アニメーション監督 徳野鉄雄氏のWacom Cintiq Pro 27 導入事例

アニメーション監督の徳野鉄雄氏は、金沢美術工芸大学卒業後、Production I.Gに入社。原画、作画監督などを担当し、現在はフリーランスとして監督、演出、イメージボード、キャラクターデザイン、作画監督などで活動されています。
これまで『天気の子』(2019年)、『すずめの戸締まり』(2022年)などの作品に参加し、『島津製作所150周年記念アニメーション』(2025年)で初監督を務め、今年も監督として大成建設グループの新TVCM「挑戦」篇のアニメーション制作を手がけました。 今回は、長年活用してきたワコム製品と環境の変化、アニメーション制作における、Wacom Cintiq Pro 27 と絵コンテ・ビデオコンテ制作用ソフトToon Boom Storyboard Pro(以降、Storyboard Pro)の使用感について伺いました。
小さな画面から使い始めた液晶ペンタブレットが、今は27インチモデルに
──初めて導入したワコム製品について教えてください。
大学時代にデジタル化が進む制作環境に触れるなかで、「手を動かして表現する仕事がしたい」と考え、アニメ業界に入りました。最初は17インチ程度のモデルの中古製品をネットで購入。周囲はペンタブレットを使用していましたが、自分は使った経験がなかったため「慣れるのに大変だろう」という判断から、液晶ペンタブレットからスタートしました。
本格的に液晶ペンタブレットを導入したのはWacom Cintiq Pro 16(DTH-1620/K0・2017年発売)です。
ちょうどその頃、コミックス・ウェーブ・フィルムの作品に参加しており、新海誠監督からラフコンテ制作を依頼され、Storyboard Proが必要となりました。Storyboard Proは絵コンテの作成からVコンテ制作まで行えるソフトで、デジタル環境で絵コンテを制作するために導入しました。 結果として、Wacom Cintiq Pro 16とStoryboard Proをほぼ同じ時期に使い始めることになりました。
──Wacom Cintiq Pro 27を導入したのはいつ頃でしょうか?
『すずめの戸締まり』の制作まではWacom Cintiq Pro 16を使用していました。Wacom Cintiq Pro 27への移行は、『島津製作所 創業150周年記念アニメーション』を制作していた頃です。16インチから27インチへの移行は、作業効率の向上に大きくつながりました。アニメーション制作では膨大な資料を参照するため、一般的には液晶ペンタブレットとは別にサブモニターを用意し、資料を見ながら作業することが多いと思いますが、画面との間で視線を行き来する必要があり、細かなストレスが毎日の作業の中で積み重なっていけば大きな負担になります。作業負担を抑えることはすごく大事にしているところなので、資料を同じ画面内に表示できる大画面のWacom Cintiq Pro 27を買ってよかったなと思います。また、発色や色再現性、表示精度に対する信頼も非常に高いです。
──Wacom Pro Pen 3は使ってみていかがでしたか?
それまで使っていたペンはグリップが太かったので、Wacom Pro Pen 3の細さには最初は戸惑いがありました。ただ、使ってみるとペンの重心を変えることができて自分の持ち方に合わせて疲労感も減らせますし、好みに合わせてカスタマイズできるのが魅力です。また、初代のWacom Pro Penはペン先まわりが太かったので、描いているときにキャンバス周辺が見えにくくなることがありましたが、Wacom Pro Pen 3はコーンシェイプ型になってより細くなったため、描いている部分が格段に見やすくなりました。明らかに使い勝手が良くなったと感じています。
大成建設新TVCMの制作においてのデジタル表現

