東映アニメーション株式会社

※この記事は2016年に制作されたものです。

大型液晶ペンタブレットを順次導入
作品の世界観を作る背景美術の制作現場でデジタル化を目指す

東映アニメーション株式会社

世界の子どもたちと人々に「夢」と「希望」を与える“ 創発企業”となることを目指す、アニメーション制作を主体とし映像製作・販売を主な事業内容とする日本アニメーションのパイオニア。東京都中野区。

www.toei-anim.co.jp

導入前の課題

  • 家庭用TVの大画面化により高い解像度の映像が求められる
  • 従来のアナログの作業とデジタルの作業が混在した環境
  • 制作管理面での物理的な壁の存在

導入後の効果

  • 視聴者の実際の視聴環境に近いサイズでの美術制作作業が可能になる
  • 色味の問題や海外とのやりとりをデータ化する事で統一が図れる
  • ペーパーレス化する事によりデータ管理に移行した事で運営の合理化

背景美術制作にCintiq使用導入率100%

毎週オンエアを控えているTVアニメーションの世界。半世紀以上にわたる日本のアニメーションの歴史と共に歩んできた東映アニメーション株式会社でも、年々筆と絵の具による手描きの表現手法からデジタルツールを使用した手法へとデジタル化が進んでいます。一般的な商業用 TVアニメーションシリーズの1話当たりのカット数は数百カットにのぼり、作画であれば数千枚、背景美術に関しても数百枚を毎週リリースするペースで制作する必要があります。その中でもアニメーション作品の世界観を紡ぎだす重要な要素の一つである背景美術の制作にも液晶ペンタブレットが活躍の場を広げています。近年、家庭用テレビの大画面化に伴って、より高い解像度での素材の制作が必要になってきているため、高解像度や色の再現性といった表示の面だけでなく、描き手がより細部までダイレクトに描画できる制作環境が求められています。同社では、背景美術制作に早くからIntuos Proシリーズに代表される通称「板タブ」を導入していましたが、2010年代前半の段階でCintiq 13HDシリーズ、Cintiq 24HDシリーズなどの液晶ペンタブレットの導入を進め、導入率は100%になっています。現在は、スタッフの要望もあって、より高解像度大画面のCintiq 27QHDへのリプレイスが進めている最中です。若いスタッフの意見にも耳を傾けながら、費用対効果が上がるよう液晶ペンタブレットを活用した制作環境の整備を積極的に推進しているとのことです。

色の再現性高いCintiq 27QHDによりデジタルでの作業に信頼性

美術デザイナーの吉池隆司さんは、大量の背景美術を自ら描くだけでなく、多くの美術スタッフへのチェックや指示出し、時には海外支社のスタッフとのやり取りまで同社の背景美術セクションの司令塔として活躍されています。 2015年にCintiq 27QHDが発売されると、それまで使用していたCintiq 24HDをリプレイスしました。家庭でのオンエア環境に近い高解像度の背景美術素材を原寸で表示してバランスを見ながら作業できるようになり、ソフトウェアのメニューも邪魔にならないため、作業が滞らないとそのメリットを肌で感じているお一人です。Cintiq 27QHDになってさらに明るくなった画面と正確な発色によって、液晶画面の色味をガイドに制作を進めることで、色のばらつきを抑えチェック時の色の再現性を担保できるようになり、デジタルでの作業の信頼性が増したと言います。「しっかりした機材を持っていると作業が安定しますね。Cintiq 27QHDは表面がフルフラットになったので、大きいストロークで描く際にスーッと腕を動かすことができます。日本は筆の文化なので、線一つとっても強弱や勢い感が表現できる液晶ペンタブレットの高い精度があってこそ、頭で思い描いたままを背景美術として仕上げられるのです。液晶ペンタブレットによって作業環境が劇的に変わったので、もう板のタブレットには戻れないですね」と吉池さんは語ります。

クリエイティブ環境を整備しコストの平準化、スケジュールの是正、生産効率実現へ

デジタル化は、データの一元管理によるトータルコストの圧縮、アーカイブを含めたデータの受け渡し等の運用と時間の効率化といった費用対効果の定量化が可能で、管理運用面でもメリットがあります。「しかし、現状アナログによる作画もあるため、液晶ペンタブレットを使ったデジタル作画を織り交ぜたハイブリッドなアニメーション制作になっています。現状の人材や資産を活かし、コストの平準化を意識しながら、アニメーション映像の作り方を模索している段階」と製作管理の立場から仕上課課長代理の賀東さんは言います。「基本的にはスタッフ有りきでその人に合ったデバイスを選択しています。トラディショナルな作り方もあり、液晶ペンタブレットを使ったデジタルでの作り方もありと、多様性にも寛容な姿勢で臨んでいます。また、デジタルツールは慣れの部分もあるので、まずは使ってもらって慣れることが重要だと感じています。しかし、デジタルネイティブ世代が増えてきていますので、液晶ペンタブレットの導入は今後も進んでいくと思います。背景美術では基本的に一話当たり数百枚の美術が必要で、一人のスタッフが一日に何十枚も描くので、手の届くところにデバイスやソフトウェアが配置されていることが生産性を保つ秘訣と考えています。トライアル的な研究や技術開発も含めて、ツールのトータルコスト、スケジュール感、生産効率など現行でちゃんと達成、実現できるクリエイティブ環境を提案することが我々のミッションになっています」と賀東さんは語ります。作画だけでなく背景美術の制作でもすでにデファクトスタンダードのツールになりつつある液晶ペンタブレットによって、今後ますます素晴らしいアニメーション作品が世に送り出されていくことでしょう。

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