株式会社NITTAN 様

紙の検図からデジタル検図へ。
手書きの操作性はそのままに、印刷・スキャン作業を大幅削減

株式会社NITTAN

1948年に日鍛バルブ製造株式会社として設立。主に自動車や船舶向けのエンジンバルブを製造してきました。2022年4月には、より幅広い事業展開を目指して現社名へ変更。熱間鍛造や盛金などのコア技術を強みに既存事業で業界をけん引する一方、水素エンジンの開発や電動車(xEV)市場に対応した新領域への参入に注力しています。

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画像:生産技術開発部 部長 芥川 博行 氏 生産技術グループ設計1係 係長 清水 裕樹 氏

生産技術開発部 部長 芥川 博行 氏(右)
生産技術グループ設計1係 係長 清水 裕樹 氏(左)

国内外の全拠点に納入する設備の開発・製造を担っているのが、神奈川本社工場の生産技術開発部です。同部門では、機械設計における検図業務の電子化とペーパーレス化を目的に、ワコムの23.8型液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq 24 touch 法人モデル DTH246EK4C」と、PDF図面への手書き入力や修正履歴の共有が可能な検図ソフトウェア「PenPlus for Business*」を導入しました。紙図面への赤入れと変わらない操作性を維持しながら、印刷・スキャン・回覧の手間を削減し、デジタル検図の運用を実現しています。
今回は、生産技術開発部 部長の芥川氏と、生産技術グループ設計1係 係長の清水氏に、導入の背景や活用方法、得られた効果について伺いました。

*PenPlus for Business(ペンプラス フォー ビジネス)とは
PDF図面上にペンで直接書き込みができる、製造業や建設業向けの手書き入力ソフトウェアです。ワコムの液晶ペンタブレットと組み合わせることで、紙図面への赤入れに近い操作感を実現。修正指示やコメントをデータとして残せるため、検図業務のペーパーレス化や情報の蓄積・共有を支援します。

紙図面による検図が業務負荷に。ペーパーレス化に向けた課題とは

ものづくりの核となる設計図には、部品図に加え、それらで構成される設備の組立図があります。組立工程で設計ミスが発覚すると、資材コストの増加や納期遅延など、後工程に大きな影響を及ぼします。そこで重要となるのが、検図業務です。仕様書をもとに、図面上の寸法や強度、部品同士の干渉の有無などを確認し、不備があれば担当者へ修正を指示します。

「製図者によるセルフチェック後、他のメンバーが検図を行い、上長の承認を得ます。組立図の検図では、全体を俯瞰して確認することが重要であり、図面全体を一目で見られる環境が求められます」と清水氏は説明します。

従来は紙で検図を行っていました。組立図は情報量が多く、1/2縮尺でもA1またはA2サイズでの印刷が必要です。しかし、大型プリンターは執務室内に設置されていないため、図面を印刷するたびに印刷室まで取りに行かなければなりませんでした。

「確認や提出のたびに印刷が必要で、1枚の図面の検図を完了させるまでに3~4回は印刷していました。部品点数の分だけ図面が存在するため、一つの設備の図面が承認されるまでに100枚以上印刷することもありました」と清水氏は振り返ります。

課題は、印刷や移動の手間、紙の消費だけではありません。小さな図面はデスク上に積み重ね、大きな図面は丸めて立てて保管していたため、設計者のデスク周りは常に煩雑な状態でした。さらに回覧のたびに輪ゴムを外して図面を広げ、確認後は再び丸めて留める必要がありました。

「図面を重ねて保管していたため、広げた際に付箋が外れてしまうこともありました。またコロナ禍以降は、オンライン会議で図面を共有するために紙図面をスキャンしてPDF化する作業も発生していました。」

芥川氏は、ノウハウの蓄積という面でも課題を感じていました。 「実務で発生したミスや修正指示は貴重な知見ですが、従来は承認後に紙図面を破棄していたため、過去の指摘内容や修正履歴を後から参照できませんでした。」

こうした課題に加え、全社的なDX推進の方針を受け、清水氏は検図業務の電子化に向けた検討を開始しました。まずは外付けモニターでの運用を試みました。しかし、図面を確認しながら修正指示を書き込む作業では、マウスとキーボードでの操作が中心となり、紙図面への赤入れと比べて作業効率が大きく低下しました。

「特に不便だったのは拡大・縮小操作です。組立図の検図では全体と細部を頻繁に切り替えて確認する必要がありますが、マウス操作では直感的に行えませんでした。また、文字入力はキーボード、描画はマウスと操作が分断される点や、線が滑らかに書けない点もストレスでした。」

こうした経緯から、設計1係では「画面だけでは紙と同等の検図品質や作業効率を確保することが難しい」という認識が広がっていました。そんな中、清水氏が着目したのがワコムの液晶ペンタブレットです。

