鹿児島大学病院 様

電子サインで進化する医療文書管理:鹿児島大学病院のDX事例

院内DX:同意書のペーパーレス化と手書きサインの融合

医療機関においては、診療記録とともに、検査や手術に関する同意書などの書類を効率的に管理・運用することが求められます。これらの文書には患者および医師の手書きサインが必要な場合が多く、ペーパーレス化を推進するには、電子文書の利便性と手書きサインの信頼性を両立する仕組みの構築が不可欠です。

鹿児島大学病院の取り組み

鹿児島大学病院では、2024年に発表された「鹿児島大学病院改革プラン(令和6年度〜令和11年度)」において、院内のDX化を推進しています。この取り組みの一環として、文書作成システムおよび液晶サインタブレットを導入し、同意文書のペーパーレス化を実現しました。

鹿児島大学病院(令和6年航空写真)

今回、同院の医療情報部 岩穴口孝氏、杉野サエ子氏、長樂美咲氏にインタビューを行い、導入課題と効果について、詳しくお話を伺いました。

左から杉野サエ子氏、岩穴口孝氏、長樂美咲氏

導入前の課題:「電子カルテシステムとのデータ連携」と「ペーパーレス化」

岩穴口氏は、導入前の課題を次のように語ります。

「当院では、2006年より電子カルテシステムの導入が広く進んでいました。電子カルテ稼働時から、WordとExcelをベースとした文書入力支援システムを連携させ、同意文書などの院内書類を作成・管理してきました。一方、従来の入力支援システムは新たなシステムやデータベースとの連携が難しく、WordやExcel内に登録されたデータの利活用や集計ができないといった、運用上の課題がありました。また、院内のペーパーレス化にも課題がありました。従来の運用では、入力支援システムで作成した文書を印刷し、手書きでサインを行う必要があったため、多くの紙書類が発生していました。これにより、業務効率の低下や文書管理の負担が増大しており、ペーパーレス化の推進が求められていました。」

医療文書作成システム「DocuMaker」を導入した理由

同院では、2024年9月に院内の情報システムおよび電子カルテ更新の予定がありました。そのタイミングで、記録の効率化やデータの二次利用といった課題を一通り解決できるシステムの調査を行い比較検討した結果、株式会社ファインデックスが提案している「DocuMaker」の採用に至りました。

DocuMaker(ドキュメーカー)とは

文書作成システム「DocuMaker」は株式会社ファインデックスが提供する医療現場に特化したソリューションです。専門知識の有無にかかわらず、ユーザーが簡単に書式を作成できるほか、書類記載時には過去の文書情報や異なるシステムの情報と効率的に連携できます。また、記載内容をデータベース化し、統計・解析・検索など、幅広い用途で二次利用することも可能です。

参考URL:https://findex.co.jp/products/medical/documaker/index.html

その決め手になったポイントを岩穴口氏は次のように語ります。

▼電子サイン機能
「本格的にペーパーレス化を進めるために、紙の出力自体が不要な電子サインシステムを導入したいと考えていました。そこで、電子サインが可能なワコムの液晶サインタブレットと、電子サイン機能を備えたDocuMakerを導入することにしました。」

▼一元管理
「システム更新のタイミングでは、文書スキャンシステムも見直しの対象となりました。従来のシステムでは電子署名・タイムスタンプ機能が搭載されておらず、スキャン後の紙の諸記録の管理に係るコストに課題がありました。また、持込画像管理システムも老朽化が進んでおり、入れ替えが必要でした。
DocuMakerは「文書作成」を担うシステムですが、今回の更新を機に、既存のファインデックス社製品である、紙文書管理システム(C-Scan)と紹介情報・画像管理システム(PDI+MoveBy)も導入。併せて、文書受付窓口を設置し、患者紹介情報の一元管理を実現することを目指しました。ファインデックス社製品に統一することで1台のサーバーで運用できるという大きなメリットが得られました。」

ワコムの「液晶サインタブレット」を導入

DocuMakerとともに、電子サインのためのツールとして同院が採用したのが「液晶サインタブレット」でした。

その理由について、岩穴口氏は以下のように語ります。

▼最小限の機能で導入コストを抑えられる
「情報システムやデバイスに潤沢な予算を投じることが難しい状況でした。そのため、コストを抑えつつ、必要最小限の機能を備え、要件を満たす液晶サインタブレットを選びました。」

▼共有利用時の利便性と、持ち運びやすいサイズ
「当院の電子カルテ端末は、ノートPCとデスクトップPCを合わせて約2,000台ありますが、すべてに液晶サインタブレットを設置することはできません。そのため、各部署に数台を配置し、利用者が必要に応じて使用します。そのため『持ち運びやすい』『サインができる』というニーズを満たしている点も重要なポイントになりました。」

▼シンプルなデバイス、誰でも直感的に使える
「『サインをする』という目的に特化したシンプルなデバイスです。医療スタッフも患者も、特別な説明なしに抵抗なく使用できると考えました。」

