ミュージシャン杉山洋介paris match
Paris Matchのメンバーとして2000年4月ビクターからアルバム「volume one」でデビュー。「SUMMER BREEZE」、「太陽の接吻」、「STAY WITH ME」、「ETERNITY」等、テレビCMやドラマで楽曲が多数使用される。これまで、8枚のオリジナルアルバム、1枚のカバーアルバム、2枚のベストアルバムをリリース。日本のみならず、韓国を始めとしたアジア圏内や欧米でも高い評価を得る。2009年には約2万人規模の「第12回保寧(ポリョン)マッド祭り記念アジアドリームコンサート」にゲスト出演。ソウルでは2日間に渡るワンマンライブを敢行。Paris Matchの全ての楽曲の作曲/編曲を担当。レコーディングから最終的なミックスまでを、自ら設立したcoolism recordsのスタジオにて行っている。また、jazoulster名義でのソロアルバムも発売。MAYSA LEAKをフューチャーした「FAMILY AFFAIR」(スライ&ザ・ファミリー・ストーンのカバー)が海外でも大きな話題になり、ロンドンのJAZZ-FMのコンピにも収録された。レーベルプロデューサーとしても活動開始。
- 使用タブレット
- Intuos
- 使用歴
- -
- きっかけ
1.作曲、レコーディングからマスタリングまで、全てを自宅スタジオで
ボサノヴァ、ジャズ、ソウル、クラブミュージックが溶け合う、ただひたすら良質なPOPミュージック。それを発信し続けるアーティスト paris match(※paris matchのインタビューはこちら)。デビュー前からPro Toolsを導入し、「スタジオと同じレベルのレコーディング」を自宅スタジオで実現させていたというparis matchの全楽曲を手掛ける杉山洋介氏に、レコーディングとペンタブレット「Intuos4」との親和性などについて話を訊いた。
○Logic ProとPro Toolsをどう使い分けているのか
自宅スタジオで作業するparis match 杉山氏。このスタジオで楽曲制作からレコーディング、最終的なマスタリングまで、すべての作業が行われる。
- 杉山さんは、どのような手順で自宅レコーディングを行っているのでしょうか?
杉山洋介(以下、杉山) 「僕の場合は、AppleのLogic Proを長年使用していて、これで曲を作っています。PCのキーボードにも、Logicに対応したショートカットキーのカバーが装着されています」
- 楽曲制作は全てPC上で行うのでしょうか?
杉山 「そうですね。普段自分がよく使う音色の楽器のプラグインが、Logic上に置いてあって、それをPC上でシミュレートして作業しています。簡単な流れとしては、Logicでプログラミングして作った音のデータを、最終的にPro Toolsでミックスしています」
- LogicとPro Toolsを使い分けているのは、なぜなのでしょうか?
杉山 「LogicやCubaseなどのソフトは元々、ミュージシャン向けで、MIDIシーケンサーから始まったソフトなんです。それに対してPro toolsはエンジニアさんが使う録音のミキサーやテープレコーダをシミュレートした部分からスタートしたソフトなんです。現在ではどちらでも同じ作業ができるようになっているのですが、単に慣れですね。スタジオから来るエンジニアさんはPro Toolsに慣れているので、僕がLogicで作った音声データをPro toolsに並べて作業するという感じです。どちらのソフトでも、プラグインも共通しているものがほとんどなので、問題なく作業できます」
- 生演奏部分やボーカルに関してはどのような手順なのでしょうか?
