美術監督増山 修株式会社インスパイアード
1974年生まれ。スタジオジブリ入社後、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『崖の上のポニョ』、『コクリコ坂から』など、宮崎駿監督作品をはじめ、『時をかける少女』、『東のエデン』、『Je t’aime』など数々の作品に参加。現在、インスパイアード代表。「増山アートアカデミー」をインスパイアードにて開講中
- 使用タブレット
- Intuos4
- 使用歴
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- きっかけ
- テレビアニメではスケジュールが厳しいので、修正などがあるとき、デジタルで作業していたほうが負担が少ないため
デジタルで取り組む背景美術の世界
- 増山さんは、いつ頃からデジタルで作画されているのでしょうか?
増山修(以下、増山) 「初めてデジタルを導入したのは2004年の『ファンタジック・チルドレン』という作品ですね。それまでは、完全にアナログで背景を描いていました」
- どのような理由でデジタルに移行したのでしょうか。
増山氏 「技術的な部分よりも、スケジュールの事情が大きかったですね。私は『ファンタジック・チルドレン』に美術で参加したのですが、その作品で初めてテレビアニメのシリーズ複数話を担当することになったのです。そうなると、1話あたり300カットの背景画を見なければなりません。当然、その300枚に統一感を持たせるための作業量はアナログでは膨大なものになってしまいます。また、テレビアニメではスケジュールが厳しいので、修正などがあるとき、デジタルで作業していたほうが負担が少ないのです」
- 当時、背景作画のスタッフは、皆さんデジタルで作業されていたのでしょうか。
増山氏 「背景に関していうと、その現場では私だけが使い始めていた記憶があります。基本的にアナログで描かれた素材をスキャンして、手を加えて納品状態まで作り上げるというワークフローで、描くというより、色調を整えるのが作業の中心です。あと、デジタルデータの場合、レイヤーでパーツ分けできるとのも、利点ですね」
- 増山さんは、当時からペンタブレットを使用していたのでしょうか。
増山氏 「そうですね。確か『Intuos2』を使っていたと思います」
- ペンタブレットを初めて使った時の印象を覚はいかがでしたか。
増山氏 「当時はデジタルへの移行を急がなければからなかったので、短期間でIntuosの操作方法を覚えた記憶があります。ですから、色々な機能などは試せなかったのですが、抵抗もなく、すんなりとアナログから移行出来ました。使いやすいツールだったという印象がありますね」
- 完全にフルデジタルに移行したのはいつ頃ですか。
増山氏 「早い人はかなり前からフルデジタルで作業されていたと思うのですが、僕は押井守監督の『Je t’aime』に参加した2010年からですね。ただ、フルデジタルとはいっても、アナログを活かした作業もあります」
- それは具体的には、どのような作業でしょうか。
増山氏 「背景を描くときに、最初の素材をアナログで用意して組み合わせ、PC上でフィルターをかけ、デジタルで描き起すということもあります。また、逆にデジタルで描いたデータをプリントアウトして、それに手描きタッチを加えるという手法もあります」
「Intuos4」の魅力とは
- 増山さんのスタジオでは、皆さんが背景を描く作業に「Intuos4」を利用されているのでしょうか。
増山氏 「そうですね。スタッフ全員が『Intuos4』と『Photoshop CS4』を使用して描いています。実は、私自身は最近まで『Photoshop CS3』を使用していて、その関係で『Intuos3』を使っていたんです(笑)」
- 増山さんも『Intuos4』に移行されたわけですが、使用感はいかがですか。
増山氏 「エクスプレスパッドは、まだほとんど使用していないのですが、描き味はさらに良くなっていますね。レタッチなどの繊細な作業がしやすいという印象で、使っていてストレスがほとんどありません」
- 使ってみて、便利だと感じた機能などはありますか。
増山氏 「タッチホイールを使った画像の回転機能は良いと思いました」
- これから、試してみたい機能はありますか。
増山氏 「オプション品のアートペンの存在を最近まで知らなくて、まだ試してはいないのですが、ブラシの回転と相性が良さそうですね」
- 『Intuos4』を使ってみて、さらに作業効率が良くなったという実感はありますか。
増山氏 「作業効率は大幅に良くなりましたね。今の状態でも充分満足なので、夢のような希望になってしまうのですが、まだ欲しい機能はありますね」
- それはどのような機能でしょうか。
増山氏 「iPadにあるようなタッチセンサーで、指を使って画像の回転や拡大・縮小などが直接出来たらより使いやすいと思います。あと、ペンタブレットでほとんどの作業ができても、結局、キーボードを多少は使うことになりますから。個人的には、タブレットと一体型になっているようなキーボードがあると嬉しいですね。さらに贅沢を言わせてもらえば、電子ペンでアナログの筆の感覚まで再現出来たら、最高ですね。電子ペンが筆のようなデザインで、毛の1本1本にセンサーが付いていて、接地面を感知してくれる……。そんな夢のようなIntuosが登場するのを期待しています」
掲載
マイナビニュース:http://news.mynavi.jp/articles/2011/11/02/wamas/index.html