アニメーション監督 中山竜 様

アニメーション監督 中山竜氏によるWacom Cintiq クリエイターレビュー

アニメーション監督の中山竜さんは、TVアニメーションを中心に演出・監督として10年以上にわたり数々の作品に携わり、「チェンソーマン」ではシリーズ初監督を務めて話題を呼びました。現在はご自身が設立したスタジオAndraftを拠点に、高品質な作品制作と後進の育成に取り組まれています。

そんな中山さんに、今回は2025年6月に発表された液晶ペンタブレットの新製品「Wacom Cintiq 24 touch」を試用していただきました。長年ワコム製品を愛用してきた立場から、日々の制作の中でどのような点が進化と感じられたのかについてお話を伺いました。

普段はどのペンタブレットを使われているのですか?

普段使っているのは、Wacom Cintiq 16(DTK1660・2019年発売)とWacom Intuos Proです。スタジオでは液晶ペンタブレット、自宅では板型のペンタブレットと使い分けています。液晶ペンタブレットは、“絵を描いている感覚”をよりダイレクトに感じられます。特にレイアウトや原画と呼ばれる作業では、線やディテールに繊細な表現が求められる作業には最適ですね。細部までこだわったキャラクターやハイクオリティーな映像制作の際には、より深く作業に没入できます。

一方で板型ペンタブレットは、常にモニターが垂直にあり前を見た状態で描けるので、姿勢が前屈みにならず体への負担も少なく、長時間作業する場合も疲れにくいです。パッと取り外すことができるので、机のレイアウトを変えることができるのもいいですね。テレビを垂直の画面で見るのと同じように、一連の絵の全体を俯瞰して見ることができるので、より“映像を作っている感覚”で描くことができます。

アニメーション制作ではキャラクターの表情やディテールを含め、絵の力で戦う工程もあるので、ワークフローによって液晶ペンタブレットと板型のペンタブレットを分けて使っています。

リニューアルしたWacom Cintiq を使ってみて、最初にここが変わったなと感じたポイントはどこでしょうか?

自分の場合、一番テンションが上がったのはペンと液晶タブレット本体の見た目ですね。Wacom Pro Pen 3は、以前のWacom Pro Pen 2と比べてかなり細く軽くなっており、本当に鉛筆と変わらない太さで疲れにくく使いやすくなりました。
ペン先も細く芯も長くなっているため、描いているところが見やすくなっているのと、以前よりも滑らかに描けるので描き心地もすごく良く、取り回しがしやすくなったという印象です。CLIP STUDIO PAINTで一番ベーシックなGペンで描いても、ほとんど遅延もなく楽に描けるので、何の不満もありません。

さらにサイドスイッチが3つに増えたことで、ショートカットが追加できるのも使いやすさという点では大きなメリットですね。サイドスイッチが1つ増えるだけで、作業効率が上がったことを実感しています。
会社ではモニターを2つと液晶ペンタブレットの合計3画面で作業しているので、サイドスイッチにはマッピング切り替えを追加しましたが、今までと比べてとても便利になりました。

本体の見た目については、ベゼル部分が非常に狭くスタイリッシュな設計になっていているので、画面が実際のサイズ以上に広く見える印象を受けました。アニメーションで使っているレイアウト用紙などを、大きく表示してもしっかり見られます。電源ボタンなども全て本体の側面に配置されてフラットになったので、作業の邪魔にならず使いやすくなりました。

接続もUSB Type-Cにも対応しシンプルになりました。以前のモデルは3 in 1ケーブルで接続がゴチャッとしていたのがスッキリできてうれしいです。デスクトップPCでHDMI接続をする場合、市販品のHDMI-mini HDMI変換ケーブルで替えがきくのでその点でも調整しやすくなりました。

今回はマルチタッチ機能対応の24インチのWacom Cintiq 24 touchを試用していただきましたが、サイズについては16インチとどちらがご自身に合っていると感じますか?

自分は普段16インチを使用しているので、16インチでも事足りるかなと思いました。その分、机も広く使えますし作業全体を見ると十分かなと。ただし、24インチに関しては大きい絵を描くときにはすごく便利だろうと思うので、迷いますね(笑)。
実際、アニメーターは16インチを使っている方も多いと思うので、作業環境やスタジオの広さに合わせて選んでいいと思います。

Wacom Cintiq 24 touchでは液晶の解像度も向上していますが、ディスプレイ上でご自身が描いた線の見え方には変化はありましたか?

そうですね。ドット感が薄れてより細かく表示されているほか、照明の反射や映り込みが軽減されているので、画面がだいぶ綺麗になった印象を受けました。特に液晶ペンタブレットは、アニメーション制作の際に原画や細かい部分を清書しなくてはいけないので、解像度が高い点が非常に役に立っています。
上位モデルもあると思いますがWacom Cintiqシリーズも発色がすごく綺麗ですし、白黒の作業も問題なくできるので、文句なしですね。

以前のモデルでは、冷却用のファンが内蔵されていましたが、新製品ではファンレス設計になっており、全く無音になりました。そのあたりはいかがでしたか?

以前の製品でもファンの音はあまり気にならないレベルでしたが、音が全くしないのは作業の妨げにならないのでいいですね。ファンレスだからといって熱くなることもないので、利点だなと思いました。

Wacom Cintiq 24 touchでは、スタンドの形も大きく変わりましたが、使い心地はいかがでしたか?

スタンドは角度の変更をする際に、力をあまり入れずにスッと調整できる感じがあります。特に自分は液晶ペンタブレットを手前に置いて、奥にパソコンのモニターを2台置くのですが、モニターの下の方が見えないときにスタンドの角度を下げたり、普通に描くときは戻したりといった操作が楽になりました。

またペンスタンドも角度調整がしやすくなりました。ペンが落下しにくくなっていて、シンプルな形となっていて良いですね。

Wacom Cintiqシリーズ はどんな方におすすめしたいですか?

もうどんな人でも満足するんじゃないでしょうか。特にアニメーターは絵で勝負する工程ではこの解像度の高さがとても役に立ちますし、画質や機能も十分です。商業のトップイラストレーターは場合によってはWacom Cintiq Pro のようなハイエンドモデルが必要なときがあるかもしれませんが、イラストを描き始めたばかりの方やアマチュアはもちろん、多くの人が十分満足できる性能になっていると思います。

最後に、ワコムの製品を使い続けていただいている理由を教えてください。

ワコム製品は2008年の大学生の時から使い続けていますが、常にどの製品を使っても品質を保ってくれているところに、信頼感があるのが大きいです。新しい製品にバージョンアップしても、使用の際に何の違和感もなくスムーズに移行できているのが理由ですね。Wacom Cintiqシリーズ含めて、今後も愛用させていただきます。

中山竜(アニメーション監督)

東京造形大学卒業後、アニメーター・演出家として人気タイトルのTVアニメーション制作に10年以上携わる。「Fate/Grand Order」や「呪術廻戦」などの演出を手掛けた後、「チェンソーマン」ではシリーズ初監督を務め、クランチロール・アニメアワード2024の最優秀新シリーズ賞を受賞。2023年には株式会社Andraftを創業し、高品質なアニメ制作・企画プロデュースやスタッフ育成に注力。2025年4月には取締役として株式会社Aurora Animationを共同設立。

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