宮城白石スタジオと東京本社に液晶ペンタブレットを導入しデジタル作画環境を構築
株式会社旭プロダクション
1973年設立。東京都練馬区に本社を置き、創立時よりアニメーションの撮影技術サービス業務を中心に、コマーシャルや企業VPなどのアニメーション制作を行う。2009年に宮城県白石市にデジタルスタジオを開設。
www.asahi-pro.co.jpアニメーション制作会社・旭プロダクションは、2009年に設立した宮城白石スタジオと東京本社の作画部に株式会社ワコムの液晶ペンタブレット「Cintiq 24HD」と「Cintiq 13HD」を導入。業界でもいち早くデジタル作画環境を構築し、ワークフローの効率化を図っています。
導入前の課題
- 高画質化により複雑になるアニメーション制作の効率化
- 今後ニーズが高まるデジタルアニメ制作におけるアドバンテージの獲得
- 宮城白石スタジオと東京本社間のワークフローの効率化
導入後の効果
- アニメーターのモチベーションと作品のクオリティが向上
- 工程間の受け渡しや進捗の把握が容易になり制作スピードがアップ
- ペーパーレス化により紙の保管スペースや運送・管理費の削減が実現
人材育成のため宮城県にスタジオ設立
東京本社とともにデジタル化を推進
長年、手描きセルアニメーション技法で作品を作ってきたアニメーション業界において、制作スタジオにデジタル環境の導入が本格化したのは2000年代に入ってからのことです。制作本部本部長の八木寛文さんによると、その頃から「地上波デジタルの普及やパッケージ販売用メディアの高画質化に伴って、アニメ作品そのものも高画質化が進んで作画も非常に複雑になってきたため、従来のように紙に手描きをして修正を繰り返し、描いた紙をスキャンしてデジタル彩色に回すというアナログ作画のワークフローは、手間と時間がかかって非効率。紙自体のコストや運送の手間もかかる」という問題がありました。また、今後さらにニーズが高まるデジタルアニメ制作においてアドバンテージを得るには、早めにフルデジタルによる作画体制を確立すべきという判断もあり、同社では積極的にデジタル化を推進することとなりました。ポストプロダクションを手がける撮影部や、アニメーターが手描きした作画をスキャンしてPC上で着彩を行う仕上げ部門では、担当者レベルで板型ペンタブレットを導入しデジタル化を進めていました。そして、作画部門でもアニメーターが慣れ親しんだアナログ作画と同様に画面にダイレクトに描画できる液晶ペンタブレットを導入すれば、よりスムーズに作画ができると考え、ワコムの液晶ペンタブレット「Cintiq」の導入に至りました。同時に「東京圏では、アニメーターは生活にゆとりを持ちにくい。生活拠点を地方に移すことで生活水準の向上を図り、より優秀な人材を育成したい」という方針から、宮城白石スタジオを新設。デジタル作画に特化し、新たなワークフローの構築を進めることとなりました。
Cintiq 13HD発売を機に板型ペンタブレットからCintiq導入を加速
宮城白石スタジオでは、2011年6月から「Cintiq 24HD」の導入を開始しました。液晶ペンタブレットの台数を徐々に増やして、それまで使用していた板型ペンタブレットからの転換を図り、現在では「Cintiq 24HD」を2台、「Cintiq 13HD」を7台使用。常駐アニメーターのほぼ全員が「Cintiq」シリーズを使用するデジタル作画環境が整いました。
同時に東京本社の作画部でも、宮城白石スタジオで制作された作画データのやりとりの効率化を図るため、デジタル作画環境の充実が図られました。東京本社作画部には現在、「Cintiq 13HD」が4台導入されています。「Cintiq」はアニメーター個々人が専用するため、どの機種を選び、どうカスタマイズするかは個人の自由に任されています。そのため「より購入しやすい価格帯を実現し、限られた作業スペースでも使い勝手のいいコンパクトな「Cintiq 13HD」の発売は、作画部門における液晶ペンタブレット普及のキッカケになった」と八木さんは話します。そして、「Cintiq」と別のディスプレイとをデュアルディスプレイとして使用したり、Cintiqを好みの角度に調整したり、各自が最も絵を描きやすい環境を作ることで、作業の効率化を図っています。東京本社でもデジタル作画の必要性は年々増しており、今後はさらにアナログ作画からデジタル作画へ、従来使用している板型ペンタブレットから液晶ペンタブレットへ、転換が進んでいくと八木さんは考えています。
作画のデジタル化により作業全体の進行状況の把握が容易に
「Cintiq」を導入したことによる最大のメリットは、アニメーターのモチベーションと作品のクオリティの向上です。ハイクオリティな作画を大量に、そして短時間で仕上げなければならない制作現場では、自分の思い通りに線が描けるかどうかは、作業意欲そのものを左右します。そのため、直接液晶画面にペンを走らせて描ける液晶ペンタブレットは、「アナログ作画時代の紙に絵を描く感覚が蘇り、ストレスフリーで作業に集中できる」とアニメーターの橋本航平さんは言います。「ペンを画面上に置いたときの視差もほぼなく、ソフトウェア上で描画した際のレスポンスも良い。作品のクオリティアップを実感できる」と高く評価しています。個々の制作スタイルによって様々なディスプレイサイズを選択できるのも「Cintiq」の魅力と感じています。
「Cintiq 24HD」は大きなストロークにこだわる人にとっては没入感と集中力を一層高めることができ、「Cintiq 13HD」は作業場の省スペース化を実現。どちらも「紙を使わないことにより、作業机が整理整頓されて空いたスペースを有効活用できるようになった」と言います。作画のフルデジタル化は、ペーパーレス化によってレイアウト用紙の保管スペースや運送・管理費の削減を実現しただけでなく、制作工程間の受け渡しがネットワーク経由になったことで制作スピードのアップも可能にしました。さらに、「デジタル作画体制なら、セクションごとの進捗や作業段階がデータ上で共有できるため、全体の進行状況が非常に分かりやすくなった。宮城白石スタジオと東京本社を連携し、デジタル作画体制の研究、検証を続けてきたことで、より良い作業環境、ワークフローに関する課題と解決策も見えてきた」と八木さんは話します。今後は、3DCGアニメにも積極的に取り組み、日本に比べデジタル化が進んでいる海外市場もターゲットとして考えながら、クオリティの高いデジタル作画によるテレビシリーズ制作を目指したいという旭プロダクション。アニメーション業界においても、液晶ペンタブレットのニーズは、ますます高まっていくことでしょう。
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