株式会社ととにゃん 様

Wacom Cintiq Pro 27で描く。魅力的なアニメーション美術背景の世界

株式会社ととにゃん(以下:ととにゃん)は、2006年に加藤夫妻らによって設立されたアニメーション美術背景制作会社です。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」、「ONE PIECE FILM RED」、「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」、「ババンババンバンバンパイア」、「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」など、これまで数々の劇場アニメやTVアニメなどの背景制作を手掛けてきました。

アニメーション制作において背景の重要性は説明するまでもなく、作品の世界観を決める重要な要素であり、最近では背景に多くの情報を詰め込み、伏線とする作品も増えてきました。

ととにゃんの代表取締役を務める加藤浩氏は、長年アニメーションの背景制作を手掛けており、アニメーション美術監督の第一人者のお一人です。加藤氏は、主にAdobe Photoshop CCと液晶ペンタブレットを使って手描きで背景を制作しています。社内には、Autodesk 3ds Maxを使って3Dの舞台背景を作るスタッフもいるそうです。 加藤氏は、長年ワコムのペンタブレット製品を愛用してきました。

「最初に使い始めたペンタブレットはワコムのArtPadで、1994年か1995年からです。そのあとはずっとワコム製品一筋。1998年にIntuos(現Wacom Intuos Proシリーズ)が登場したので、そこから新しいモデルが出たら乗り換えるということを繰り返してきました。2011年頃に、ペンタブレットから液晶ペンタブレットのCintiq 24HDに乗り換えました。我々としては、ダイレクトにペンの先があるところに色が乗ってほしいという要望があるので、液晶ペンタブレットのほうが使いやすいと思いました」

現在、ととにゃんでは、ワコムの液晶ペンタブレットを16台、ペンタブレットを5台、あわせて21台導入しています。液晶ペンタブレットのうち、Wacom Cintiq Pro 27は8台と半分を占めています。3世代くらいの製品が共存している形ですが、基本的には、新人に前の世代の液晶ペンタブレットを使わせることにしているそうです。
「液晶ペンタブレットを使い慣れた人に最新の製品を渡し、新しい製品を購入したら、順に他のスタッフにもスライドしていく形です。液晶ペンタブレットは背景など描画用途のクリエイターの方が使っていますが、板型のペンタブレットは主に3Dで背景を制作するクリエイターの方が使っています」

アニメーションの背景制作における液晶ペンタブレットの魅力について、加藤氏は次のように説明しました。

「液晶ペンタブレットを一度使うと、もう元には戻れないですね。やはり、紙に描くのと同じようにダイレクトに描けますので。当社では、2Dで背景を描いている全員に液晶ペンタブレットを用意しています」

液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Proシリーズ」は、新製品が登場するたびにより使いやすく進化していることも、ワコム製品を使い続けている理由だと加藤氏は語りました。

「例えば、画面を回転して使えるようになったり、ペンの描き味も滑らかになったりしています。以前、板型のペンタブレットで描いていた頃は、タブレットの上に紙を置くなどの工夫をして、紙のひっかかりの感覚により近づけようと試行錯誤していました。液晶ペンタブレットは画面に直接描くことになりますが、こちらも紙の描き味に近づけるために以前のモデルではいろいろとシートを貼って試してみましたが、シートを剥がしたときに糊が残ってしまったりと苦労していました。でも、新しいモデルになるにつれて、フェルト芯などペン先もさまざまなものが選べるようになって、そのまま画面に描いても違和感がなくなってきました。最近は標準芯でも問題なく使えるようになっています。紙に鉛筆で描いていた感じに近いですね」

加藤氏は、2024年に最新のWacom Cintiq Pro 27に乗り換え、現在も愛用しています。ペンの技術が最新のWacom Pro Pen 3になり、精度や描き味がさらに向上している点も、加藤氏は高く評価しています。

「ペンの感覚は格段に良くなっています。ペンの入り抜きの感覚が以前のペンと比べて違うなと、触ってすぐに実感しました。それにすぐ慣れてしまって、もう前の製品には戻れないです」

それまで使っていたWacom Cintiq Pro 24(2018年発売)に比べて、Wacom Cintiq Pro 27では、スタンドが軽くなり、取り回しがしやすくなったこともうれしいと加藤氏は語りました。

「以前はスタンドが重かったので、設置するときに腰に気をつけながら置いて、一度置いたらもう二度と動かせないという感じでした。Wacom Cintiq Pro 27ではスタンドが以前よりも軽くなっているので、取り回しが楽になりました」

実際に、加藤氏は高さが調節できる台の上にWacom Cintiq Pro 27を載せて利用しており、腰の負担を減らすために高さを適宜調節して、立ったり座ったりして作業を行っています。

Wacom Cintiq Pro 27では液晶の周囲のベゼル部分が狭くなったため、設置に必要なスペースが前モデルの24インチとあまり変わっていないことが、今回27型を選んだ理由の一つといいます。

また、液晶の発色や表現できる色域についてもさらに向上し、高く評価しています。最近は以前に比べて解像度が高い4Kサイズの版権イラスト用のオーダーが増えているそうで、やはり液晶ペンタブレットも画面サイズが大きいもののほうが作業の効率が上がると加藤氏は語りました。

「レイアウトのスタンダードサイズは、最近はA4くらいが多くなっています。昔は、もっと小さかったのですが、そのサイズまで広げて齟齬がなければ、画面で見ても大丈夫なはずと。私も以前は24インチ、その前は27インチを使っていましたが、24インチあれば十分制作は可能です。ただ、最近はテレビも60型とかの大画面で見ることが多いので、27インチの液晶ペンタブレットの全画面表示で拡大してチェックすれば、テレビよりも近い距離で見られますので、27インチの方が便利だと感じますね。」

新製品のWacom Cintiq Pro 27は、描くことの気持ち良さを感じさせる製品だと加藤氏は満足そうに語りました。

「ペンの感覚が良くなって、描いているときに気持ち良さを感じます。液晶ペンタブレットは、我々にとって作品を作るための道具なので、自分の言うことを聞いてくれないとだめだと思いますが、Wacom Cintiq Pro 27は、そうした道具としての使いやすさが大きく向上しています。私も昔は紙に描いていましたが、今ではデジタルに慣れ、紙よりずっと快適に作業ができるようになりました。アニメーションの背景は、修正を求められることも多いのですが、描き直しや修正が簡単にできることがデジタルの最大の利点だと思います。液晶ペンタブレットは私にとって絵を描くための最高の画材であり、ないと仕事にならないものです。当社の若手クリエイターたちは、幼少期からデジタルで絵を描いている人たちなので、もう紙には描けないといっていました」

これからもアニメーションの世界を彩るととにゃんの制作を、描き手の感覚に自然に寄り添うワコムの液晶ペンタブレットが支えていきます。表現の可能性が広がるデジタル制作の現場から、これからも魅力的な作品の数々が生まれていくことでしょう。

加藤浩(代表取締役 美術監督)

アニメーション美術・背景を手掛ける株式会社美峰で、美術監督や美術監修などを担当。同社を退社後、2006年に妻の加藤光子氏と共に株式会社ととにゃんを設立。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の美術監督、「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」「ババンババンバンバンパイア」「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」などの美術背景を担当する。

クリエイティブソリューション
この事例のソリューションや
製品に関するお問い合わせはこちら