「きっかけは、娘が見ていた液晶ペンタブレットの動画を偶然目にしたことでした。ペン入力とマルチタッチ操作をスムーズに使い分けながら描画する様子を見て、紙図面で行っていた検図業務のデジタル化にも活用できるのではないかと感じました。そこで情報収集を進める中で、ワコムの製品にたどり着きました。」

決め手は紙に近い書き心地。マルチタッチとペン性能を高評価

検図業務の電子化を進めるにあたり、清水氏が着目したのは、手書きソフトウェア「PenPlus for Business」と23.8型液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq 24 touch 法人モデル DTH246EK4C」の組み合わせでした。

2025年8月、清水氏を含む検図担当者4名が両製品の説明を受けた後、約1カ月間、所属グループ約20名で実際の図面を用いたトライアルを実施しました。PDF図面上に直接手書きで指示を記入しながら、マルチタッチによる拡大・縮小操作で全体図と細部をスムーズに行き来できる点が高く評価されました。従来「紙でなければ難しい」「慣れ親しんだ運用を変えるのは難しい」と考えていたメンバーからも、「この組み合わせなら使える。ぜひ導入したい」との声が上がり、本格導入への手応えを得ました。

実務担当者からも、紙への赤入れに近い自然な書き心地や操作性の高さが評価され、同年10月に社内稟議を申請。当初予算には計上されていませんでしたが、上長や役員へのプレゼンを経て特別予算で承認され、同年12月に液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq 24 touch 法人モデル DTH246EK4C」と検図ソフトウェア「PenPlus for Business」20ライセンスを導入しました。

現在は、ノートPCを中心に、外部モニターと液晶ペンタブレットを接続したマルチディスプレイ環境で運用しています。外部モニターには3Dモデルや関連資料を表示し、液晶ペンタブレットには「PenPlus for Business」で開いたPDF図面を表示。図面全体を確認しながら必要な箇所へ直接手書きで修正指示を書き込むことで、紙図面への赤入れに近い操作環境でデジタル検図を実現しています。

「マルチタッチ機能は非常に便利で、スマートフォンのような感覚で直感的に操作できます。動きも滑らかで、今ではこれなしでの作業は考えられません。ペンも遅延を感じることなく自然に書けますし、背面の消しゴムもシャープペンのような感覚で使えて便利です。以前は『紙の方が良い』と言っていたメンバーも含め、操作に対する評価は非常に高いですね」と清水氏は話します。

A3図面を一覧しながら作業することが多い現場では、A3横図面を原寸に近いサイズで確認できる23.8型の画面が最適でした。図面全体を俯瞰しながら細部も確認しやすく、紙からデジタルへの移行も違和感なく進められたといいます。
また、ペン入力とマルチタッチを組み合わせた直感的な操作性により、全体図と詳細図を行き来しながら、効率よく検図できる点も高く評価されています。さらに、画面に手が触れても誤動作しにくく、ペン入力を優先して認識するため、紙図面への赤入れに近い感覚で作業できます。長時間手を載せて作業しても発熱が少なく、快適に検図を続けられる点も評価されています。

紙使用量を4割削減。さらなるDXを進める契機に

導入後、検図業務における紙の使用量は4割以上削減され、図面管理に伴う作業負荷も大幅に軽減されました。特に、検図工程で繰り返し発生していた再出力や回覧用印刷が大きく減少しました。
「図面の受取りや回覧・提出のための移動に加え、図面の展開・保管、スキャン作業も不要になりました。検図業務全体のリードタイムは確実に短縮しています」と清水氏は評価します。今後はクラウドでの図面の保管・共有に加え、「PenPlus for Business」の各種機能を活用しながら、検図業務のさらなる効率化を進めていく考えです。

図面廃棄による知見の消失に課題を感じていた芥川氏は、検図の過程で得られる知見をデータとして残せる点にも大きな価値を見出しています。
「近年は若手担当者への技術伝承が難しくなっています。検図の過程で蓄積される修正履歴や指摘内容は、将来に活かせる重要な資産です。これまで紙図面での運用では、承認後に廃棄されていたこうした情報も、デジタル化によって継続的に参照できるようになりました。技術継承や社内教育にも役立てられると考えています」

さらに図面の電子化は検図業務にとどまらず、社内全体のペーパーレス化にも波及しています。清水氏の提案をきっかけに、量産開発部門では製造関連文書の電子化を目的に、13.3型液晶ペンタブレット「Wacom Movink 13」と「PenPlus for Business」を導入しました。

芥川氏は、こうした検図以外の業務への展開にも期待を寄せています。 「製造現場では作業のばらつきを防ぐための標準類が不可欠です。設計者は図面に加え、加工基準書や作業手順書なども作成し、承認を受けます。こうした確認・承認プロセス全般に活用できると考えています。」

2030年までに「売上高1,000億円以上、営業利益100億円以上、営業利益率10%以上」の達成を目標に掲げる株式会社NITTAN。収益力の向上と並行して脱炭素やDXの推進、新事業の創出にも取り組みながら、さらなる成長を目指しています。

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