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青山 裕企 フルHDの液晶モニタでより写真に暗室で行なっていたように、近づきながらレタッチできるのが快適 製品レビュー:Cintiq 13HD touch

「Cintiq Creators Mash-Up」にフォトグラファーとして参加した青山裕企さん。大きくジャンプしたサラリーマンの姿を撮った『ソラリーマン』シリーズや、制服姿の少女をフェティッシュな視点で撮影し、昨年映画化もされた人気シリーズ『スクールガール・コンプレックス』などの作品で、注目していた方も多いでしょう。今回、参加クリエイターの共通テーマとなった「女の子」は、青山さんがライフワークとして撮り続けている『スクールガール・コンプレックス』シリーズにも直結するモチーフでした。しかし今作品でコラボレーションするクリエイターは、ディレクターの関和亮さんだけでなく、イラストを担当した三輪士郎さんや、CGアニメを作ったYKBXさん、音楽のkzさん、アニメーションの水尻自子さんなど、強烈な個性を持った相手ばかり。そんな中で青山さんは、関さんとも相談のうえ、自身の写真の魅力を活かした「女子高校生を連続撮影した写真を使った、ストップモーションアニメ」に挑戦することになりました。その制作エピソードをうかがいました。

Profile 青山祐企(あおやま ゆうき) / 今プロジェクトの役割:Photograph

フォトグラファー、ディレクター。サラリーマンや女子学生など「日本社会における記号的な存在」をモチーフに、自身の思春期観や父親像を反映させた作品を制作。『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』(2014年)で、映画監督デビュー。

細部までフェッティシュにこだわりぬく写真家が、
コマ撮りのアニメーションに初挑戦

じつは撮影のギリギリ直前まで、「フォトグラファーとして、完成度の高い1枚の写真のみで勝負するのもアリではないか? という葛藤があった」と吐露してくれた青山さん。しかし最終的には、せっかく他のクリエイターとのコラボレーションで動画作品を作れる機会だということで、「コマ撮りを重ねることで可能になる、写真にしかできない動画表現」という新しい挑戦を決意したそうです。モデルに起用されたのは、青山さんも審査員として参加した講談社が主催する女性アイドルオーディション『ミスiD 2015』受賞者でもある新潟県在住の現役高校生・新井希美さん。審査のなかで、青山さんが「まだ磨かれていないダイヤの原石」「未知の可能性を感じる」と惚れ込んだモデルさんです。撮影は、廃校になった小学校をリノベーションした都内スタジオで行われ、午後の柔らかな陽射しを活かした自然光のなか、2時間で約160枚の写真が撮影されました。

「写真をストップアニメーションに加工することが前提でしたから、今回は精密にレイアウトを作り込んだ写真ではなく、自然光を採り入れたライブな撮影を意識しました。そのほうがアニメーションにしたときの面白みが増すと考えたからです。とくにこだわったのは、「靴下の上げ下げシーン」です。そこでも、女子高校生が本当に靴下を上げたり下げたりしているようなライブ感を出したかったので、靴下をずらす幅もあえて均等にせず、履いている人が実際に引っ張ってできるシワ感にこだわって、生っぽい雰囲気を出しました」

まさに「神は細部に宿る」を実践する、青山作品の真骨頂が垣間見えるエピソードです。他にもふだんの青山さんの作品とは違い、動画を想定した上でこだわったポイントがあります。それがモデルの顔の映り込みです。
「今回は動画全体のコンセプトを考慮して、制服を着た女子高校生をより記号的に捉えられるよう、モデルの顔をあえて強調しない構図を心掛けて撮影しました。なので、通常のグラビア写真などに比べて、引きの画角では身体のポーズ、フォルムを強調し、モデルに寄った写真も、たとえば机に身体を預けるようにして、顔がはっきりとわからないようなカットを多く撮っています」

