グラフィックデザイナー松田行正
書籍・雑誌のデザインや建築物のサイン・デザインを中心に活躍中。ミニ出版社、牛若丸も主宰。著書は、牛若丸出版では『ZERRO』や『円と四角』、『code』、『et(エ)──128件の記号事件ファイル』など。他に、『眼の冒険』(第37回講談社出版文化賞ブックデザイン賞 受賞)、『はじまりの物語』(以上、紀伊國屋書店)、和力(NTT出版)など。2009年6月には角川学芸出版より『線の冒険 デザインの事件簿』を上梓
- 使用タブレット
- Intuos
- 使用歴
- 2007年6月〜
- きっかけ
- あるセミナーでペンタブレットを使う機会があり、使ってみたら手放せなくなってしまったんです。
グラフィックデザインにおけるDTP環境とレイアウトソフト
本や雑誌といった出版物のアートディレクションを数多く手がける松田行正さん。早くからMacのDTPに移行した松田さんにとって、快適な作業環境は「仕事の効率にも直結する重要なポイント」だという。
デザインのプロが選ぶ道具はどんなものかを聞いてみたい! そこで、お気に入りツールを伺った。
松田行正さんがMacでのDTPを導入したのは今から20年近く前の1989年から1990年頃のこと。全篇ダイアグラムで構成された『絶景万物図鑑』の制作後に、周囲からイラストや画像を扱うならMacを導入した方がラクになるのではないか? とアドバイスを受けたことがきっかけだった。
「もちろん、当時は今ほど精密な線のキレや輪郭が描けるほどマシンスペックも高くありませんでした。印刷してみると、線や文字が滲んだりぼやけたり。今ではトラブルとかエラーの部類になるかもしれませんが、当時はそうした仕上がりが面白くて味があったんですよね。それに、ちょうど同じ頃『牛若丸』を起ち上げて自費出版を始めていたので、すべての工程を自分でできる、しかも写植に掛けるコストが減らせる、という部分に魅力を感じました」
Macを導入してから、非売品の印刷物制作などを経て少しずつ新しい環境へ移行してきた松田さん。93年以降は出版社でもある『牛若丸』の本格稼働となり、完全にデジタル環境にシフトした。
「レイアウトソフトもQuarkXPressしかない状態で、Macで仕上げた物をそのまま印画紙出力、版下として印刷会社に入稿していました。もちろん、欧米製のソフトではきちんとした日本語組版はできません。でも、設定を知り尽くすことで自分が納得できる仕上がりは得られていました。あまりに使い込みすぎて“Quarkマスター”を自称していたくらい(笑)。現在はMac OS X環境でAdobe InDesignを使用しています。Adobe InDesignは、日本語組版に対して高いレベルで実現できますね。改めて、日本語組版の意味を捉え直すという意味でも、画期的なレイアウトソフトだと思います」
仕事の効率を上げるペンタブレットの存在
○快適&効率的に仕事が進められる理由はペンタブレットの導入
現在、松田さんの手元にあるのはマウスではなくワコムのプロフェッショナル向けペンタブレット「Intuos4」だ。
ペンタブレットを使う場面と言えばレタッチやイラストなどフリーハンドで描く世界の話では? エディトリアルデザインでペンタブレットを使っていると聞くと、どのように使っているのか知りたい! と興味が湧くのではないだろうか。
「マウスを使わなくなってから、もう2年半くらいになります。最初に使ったのは2007年6月のこと。あるセミナーでペンタブレットを使う機会があり、使ってみたら手放せなくなってしまったんです。とにかく、長年使い慣れたペンと同じ形状のポインティングデバイスでアプリケーションを操作できるのが便利ですね。ペンタブレットを使い始めて思ったのが、マウス操作は思っている以上に身体的負担が大きいということ。マウスを使っていると、肘をついたまま手首から先を動かすことが多いので、肩や背中にも負担が掛かっているんですよね。僕が想像するに、あれは今まで人類が経験したことが無かった動きに違いない(笑)。まあ、それは極端な話だけど、そう思えてしまうくらいペンタブレットは長時間使っていてストレスを感じない」
「僕の使い方はペンタブレットのヘビーユーザーにはほど遠いんだけど」と言われる松田さん。しかし、同業の友人たちはその環境に興味津々のようで、「(ペンタブレットの)使い心地はどう?」と聞かれることも多いのだとか。使い慣れるまでに気になった部分はなかったのだろうか?
「もちろん、長年マウスを使っていたわけだから最初は戸惑う部分もありましたよ。とくにマウスカーソルを動かす距離感がマウスとペンタブレットでは違うので、最初は大きく動かしすぎて思ったようにポインタ操作ができないこともありました。ペンだと少しの動きでも感知してくれるので……。今ではペン操作ならではの感覚にも慣れて、逆にマウスを使うほうが疲れてしまう(笑)。それに、不思議なことにMacに向かって作業する時間も短くなりました。効率的に仕事ができるというのかな。たぶん、無駄な動作がなくなってるからだと思うんだけど」
エディトリアルデザイン×ペンタブレット環境は、想像以上にエルゴノミクス的な効果が大きいようだ。そして、マウス使用のストレスから解放され、作業効率がアップしたという点は見逃せない。すっかりペンタブレットが手になじんだ様子で、ペンを持ったまま考え事をしたり、そのままオフィス内を移動したりと、その使用感はアナログのペンと同じ。そんなところが「たまらなく使いやすい」と松田さんは言う。
「Adobe Photoshopで写真の切り抜きをする、イラスト作成に使う、そんなペンタブレット本来の使い方にも魅力を感じるし、実際に以前より簡単にマスク作成やダイアグラムのデザインが行えます。でも、僕の中では”最高に使いやすいポインティングデバイスがペンタブレットだった”ということが使い続けるいちばんの理由なんです。一度使い慣れると、もうマウスには戻れませんよ」
松田さんがオススメするIntuos4の使い方
現在、松田さんの手元にあるのはマウスではなくワコムのプロフェッショナル向けペンタブレット「Intuos4」だ。
Intuos4は2009年4月に発売されたIntuosシリーズの最新モデル。松田さんの普段の使い方と合わせて、エディトリアルデザインにオススメの機能を紹介しよう。
1、3種類のサイズから選べる!
松田さんによれば「エディトリアルデザインはイラスト作成やレタッチ作業と違ってメニュー操作がメインなので入力エリアは小さくても大丈夫」とのこと。Intuos4は最小サイズが309×208mm(Small)だから机上スペースを圧迫せず導入できる。
2、タッチホイールで数値増減が可能!
画面スクロールや拡大縮小に便利なタッチホイール。しかし、エディトリアルデザインで使用するなら、メニュー画面の数値増減に使うと便利。ペンを持たない手で操作できるから、効率アップが期待できそう。
3、よく使う機能を画面に表示してペンで選択できる!
ラジアルメニューを使えば、コピーやペースト、アンドゥといったアプリケーション操作によく使うメニューをワンタッチで画面上に表示し、ペンで選ぶだけで実行可能。キーボードを使う必要がないのでさらに手首の負担が減るはず!?
掲載:マイコミジャーナルクリエイティブ
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/09/09/ymatsuda/