ゲーム制作会社株式会社サイバーコネクトツー
『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズ、『.hack』シリーズなどを手掛け、今勢いに乗るゲームデべロッパー。企画からキャラクターデザイン、サウンド、ゲームシステム、プログラムに至るまで全ての工程を自らの手で行う。特に質感表現・キャラクターアニメーションなどで高い評価を得ている。
- 使用タブレット
- Cintiq
- 使用歴
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- きっかけ
画力をダイレクトに活かせる液晶ペンタブレット Cintiq 21UXがもたらす紙に描く感覚
液晶ペンタブレットのフラッグシップモデルとして高い人気を誇る「Cintiq 21UX」。今年、大幅にリニューアルされた本製品は、Intuos4同等にまで刷新された描画テクノロジによって、これまで以上に紙に描くような感覚が味わえるようになった。その魅力を、人気ゲームタイトルを多数世に送り出しているゲームデベロッパーである株式会社サイバーコネクトツーのアーティスト藤本美樹氏に伺った。
○よりリアルに体感できる紙に描くという感覚
- 藤本さんは以前よりCintiq 21UXを活用した映像制作を行なっているとのことですが?
藤本氏 「そうですね。サイバーコネクトツーに入社して以来、Cintiq 21UXの以前のモデルを業務で活用していました。多くのデザイナーさんはIntuosからCintiqへ乗り換えることが多いようですが、私はCintiqを最初から選択し、そのまま使用し続けています。紙に画を描くのと同様のスタンスで液晶画面に直接ペンを走らせて画を描けることに優位性を感じていて、とても魅力的でした。実は導入にあたっては私も含めて社長に直接掛け合って入れてもらったのです(笑)」
- Cintiq 21UXを用いてどのような作業を行なっているのですか??
藤本氏 「インターンの時を含め、入社1~2年はCG映像制作全般を行なっていましたが、CGソフトのオペレートにもCintiq 21UXを活用していました。マウスで操作するよりも直感的に作業できますし、手を大きく移動させるといった無駄がなくなります。直近の仕事では 『NARUTO -ナルト-疾風伝 ナルティメットストーム2』のアーティスティックフィールドの背景制作を担当しました。このアーティスティックフィールドはアニメの世界を映像化したようなフィールドで、こちらは2Dワークが中心となっています。作業の内容は簡単に話すと、道の長さや木の高さなどの要素を板ポリゴンなどで構成された3Dの簡易な線画のようなものに、2Dで背景を描いていくといった流れで作業が行われますが、通常のゲームパートに比べて、木漏れ日の表現や色彩など、より繊細な作業が求められるものでした。そこでは直接紙に画を描くような感覚を味わえるCintiq 21UXが求められるクオリティに到達するのを大きく手助けしてくれたと実感しています。」
- なるほど。Cintiq 21UXを作業の中心におかれているわけですね。新しいCintiq 21UXの印象はいかがですか?
藤本氏 「まず触ってみて、紙に描くような感覚がよりリアルになったというのを感じました! 具体的には液晶にペンを走らせた時の抵抗感ですね。ペンの芯や液晶、性能の向上など様々な要因によって得られるものだとは思いますが、以前のものではやや抵抗感に欠ける部分があり、紙に描くよりもペンが滑ってしまうような感覚が若干ありました。新しいCintiq 21UXではほどよい抵抗感が味わえ、描く手応えを感じることができます。これこそが、まさに紙に描く感覚ですね。」
- そうですね。その感覚の強化が今回は大きいですね。
藤本氏 「中でも、筆圧の表現や、ストロークの際などの軽いタッチの読み取りの性能が格段に向上していることは、作業の中で実感できます。」
- そのあたりはIntuos4の技術の導入がもたらしたようですね。ON荷重最小1gと2048レベルの筆圧感知機能がCintiq 21UXに採用されているとのことですよ。
藤本氏 「以前のものと比べて、格段に違いますね。描いた感覚と、実際に描いたラインがイメージ通りでブレがないという印象です。ペン自体のデザイン変更も私的にはとても良いです。長過ぎず太すぎずといった感じで、持ちやすいですね。また、芯の種類もどんどん充実していっていますね。描き味を選択できるのはとても嬉しいですし、ペン立ての中に芯を収納できるようになっているのもちょっと便利ですね。」
- 確かに。作業中になくすこともありませんね(笑)
○画力を最大限に活かすペンタブレットの機能
- その他で便利になったと思う部分はありますか?
