全編フル3DCGでアニメ化
「劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの」の
制作現場を支えたワコムのWacom Intuos Pro
Ⓒ2023 EPOCH/劇場版シルバニアファミリー製作委員会
Ⓒ2023 EPOCH/劇場版シルバニアファミリー製作委員会
紺吉有限会社
紺吉有限会社は、文久年間創業の藍染問屋をルーツとし、「技術で紡ぐ映像制作会社」として令和4年に設立。プロデューサー、CG背景ディレクター、CG演出・アニメーションディレクター、監督・演出など、業界の第一線で活躍してきたメンバーが集結したプロフェッショナル集団です。先人から 受け継いできた技術を磨き続け、新しいテクノロジーを学び続け、先人が作ってきた表現を超えた、皆の心に届く作品づくりを目指しています。
https://www.kon-yoshi.co.jp/唯一無二の世界観をフル3DCGで再現
1985年の発売以来、世代を超えて親しまれてきたエポック社のドールハウス&人形「シルバニアファミリー」。ショコラウサギの主人公フレアをはじめとする個性豊かなキャラクター、美しい自然に囲まれた村、そこに建ちならぶ夢のような家、そして家族と仲間たちの変わらない愛と絆。その唯一無二の世界観を全編フル3DCGでアニメ化した「劇場版シルバニアファミリー フレアからのおくりもの」が、2023年11月23日に公開されました。
あたかも実際の人形たちに命が吹き込まれたかのようなリアルな動きとルックは、シルバニアファミリーの唯一無二の世界観が見事に再現されています。本作のアニメーション制作を担当したのが、紺吉有限会社です。また、プロデューサーに同社の代表取締役である瀧澤大祐氏、アニメーションプロデューサーに森口博史氏、演出には香川豊氏が起用されました。
「2020年から小中監督と脚本家の小林さんの間で脚本作りが始まって、2022年頃からキャラクター人物像や美術設定の確認が始まり、我々が制作に着手したのが2022年の秋。なので約1年ちょっとの制作期間となりますね。全部で約630カット、65分の長編映画になっています」と、本作の演出を手がけた香川氏は振り返ります。
香川氏は、40年近くアニメーション制作に携わってきた大のベテラン。1979年にタツノコプロに入社し、「科学忍者隊ガッチャマンF」で演出家としてデビュー。1989年に『真・魔神英雄伝ワタル』で初監督を務め、2002年より制作を開始した監督作品「げんきげんきノンタン」では自身初のフル3DCGを手がけました。そして数々のスタジオでキャリアを積み、フリーランスを経た後、2023年の創業と同時に紺吉に参加しています。
Wacom Intuos Proを活用し
スタッフ間のコミュニケーション向上を図る
「今回の作品では、監督が描いた絵コンテからその意思を汲み取り、制作の現場が理解しやすく、実現しやすい形に補足して伝えるというのが私の主な仕事です。また、アニマティクスの段階では各カットに細かい修正指示を加えたり、カットごとの尺間の調整をしたりということをやっていました」(香川氏)
演出の仕事は、制作全体の流れを把握し、監督やクライアントの意向をアニメーターやCGクリエイターにできるだけわかりやすく、的確に伝えるという、いわば司令塔の役割を果たします。そうしたスタッフ間の意思疎通を図るのに、香川氏はWacom Intuos Proを有効に活用しています。
「昔と違って、今は作業の細分化や分業化が進み、プレイヤーの数も増えました。コロナ禍だったということもあって、それぞれが別々の場所で作業を行い、月に何度かオンラインでミーティングをする程度。ミーティングでは、Autodesk ShotGridを使って画面に絵を映し出し、修正指示などを直接描き込みながらチェックバックを行なっていました。Wacom Intuos Proなら、ぼかしや影などの微妙な描写もできるので、その場で描き込んでカメラ位置やライティングを絞っていくということもやっていました。見ている側もわかりやすいし、録画を後で見直すこともできるので、だいぶ円滑にコミュニケーションができたと思います」
マウスと比べて、作業スピードに
圧倒的な差が出るペンタブレット
CG制作において、その作品の世界観を決める上で最も重要な工程となるのが、ルックデヴです。ルックデヴとは、文字通り、CGの見た目(ルック)を決定するもので、モデルにシェーダやテクスチャなどを適用し、パラメータやノードを調整しながら質感を詰めていきます。本作品のルックデヴを担当したのが、フリーランスのCGジェネラリストとして活動する、草皆健太郎氏です。
草皆氏は、2001年にポストプロダクション会社に入社し、CGやマルチメディアコンテンツなどの制作業務に携わり、2012年に独立してフリーランスに。現在では主にCM、PV、イベント映像などのCG制作を生業としています。本作ではルックデヴのほか、背景モデリングやライティング、エフェクトなども手掛け、作品全体を通して一貫した世界観を作り上げることに貢献しています。
「シルバニアファミリーの本来の世界観をどこまで踏襲し、映画としてどこまで新しい表現を加えていくかというところで、監督とはかなり綿密に話し合いをしながら色味やライティングなどを決めていきました。監督は、いわゆるスタジオっぽいライティングではなく、実写映画に近いリアルな感じ、例えば家の中のシーンは70~80年代のアメリカ映画に出てくる家庭のような、暖色系で陰影のあるライティングをイメージしていたので、極力その方向で調整していきました。最終的に、従来のテレビシリーズとはちょっと違った、奥行き感のあるシネマチックな質感になっていると思います」
草皆氏は、本作の3DCG制作にAutodesk MayaやHoudiniを主に使用。その作業に、Wacom Intuos Proは欠かせないツールだと話します。
「もう25年くらい、マウス代わりにずっとペンタブレットを使ってきましたからね。今では映像編集でもオペレーション的なことでも、100%ペンタブレットで作業をしています。相対座標でしか動かないマウスと違って、ペンタブレットは絶対座標で動くので、カーソル移動などがとてもスピーディに行えます。特にノードベースのツールを使うときは、圧倒的にペンタブレットの方が作業がしやすいです。テキスト入力やショートカットを使うときに、マウスだといったん手を離してキーを押しますが、ペンタブレットならペンを持ったまま押せる。一見大したことなさそうでも、その一手の積み重ねが、最終的には全体の作業時間の大幅な短縮につながるのです」
次世代のクリエイターに向けて
デジタル技術の進歩は、アニメーション制作の技法やプロセスを大きく変えてきました。昨今ではAIなどの新しい技術も登場し、その変化はさらに加速しています。最後に、アナログ、デジタル、そして3DCGと、時代の変化とともに常に新しい技術を学び、新しい表現に挑戦し続けている香川氏に、これからの若い世代に向けて次のようなメッセージをいただきました。
「デバイスにしても、ソフトウェアにしても、すごいものが作れる道具がすぐに使える状態にあるわけですから、それを使ってまずは作ってみたらいいと思うんですよね。どこかに所属しないととか、勉強しないととかいうよりも、とにかく自分で触ってみる。そんな機会は僕の時代にはなかったですから。現にそうやって世の中に出てる人はたくさんいますからね。それは素晴らしいことだと思います」
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