──今回の作品制作について伺えますか?
アニメーション制作期間は3〜4か月です。本作ではプリプロダクション、即ち準備に時間をかけました。大成建設のCMシリーズは、これまで新海誠監督とコミックス・ウェーブ・フィルムが手掛けてきましたが、新海誠監督作品の制作を経験した私が引き継ぎつつ、新たなチームで制作することになりました。その際、これまでとは違う色を出しながらも、視聴者にしっかり伝わる作品にしてほしいという依頼がありました。
新しいチームならではの魅力をどう打ち出し、その要望にどう応えていくのか。その点については非常に苦労しました。
良くも悪くも、自分自身が強く表現したいテーマを持っている作家タイプではないんです。原作があれば原作、クライアントがいればクライアントが伝えたいことがあります。ただ、いただいたリクエストをそのままアニメーション表現に変換しただけでは、企業が本当に伝えたいことが最も良い形で伝わるとは限りません。
そのため、本当に伝えたい本質を理解するために、丁寧なヒアリングを重ねました。そのうえでどのような表現で伝えるのかを提案して制作を進めました。 資料はいただきますが、基本的には自分でロケハンを行いました。なぜロケハンかというと、建物はそこを訪れる人の感情や体験に大きな影響を与えます。行く前に想像してみるものの、現地に行って実際に体験することで資料から得られる情報を超える、非常に新鮮で感情に訴える要素がたくさんあり、想像を遥かに超えるとても有用なものになりました。
作業効率とストレスフリーな環境を自宅でも
──2台目もWacom Cintiq Pro 27を選ばれたのですね。
はい。自宅用と会社用です。基本的に会社での作業が多いのですが、時期によっては自宅での作業もあります。最初は違う液晶ペンタブレットを使っていたのですが、いろいろ使い勝手に問題を感じて、自宅もWacom Cintiq Pro 27で揃えました。

Storyboard Proと液晶ペンタブレットが制作現場の空気を変える
──Storyboard Proを導入した制作のメリットは何ですか?
ロケハンで得た情報や印象を、記憶が新鮮なうちにビデオコンテを作ることによって、非常に直感的にイメージを共有することができ、紙の絵コンテでは伝えにくい演出も表現しやすいことから、メンバー間で早い段階から実際の時間軸と映像のイメージと目指す完成画面を共有できるようになります。
それにより、チームメンバーそれぞれが作業に取り掛かるタイミングが早くなり、即ちメンバー独自の発想を盛り込む猶予も生まれます。限られたスケジュールの中でクオリティを最大限上げるために、チーム全体で共通認識を持ちながら制作を進められる環境を作ることができたことは他では代えがたい非常に大きな魅力でした。
ビデオコンテは、制作現場だけでなく、絵コンテを読み解くのに慣れていないクライアントや広告代理店などへのプレゼンでも有効です。イメージがしやすいため安心感を得やすく、高評価をいただくことが多いと感じています。
──ワコム製品とStoryboard Proの組み合わせが持つポテンシャルについて、どのようにお考えですか?
ワコムの液晶ペンタブレットとStoryboard Proの組み合わせは、今の自分にとっては代えの利かない制作環境です。描きやすさはもちろんですが、思いついたことをその場で絵にし、そのまま映像として組み立てられるスピード感と精度の高さが大きな魅力だと思います。 Storyboard Proのデータは書き出してAdobe Premiere Proに取り込めるので、ソフトウェア間の連携が取れるのも強みです。
日本のアニメーション業界は限られたスケジュールの中で高いクオリティが求められるため、こうした制作効率の向上は今後さらに重要になると思います。

これからのデジタルアニメーション制作におけるワコム製品の価値とは
──デジタルアニメーションの制作に関わる人にとってワコム製品はどのような価値があると思われますか?
使用するツールがデジタルかアナログかは、自分の中では手段に過ぎないと思っています。しかし、現在の日本のアニメーション制作の現場では、働き手不足に加え、求められるクオリティも高まっているため、作業効率を上げることは重要です。アナログ作業では、絵コンテや素材のやり取りなど工数が煩雑になり、情報共有の面ではデジタルと比較するとタイムロスや監督とチーム間のコミュニケーションの難しさが生じます。
理想的な環境は、デジタル化によってアナログ制作の現場の課題をクリアにし、アニメーションを作っているときに、みんなが当事者意識を持ちやすい、「モノづくりに参加できて楽しい」と思えることだと思います。
──今後、ワコム製品やStoryboard Proを使った制作環境にどんな要望がありますか?
Storyboard Proが日本式の絵コンテとよりスマートに連携することを期待しています。今は紙のコンテから必要な部分を切り抜くなど手作業で取り込んでいますが、今後は紙の絵コンテから各コマの絵と情報が一発で自動的に取り込めて、デジタル上でワコムの液晶ペンタブレットと共に作業できるようになれば、制作現場での作業効率化につながります。 ワコムの液晶タブレットの描き味は言うまでもありませんが、各アプリケーションとの互換性が傑出しているのでStoryboad Proの直感的に作業に没頭できる魅力と合わせ、これからもアニメーション制作のワークフローとクリエイターに寄り添った存在として、ワコム製品、Storyboad Proを頼りにしています。
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