▼ワコム製品の機能・価格、そして実績への信頼
「ワコムのこれまでの豊富な導入実績から、信頼感がありました。 特に、トラブルが少ない点は大きな決め手でした。機能・価格・信頼を総合的に判断し、このデバイスを採用するに至りました。」

導入効果

文書作成システム「DocuMaker」および「液晶サインタブレット」による導入効果について、長樂氏は以下のように語ります。

▼時間削減:
「医師事務作業補助者は、紙の書類のスキャンやファイリングに多くの時間を費やしていましたが、DocuMakerと液晶サインタブレットの導入により、業務負荷を大幅に減らすことができました。書類整理に費やしていた時間は、『医師の代わりに記録を書く』『診断書を作る』など、より直接的に医師の事務作業を軽減する業務へ充てられるようになりました。」

▼膨大な紙の保管場所を確保する必要がなくなる:
「当院では1日約1,500件、約2,500枚以上の紙の書類をスキャンし患者ごとに管理しています。システム導入により、ペーパーレス化が進み、書類の印刷・スキャン・ファイリングといったプロセスが軽減されました。また、物理的な保管場所のコスト削減にもつながっています。」

▼病院全体で問題視していた「患者誤認」の予防
「電子サインの導入により、紙の書類が不要となり、患者誤認(書類の渡し間違い)が起こらない診療の流れを構築できました。患者誤認は重大なインシデントにつながる可能性があるため、病院全体として積極的にリスクヘッジに取り組んでいました。書類の渡し間違いは、紙の書類だからこそ起こる問題です。電子サインの導入により、紙の書類そのものが不要になり、書類の渡し間違いも防げるようになったのは、非常に大きな効果だと考えています。医療事故の分析や調査を担う医療安全部門からも、積極的に導入を進めてほしいとの要望が寄せられています。」

想定外の導入効果

▼人や書類の移動が不要に
電子サインの導入に伴い、どの診療科のどの書類で電子サインが活用されているかを調査したところ、救急科で積極的に活用されていることが判明しました。
一般的な入院診療においては、入院初期に医師が文書を用いて手術や麻酔に関する説明を行い、患者やご家族が「説明を受け、理解しました」と同意書へサインをする必要があります。しかし、救命救急の現場では、その場でサインを得ることが難しいケースも少なくありません。救急外来・病棟で処置を受け、状態が落ち着いた患者は一般病棟へ移動するため、以下のような運用が必要でした。

  • 救急科の医師が病棟まで出向いてサインをする
  • 病棟で作成された書類を救急科まで送付し、医師がサインをする

電子サインの導入により、こうした人や書類の移動が不要となり、業務の大幅な効率化につながりました。特に救急科においては、迅速な処置が求められる中で、紙の書類に依存しない運用が可能となり、現場の負担軽減という大きなメリットをもたらしました。」

▼監査の業務効率化・業務負荷の軽減
電子サインの導入は、書類の監査業務においても良い効果を生んでいると杉野氏は語ります。
「私たちが監査を行う際、例えば、書類に適切にサインがあるかを電子カルテ上で1つずつ確認する必要があります。しかし、電子サインを導入したことで、サインの有無が機械的に判別できるようになり、業務負担の軽減につながっています。」

今後の展望

当初の目的であった「データの利活用」や「ペーパーレス化」、「紙の管理による業務負荷の軽減」といった課題が解決でき、さらに想定外の大きなメリットも得られたことから、満足度は高いと語ります。

また、今後の取り組みについて次のように述べています。
「既に利用している先生方の満足度は高いため、まだ活用していない先生や診療科にも、実際に使用している人の声を届け、より多くの方に利用してもらいたいと考えています。利用がさらに広がれば、液晶サインタブレットの台数自体も増やしていきたいですね。」

最後に「他の病院にDocuMakerと液晶サインタブレットを薦めたいと思いますか?」という問いに対し、岩穴口氏は次のように答えました。
「私たちが導入当初に抱えていた課題は解決できていますし、それ以外のメリットも得られていますので、『ぜひ薦めたい』と言えます。現在、多くの病院で電子カルテが普及しているなか、紙の書類の管理に予算や労力を費やすのは、非常にもったいないですよね。それならば、デバイスやシステムに投資する方向へシフトした方が、長期的に見ても有益だと考えています。」

株式会社ファインデックスについて

ファインデックスは、医療システムのスペシャリストとして常に革新的なソリューションを創り出し、診療の効率化やデータを活用した研究、病院経営の支援をしています。当社製品の導入率は、国内大規模病院では約40%、国内国立大学病院においては75%に上ります。また、ヘルステック領域では、今までにない全く新しい視野計を開発・販売するとともに、これまで集めることのできなかった視野異常に関するデータを集積し、病気の早期発見や予防、創薬事業などに活用することを目指しています。医療以外の分野では、省庁外郭団体や自治体、公社を対象に、公文書管理や電子決裁を中心としたDX推進ソリューションを提供しています。

参考URL:https://findex.co.jp/recruit/index.html

この事例のソリューションや
製品に関するお問い合わせはこちら