株式会社トリガー 様

アニメーションの可能性を拡げる地方スタジオの設立。
デジタル化と人材育成により可能に。

アニメーションスタジオ TRIGGER

作品が弾丸だとしたら、それを打ち出す引き金でありたい。「天元突破グレンラガン」で監督を務めた今石洋之を中心としたスタッフが独立し、新たに立ち上げたアニメーションスタジオ。2013年に初のTVシリーズ作品となる「キルラキル」を世に送り出し、その後も「リトルウィッチアカデミア」「SSSS.GRIDMAN」など、キャラクターや世界観までをゼロから創造するオリジナル作品を大きな武器として世界に挑むスタジオである。現在、スタジオ初の長編オリジナル映画「プロメア」が異例のロングラン(2019年10月現在)を続けている。

www.st-trigger.co.jp

いち早くデジタル作画を導入したトリガー
福岡スタジオでも一貫したペーパーレス化を推進

日本のアニメーション業界で、優秀なクリエイター陣を擁して海外でも人気の高いオリジナル作品を手がけることで異彩を放つトリガー。業界で急速に広まってきたデジタル作画でも同社はその最先端を走っています。

アニメーション業界の中でもいち早くデジタル作画の導入を模索してきた同社。2016年に設立した福岡スタジオでも、設立当初からデジタル作画のスタッフを募集し、新しいワークフローへのチャレンジを始めました。ネットインフラの整備や、作画から撮影までの一貫したペーパーレス化を推進してきました。

導入前、デジタル化をどこから始めるかという壁にぶつかった同社。うまくいかない場合は、紙に戻るという保険を敢えて捨て、若手の動画マンから徐々にデジタル化を推進し試行錯誤を続けてきました。辛抱強く人材育成を続けた結果、3年目あたりから、社員にも東京スタジオ以外で働くという選択肢が定着してきた感があったそうです。現在では福岡支社でのスタッフ構成は7名が九州地方出身、2名が関西地方出身となっており、現地採用が進んできています。そこにデジタル作画で参加しているアニメーター土肥氏にお話を聞きました。

アニメーターにとってメリットが多いデジタル作画
そしてCintiq Pro 16という選択

元々CGスタジオで主に遊技機向けの映像制作に関わっていた土肥氏ですが、作画アニメーターに憧れを抱いていたこともあり、地元に近い福岡という立地の福岡スタジオに参加しました。キャリアとしては、デジタル動画からスタートしましたが、現在では原画を任されるようになり、TVPaintやCLIP STUDIO PAINT EXといったソフトを使用して数多くのアニメーション作品に関わっています。

土肥氏は現在、16インチのWaco m Cintiq  Pro 16を使用しています。もっと大きな液晶ペンタブレットもある中でこの製品を選んだ理由は、4Kという液晶画面の解像度の高さもさることながら、16インチというそのサイズでした。画面が大きいと伸び伸びと筆を走らせることができる反面、非常に多くの線を引いて効率よく枚数を重ねていく必要のある作画の工程では、ストロークが長くなるとそれだけ時間がかかるという側面もあります。試行錯誤の結果、今の16インチのサイズに落ち着いたとのことです。

福岡にあっても東京スタジオとのやりとりはオンライン会議で十分対応でき、作画もデジタルなら場所を選びません。アニメーション制作のワークフローのフルデジタル化のために、福岡スタジオではデジタル作画で必須となる液晶ペンタブレットを戦略的に導入してきました。「デジタル作画は、修正に対してトライアンドエラーがやりやすいこと、物理的な紙がなくなりデータのやり取りが一瞬で終わること、均一な線を引くハードルが下がることなど、そのメリット大きいと思います。これから地方でも液晶ペンタブレットを使うことでアニメーションに関わる人が増えると良いなと思いますね!」と土肥氏は語ってくれました。

地方のスタジオにとって重要な産学共同の人材育成

プロデューサーの舛本氏は、地元の専門学校等を回って地道に講演やイベントに参加してきました。その結果、地方でアニメーターとして働くことに対する知名度が上がってきていると実感しています。「まずは地方にもアニメーションのスタジオがあるという認知度を広めること、学生さんと直接話しをするような関係になるには時間もかかりましたが、そのかいもあって東京や大阪以外の選択肢として認知されてきている」と言います。福岡スタジオとしては現在、自分たちのアイデンティティとして1本丸々福岡スタジオだけで作品を作りたいと考えており、まずはグロスで300カットのアニメーション作品をスタジオ内で完結することを目標に掲げています。「数年後にはショートアニメーションの作品でも良いので1クールでも回せるようになりたい」と抱負を語ってくれました。

「フルデジタルのアニメーション作品制作を担うアニメーターの人材育成に関しては、そもそも教えるほうにも多くの課題があります。社内で教師役としてスタッフをリードしていく人材の確保もまだ大変な状況にありますので、機材やソフトの使い方に慣れているデジタルネイティブ世代には期待が大きい」と舛本氏は語ります。「時間はかかるものの企業側も広くノウハウを提供し、専門学校などの教育機関と産学で共同して教育から採用という人材育成の流れを強化することが、地方でのアニメーションスタジオでは特に大切になるのではないか」とも語ってくれました。

「プロメア」を経てフルデジタル化へ

劇場アニメーション作品「プロメア」では、原画以降の作画700カットのうちデジタルで作業したカットは150カットほど。チャレンジとしてはそれでも多いカット数で、システムの統一、フローの整理、ソフト別の作法の違いの理解と、実際にこなしたからこそ実感した課題も見えてきたと言います。舛本氏は「作品上の制作の仕様とワークフローの統一が一番大事な気がします」と語ります。次の短編作品、テレビ作品では、その経験を踏まえて改善テストを行っている最中です。

従来のアニメーション制作では紙をベースに作画されていたため、制作スタッフが作画用紙の詰まったカット袋を運び、管理し、スキャンして… といったことが避けられません。液晶ペンタブレットで作画することでフルデジタルに移行すれば、仕上げ、撮影まで一貫してペーパーレス化することが可能になり、大量の作画用紙という物理的な制約から開放されます。アニメーターだけでなく制作面でもメリットが大きく、そのためデジタル工程を担う人材教育も重要視されています。

「プロメア」に関しては、演出スタッフがある程度デジタルでチェックできる体制が組めましたが、次のチャレンジとしては1話全部をフルデジタル、ペーパーレスで制作、完結できることを目標に掲げています。アニメーターから演出陣まで内部でどこまでできるかを目標に改善を続けています」と舛本氏は語ります。福岡スタジオは、地方のスタジオだからこそ東京スタジオに負けない魅力的なスタジオになれるよう日々切磋琢磨していると言います。場所を選ばない、これからのアニメーション制作。地方のスタジオが、日本のアニメーションの可能性をさらに拡げていくに違いありません。

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