アニメーションならではの雰囲気にあわせた、
リアリズムを活かしたレタッチ

撮影された写真素材は、青山さんの手でフォトレタッチ。撮影時からこだわりを注ぎ込んだという「靴下の上げ下げシーン」は、動画の中でも特に印象的なパートです。具体的にはどのようなレタッチを施していたのでしょうか。

「僕は撮影の段階で作り込むので、あまりレタッチを多用するタイプではないのですが、大判のプリント作品ではゴミ取りなどがどうしても必要なので、フォトレタッチを行なっています。今回はコマ撮りアニメーションにした際に、それぞれの写真に違和感が出ないよう肌の色を調整しながら、ハイライト部分の陰影、階調が滑らかになるようにレタッチを行いました。また、一枚物の写真とは違って、映像としてのリアリティーが重要なので、あえて靴下のゴムの跡なども自然なままに残しています。むしろゴムの跡を若干強調するようなレタッチを施していますね」

そして青山さんの写真はすべてディレクターの関さんに送られ、コマ撮りアニメーション動画へと加工されました。ちなみに、こだわりの「靴下の上げ下げシーン」に登場するペンは「Cintiq 13HD」に付属する「プロペン」。後日に、関さんがペンを動かしている様子を撮影し合成しています。演出効果にも「Cintiq」が活躍しています。

ついに完成した
「Cintiq Creators Mash-Up」
コラボレーション動画について

「じつは160枚撮影した中から実際にどの写真を使うかは、最終的には関さんにお任せしたので、僕も完成映像を観るまで、どんな作品になるかとドキドキしていました。ストップアニメーションも初挑戦だったので、とても素敵な作品にしていただけて光栄です。撮影時間を午後帯にしたことで、柔らかな自然光で放課後のアンニュイな雰囲気も出せましたし、こだわった靴下のシーンも予想以上の印象を残せたと思います。僕のパートの直前に映像作品を制作してくれた水尻自子さんとは、関さんとの打ち合わせを一緒に行ないました。そのとき、それぞれ細かいところまで設定やモチーフを話したりしなかったのですが、作品が出来上ってみると、モチーフが偶然にも同じ「靴下」だったので驚きました。仕上がってみると、水尻さんと僕の個性の違いがしっかり表現に表われているのがとても面白い。今までにない刺激的な体験ができました」

「Cintiq 13HD」製品レビュー

写真と直接向き合えるフィジカルでライブ感のあるレタッチが可能

「これまで、写真のゴミ取りなどのレタッチ作業にはペンタブレットのIntuosシリーズを使ってきましたが、今回Cintiq 13HDを活用してみて、液晶画面の写真をペンでダイレクトに編集できるフィジカルな感覚がとても気に入りました。僕は、Adobe Photoshop Lightroomをメインにレタッチを行っているのですが、写真のレタッチというのは非常に繊細な作業です。今までは肌色を調整する際に、マウスで修正ポイントを選択してトーンの数値を上げ下げする作業がとても機械的に感じられましたが、Cintiq 13HDならペンで修正したい肌の上のポイントを選択して、そのままドラッグすることで肌色の調整が行なえるので、レタッチ作業にもライブ感を味わえます。ペンで写真を触れながら、レタッチしていく作業には、フイルム時代に暗室でプリントの覆い焼きをしたり、焼き込みをしたり、実際にプリントを一枚ずつ手探りで作業していた頃のアナログ感覚が蘇ってきてワクワクしました。

また「Cintiq 13HD」は机に寝かせて使えるので、暗室でプリントを見ながら現像していくように、写真と一対一で向き合いながら、すぐ目の前で作業できるのが嬉しいです。液晶画面もフルHDでとても綺麗なので、実際にプリントされた写真を目の前にしている気持ちになれますし、デュアルで他のモニタを接続して、微妙な色調を確認することもできます。間にデバイスをあまり挟まず、作品と直接向き合える感覚が持てるのは、写真家にとって重要なモチベーションですね。

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