手書きは漢検において無くてはならないもの
財団法人 日本漢字能力検定協会
日本漢字能力検定(漢検)をはじめ、海外の方を対象としたBJTビジネス日本語能力テスト(BJT)の実施、日本語・漢字に関する講演会やイベントの開催、教育・学習及び調査研究への支援活動等を行っている。
http://www.kanken.or.jp/index.php漢検受検者の多様化するニーズに応えるため、2002年度に漢検CBT(コンピュータを使って日本漢字能力検定を受検するシステム)を開発。さらに2012 年度より漢字の書取問題用入力デバイスとして、液晶サインタブレットを採用。従来のペーパーでの検定により近い操作感を提供し、受検者の満足度向上にも貢献しています。
日本漢字能力検定とは
財団法人 日本漢字能力検定協会は、単に漢字を「読む」「書く」といった知識量のみを測るのではなく、漢字の意味を理解し、文章の中で適切に使える能力も測定する日本漢字能力検定(以下、漢検)を実施しています。漢字を学ぶ上で、漢検合格という目標は学習意欲につながり、年齢に関係なく学べる身近な学習対象であるため、3 歳から 101歳という幅広い年齢層の方が漢検に挑戦されています。
2011 年度の志願者数は約230 万人に達し、高校・大学をはじめ、多くの企業で漢検資格が評価・活用されています。
漢検には、3 つの受検方式があります。個人受検は、全国の主要都市約180 箇所に設けられた公開会場で年3 回実施されます。団体受検は志願者を一定数以上集めた学校や企業などがまとめて申し込みを行う方法で、年13 回の日程があります。そして3 つ目の漢検CBTは、コンピュータを使って漢検を受検する方法です。この漢検CBTでは漢字の書取問題に対応するため、2002 年度のサービス開始以来、ワコムのペンタブレットが採用されています。
今回は、漢検CBT の企画・運営を行っている普及部・業務課に所属されている田中琢史(たくみ)氏にお話を伺いました。
漢検受検者のニーズに応えるために、漢検CBT が誕生
漢検は1992 年より財団法人となった日本漢字能力検定協会が実施しています。当初の約10 年間は、紙のテスト用紙を利用した個人受検と団体受検で運営されていました。そして受検者数は年々増加し、さまざまな受検者ニーズに応える必要が大きくなってきました。田中氏は当時の様子を「漢検には大きく3 つの課題がありました。第一に、検定の実施回数に制限があることです。年に公開会場では3回、準会場では13 回と限られた実施回数でした。もし不合格となった場合、再挑戦しようと思っても次の検定日まで待たなければならず、期間が空いてしまいます。また合格した場合も、そのモチベーションを保ちながら上位級へチャレンジしたくても、やはり次の検定日まで待たなければなりませんでした。第二に、受検後の結果発送まで約40 日かかることです。高校の入試や単位認定などで漢検の資格を受検後すぐ活用したいと思っている人のニーズには応えきれていませんでした。第三に、検定申し込みの締め切りが検定日の約 1 ヶ月前と早いことです。これは会場の定員数などの事前調整が必要なためです。」と振り返っています。この課題を解決するために、漢検の申込締切日から結果発送までの期間短縮と漢検の随時実施を目的とした漢検CBT のシステムが開発されました。
受検の機会創出と効率化で受検者満足度向上
漢検CBTの導入は、大きく次の3つの効果を上げています。第一に、申込締切日から結果発送までの期間を従来の1/4 以下(約70 日→約17 日)に短縮することができたことです。第ニに、年間の受検可能日数を20 倍以上(13 日→約290 日)と大幅に増加させることができました。第三に、サービス初年度の受検者数は約1,000 人でしたが昨年平成23 年度には約14 倍の約14,000 人に達しております。受検者ニーズに幅広く対応できていることがわかります。
実際に京都会場で漢検CBTを受検された方へのアンケート(927件)を集計したところ、9 割以上(848 件)の方々が「都合に合わせて受検日を選べる」「結果が早い」という点で漢検CBT が評価されていることが分かりました。
漢検CBTでは手書きが必須
漢検CBTを実現するためには、従来のペーパーでの検定と同様に漢字の書取問題に対応する必要がありました。「漢検にとって、手書きは無くてはならないものです。このため、漢検をシステム化する上では漢字の書取問題に対応することが課題でした。通常のパソコンではキーボードとマウスで操作を行うため、漢字の書取問題に対応しようとすると、手書き入力用デバイスがどうしても必要となります。理想は紙と鉛筆で受検する感覚で操作できることであり、紙と鉛筆を使用する個人受検・団体受検と同様に、画面と電子のペンを使用する漢検CBTでも同じ感覚で臨めることが一番重要であると考えています。」と田中氏は話されます。紙と鉛筆を使用する感覚に近いデバイスとして、ペンタブレットの採用が決まりました。
漢検CBTの導入を検討していた検定会場より、既にペンタブレットを所有・活用しているため、その有効活用の手段として漢検CBTを始めたいという声も多く届いたそうです。漢検CBT の検定会場数は増えていくことが予想されていたため、汎用性の高い板型のペンタブレットが採用されました。ワコム製品を採用した理由は、手書き用入力デバイスにおいて市場シェア率が高く、製品の信頼性を評価した結果だということです。しかし、受検者は手元で書いている文字をモニタで確認しながら漢字を書くことになるため、板型のペンタブレットの使用に慣れるのには、どうしても時間がかかりました。
漢検CBTに最適な入力デバイス
漢検協会では、受検者の満足度向上のためにシステムの見直しを行いました。手書き用入力デバイスとしては、液晶サインタブレットの他にボールペンで紙に書いた文字がそのままデジタル化できるものなども候補として検討されたそうです。しかし、導入台数が大規模となるため1 台当たりのコストを抑える必要があり、また限られた机上スペースでテストを実施する必要もありました。これらの条件を満たすデバイスとして、2012 年度からはワコムの液晶サインタブレットシリーズのカラー対応製品STU-520 が採用されました。
本製品を利用することで、受検者は紙と鉛筆同様に手元で文字を確認しながら漢字を書くことができるようになりました。また、誤って書いた漢字の一部分を直接ペンでなぞり、消すことも可能です。京都・東京会場の漢検CBT受検者において、以前に板型のタブレットで受検経験のある人へアンケートを行ったところ、回答者150 名の内、 9 割を越える方々が「液晶サインタブレットは手元に筆跡が表示されて受検しやすかった」と回答しています。
「『紙に鉛筆で書くような感覚』を追求したいと思っています。ポイントになるのは『ペン芯』です。耐久性と書き心地の良さは両立し難い面がありますが、両方が共存できるような芯を開発していただきたいと思っております。」と田中氏は更なる改善要望も挙げて締めくくられました。
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