にカプコンに新卒で入社。入社後すぐに「ストリートファイター6」の開発初期段階にチームからアサインされ、キャラクターのモデル制作を担当する。

1983年の創業以来、ゲームエンタ-テインメント分野において数多くのヒット作品を創出してきた日本を代表するゲームメーカー、株式会社カプコン。「バイオハザード」、「モンスターハンター」、「ストリートファイター」など国内外に多くのファンを抱えるシリーズタイトルを保有しています。
人物からモンスター、衣装や装備まで、その個性あふれるキャラクターの原型となるキャラクターデザインを担当する越智 猛氏。前職ではテレビCMやアニメなどの絵コンテを描いており、カプコン転職後はキャラクターデザイナーとして「ストリートファイター6」の立ち上げから制作に携わっています。越智氏は、ラフスケッチから細部の書き込み、キャラクター性を活かした色彩およびディテールの仕上げまで、全ての工程をAdobe Photoshopとワコムの液晶ペンタブレットの組み合わせで行っています。
「前職のときに、絵コンテやストーリーボードなどはずっとアナログで描いていたんですよ。それからペンタブレットに興味を持ち始めて、いざ使ってみると本当に紙に鉛筆で描くような感覚だったので、すぐに移行しました。それからはずっとデジタルです。今ではデジタルのほうに体が完全に馴染んでしまって、もう戻れないですね」(越智氏)
越智氏が普段使用している液晶ペンタブレットは、Wacom Cintiq Pro 27。それまで使用していた24型と比べて、「最初に見たときは、『あれ、24より小さいんじゃない?』と思うくらいコンパクトに感じましたね。それでも実際の画面は大きいので驚きました。あまり奥行きのない机にも置けて、この大画面で角度調整や回転もスムーズに行えるところが気に入ってます。あと僕の場合、キーボードを液晶画面の上の部分にかけて、画面の1/5くらいキーボードで隠すように使っているんですね。Wacom Cintiq Pro 27は、画面の上に拡張テーブルを取り付けてそこにキーボードを置けるようになっているので、画面を隠さずに今までのスタイルで作業できるのは非常に助かります」と話します。

“ 大きさを感じさせない大画面液晶ペンタブレット。自分の描くスタイルに合わせたカスタマイズ性も大きな魅力です。”
(越智氏)
キャラクターデザインが仕上がると、そのデザイン画をもとにモデラーが3DCGを作成していきます。現在、「ストリートファイター6」のルーク、リリー、JP、豪鬼といった個性的なキャラクターのモデリングとテクスチャー制作を担当しているのが、韓国出身のイ・ハンソル氏。日本のアニメ作品に影響を受けて、2012年に京都精華大学に留学。2Dアニメーションを学んでいるうちに、3Dにも興味を覚え、2Dと3Dの両方のスキルを身につけた上で、カプコンに新卒で入社しました。

ハンソル氏は幼い頃からデジタルペイントに親しみ、中学時代に両親からワコムの板型ペンタブレットをプレゼントされたのが、ペンタブレットを使い始めるきっかけになりました。現在では、Wacom Cintiq Pro 27を使ってキャラクターデザインのモデリングとテクスチャー制作を行っています。
「最初にMayaで基本的な形を作って、ディテールアップにZBrushを使っています。それをベイキングした後に、Adobe Substance 3D painterで色塗りしたり、質感を調整したりして仕上げます。特にZBrushでのスカルプティングは、そのままモデルにダイレクトに造形しますので、直感的に作業できる液晶ペンタブレットは必要不可欠です。モデルを回しながら自分の引きたいところに引きたい線を引けるというのは大きな強みだと思います」(ハンソル氏)

“ なんといっても直感的にモデルを造形できる点が1番のメリット。
ZBrushによるスカルプティングとテクスチャーペイントには液晶ペンタブレットは絶対に必要不可欠なツールです。”
(ハンソル氏)
キャラクターデザイナーとモデラーはお互いの意見を汲み取りつつ、自分なりの解釈も加えながら二人三脚で制作します。越智氏とハンソル氏の場合も、お二人の話を聞く中でチームワークの強さを感じます。
「元々CMとかアニメのコンテ作りは2Dがメインだったので、そこまで強い面取りとかカメラビューの回り込みを意識することはなかったのですが、カプコンで3D ゲームを作るようになってからは、立体感とか整合性とかを強く意識しながら、どこまでこのデザインを3D に持っていけるかを常に考えるようになりましたね。でもあまり3Dに寄せすぎてフォトリアルになると、キャラクターの持ち味が薄れてしまうので、顔やシルエットはかなりデフォルメを効かせたいという思いもあり、いつもそのせめぎあいです」(越智氏)
「越智さんや他のデザイナーの方がそういった3Dの配慮をしてくれる分、こちらもできるだけ2Dが狙っているキャラクターの個性やデフォルメ感をきちんと画面に出したいと思いながら作業しています。私は個人的にカプコンの昔の極端にデフォルメされた絵が好きで、それがカプコンの強みでもあると思っています。技術がどんどん進化して、映像がどれだけリアルに近づいても、その強みはそぎ落ちないようにバランスをとってデザインするように心がけています」(ハンソル氏)
今後の展望として、越智氏は3Dの理解を深めるためにZBrushを使ってみたいと、またハンソル氏は2Dを触ってもっと画力を上げていきたいと話します。さらなるスキルを身につけたお二人による新たなキャラクターデザインが、今後も世界中のファンを魅了することでしょう。
表現と思考のプロセス

STEP 1 _
キャラクターに関する仕様書、設定をもとにラフからディテールを追加しつつ、キャラクターのシルエットや特徴を反映させた全体像を作っていきます。

STEP 2 _
キャラクターは最終的に3Dになることから、様々な感情、表情を多数描き起こし、モデラーが制作しやすいようにデザイン設定を整えて完成です。

STEP 3 _
キャラクターデザインをもとに、3Dモデルの作成に取り掛かります。筋肉隆々さと異形さを感じられるように、ZBrushでスカルプトしながら作り上げていきます。

STEP 4 _
プレイヤー目線での操作や見栄えを考え、顔面のしわや表情、髪の毛などのディテールを追加して、最終チェックを経てキャラクターモデルの完成です。
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