杉山 「生演奏の部分に関しては、Logicでデモ音源を作って、そのデータをミュージシャンの方に聴かせて、それを参考に演奏してもらうという場合が多いです。同じLogicを使われているミュージシャンの方には、データをWeb上でお渡しして、演奏していただき、データを送り返して頂くという場合もあります。そうして出来た生演奏のデータを、デモの打ち込みデータと差し替えていきます。曲のイメージによっては、リズムだけなく、ストリングスや管楽器なども打ち込みデータでやる場合もありますが、生演奏が最適な場合は、打ち込みデータはあくまでも、デモとなります。曲単位で、僕の場合はどちらのケースもありですね」
- 前回のお話でもありましたが、「スタジオと同等のツールが自宅に用意できる」という部分だけでなく、Web環境の変化もレコーディングを大きく変えましたね。
杉山 「そうですね。演奏データのやり取りはもちろんですが、譜面をPDFで送ったり、MP3でデモを送って、『ちょっと聴いてみてください』という事も簡単に出来ます。インターネットが出始めた頃に『出来る』と言われていたことが、最近は普通に出来るようになったので、レコーディングが本当に楽になりました」
杉山氏のレコーディング風景。録音した音データの波形を編集中。ミキシング、ミックスダウン、マスタリングも、このスタジオで行われる。
2.「Intuos4」は波形の修正やフェーダの操作に使える
○ペンタブレットとレコーディング作業の親和性
波形の処理をペンタブレットで行う杉山氏
- 杉山さんは、最近スタジオワークで「Intuos4」を取り入れてみたそうですが、スタジオワークでペンタブレットをどのように使われるのでしょうか?
杉山 「まだ、試してみたという程度なんですが、色々と使い方はあると思います。僕はLogicを10年使用していて、キーボードやマウスでの操作が慣れているのですが、これから音楽制作ソフトを初めて使うという人にはお奨めできます」
- それはどんな部分なのでしょうか?
杉山 「例えば波形をいじるときに、マウスよりも、ペンタブレットのほうが少ないアクションで楽に操作できると思います。ボーカル音源なんかだと、細かいリップノイズという物がどうしても所々で入ってしまうのです。そのリップノイズに関して、最後のミックスの時、音を聴きながら波形を見て除去していくという結構細かい作業があります。それがペンタブレットだと、マウスより楽に出来るという印象がありますね。慣れは必要ですが、腕の動きも少なく、疲労も少ないかもしれません」
- 波形の処理は、確かにペンタブレットだと作業し易いかもしれませんね。
paris match
2000年4月ビクターからアルバム「volume one」でデビュー。「SUMMER BREEZE」、「太陽の接吻」、「STAY WITH ME」、「ETERNITY」等、テレビCMやドラマで楽曲が多数使用される。これまで、8枚のオリジナルアルバム、1枚のカバーアルバム、2枚のベストアルバムをリリース。日本のみならず、韓国を始めとしたアジア圏内や欧米でも高い評価を得る。2009年には約2万人規模の「第12回保寧(ポリョン)マッド祭り記念アジアドリームコンサート」にゲスト出演。ソウルでは2日間に渡るワンマンライブを敢行。メンバーの杉山洋介は、全ての楽曲の作曲/編曲を担当。レコーディングから最終的なミックスまでを、自ら設立したcoolism recordsのスタジオにて行っている。また、jazoulster名義でのソロアルバムも発売。MAYSA LEAKをフューチャーした「FAMILY AFFAIR」(スライ&ザ・ファミリー・ストーンのカバー)が海外でも大きな話題になり、ロンドンのJAZZ-FMのコンピにも収録された。レーベルプロデューサーとしても活動開始。
杉山 「あと、フェーダの上げ下げのような、フィーリングの操作はPC上のマウスだと難しい部分もあるんですよ。例えば、フェーダはいくつかのつまみを同時に操作するんですが、PCだと、マウスでこっちのつまみをいじったから、次はこっちというような感じで、段階を踏まないとならないのです。ミキサーの実機に近い形で操作するには、どうしても高価な専用コントローラが必要なのですが、ペンタブレットを使いこなせば、コントローラを購入しなくても、代用可能な部分があるかもしれません。ペンタブレットでも、液晶タブレットなら、より親和性があるかもしれませんね」
- それでは、最後にこれからPCで楽曲制作を始めたいという読者にひとことお願いします。
杉山 「僕らが自宅で録音を始めた20年前に比べたら、今は夢のような時代です。ドラムマシンひとつで10万円はしていましたし、minimoogなんて単音しか鳴らないものでも数十万円しました(笑)。今ならほんの数万円で、当時なら数百万円した機材が揃います。何でも出来るからこそ、何をしたらいいのかでつまずく人も多いと思います。でも、ソフトを購入したその日から機能を使いこなせるわけないですし、楽曲が簡単に出来るわけはないのだから、とにかくいじり倒して欲しいですね」
掲載:マイコミジャーナル
http://journal.mycom.co.jp/articles/2010/05/26/pmsypen/index.html