藤本氏 「エクスプレスパッドの改良ですね。トラックパッドの位置が変更されたのもとても良いですね。作業中に誤って触れてしまって誤作動を起こすこともなくなりますし。あと、私はもともと各種オペレートをすべてCintiq 21UX上で行なっていて、制作時は右手にペン、左手は筐体の左面に添えるという姿勢をとっています。トラックパッドは筐体の裏でちょうど左手の指先で操作できますし、ファンクションキーは左手の親指を中心に操作するというように、手を大きく移動させることなく行えるのがとても自然なんです。」
- 多くのデザイナーさんが同様に思っているみたいですよ。
藤本氏 「あと、ペンのサイドスイッチや、ファンクションキーには、使用頻度の高いアンドゥやリドゥなどのコマンドを中心に割り当てています。ファンクションキーはボタンの数も増えたので、さらに多くのショートカットをソフトウェアごとに登録して使い分ければ、より洗練した作業が行えると思います。」
- ペンタブレットのみでの作業がより行いやすくなったと?
藤本氏 「そうですね。カスタマイズ性に富んでいるので、これから使いこなしていけばより生産性は向上すると思いますね。」
- 描く作業にもより集中できますね。サイバーコネクトツーさんの作品を見ると、画を描くことに優れたデザイナーさんが非常に多いという印象を受けるのですが、その意味でもCintiq 21UXはもはやマストなアイテムなのかも知れませんね。
藤本氏 「定期的にデッサン講義や社内コンペが開催されていて、強制ではないにも関わらず多くのスタッフが参加しています。CGを用いたとしても画を描けるということはデザイナーにとって必要な素養だと言えますし、そうしたトレーニングの成果が映像制作に還元されているのだと思います。そうして養われた画を描ける力をダイレクトに結びつけられるアイテムの1つがこのCintiq 21UXだと思います。やはり、画面に直接描けるからこそ得られる恩恵なのだと思います。」
Review 01 追求された紙に描く感覚
ON荷重最小1gと2,048レベルの筆圧感知機能がもたらしたのは、まさに紙に描く感覚。藤本氏は画像にあるように液晶をべったりと寝かせた状態で作業に臨むとのことだが、「描く手応えが実感できる」という藤本氏の言葉からも、その感覚の追求が結果として現れていることが判る。また、液晶は以前のCintiq 21UX発売当時はアクリルであったが、ガラスに変更されたことで映り込みがかなり軽減されており、ストレスなく作業が行える
Review 02 タブレット上で完結されるオペレート
右手にペン、左手でエクスプレスパッドを操り、すべてのオペレートをCintiq上で行うという藤本氏。ペンのサイドスイッチや、ファンクションキーには、アンドゥやリドゥなど使用頻度の高いコマンドを中心に割り当て使用しているとのこと。手の動きに無駄がないことで効率向上も大きいが、それ以上に描く作業に集中できることが最大の利点のようだ
Review 03 画力を活かす液晶ペンタブレットの実力
藤本氏の直近の仕事では『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム2』のアーティスティックフィールドの背景制作を担当。画像から判断できる通り、繊細そのもの。直接液晶画面にペンを走らせたからこそ、ダイレクトに画力を活かすことができた結果と言える
▼Information
『NARUTO -ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム2』
発売:バンダイナムコゲームス
開発:サイバーコネクトツー
発売日:2010年10月21日
価格:7,329円
ジャンル:忍道対戦アクション
プラットフォーム:PlayStation3、Xbox 360
© 岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ
© 2010 NBGI
掲載:CGWORLD.jp
http://cgworld.jp/feature/interview/cintiq21ux.html