イラストレーター
まさよ
ビジュアルノベル『キラキラモンスターズ』のキャラクターデザイン・原画を手掛け、可愛い女の子キャラクターのイラストで注目のイラストレーターまさよさんによる「Wacom Cintiq Pro 24」を使ったライブペインティングを公開!(2021年3月2日撮影)
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Drawing with Wacom 116/ まさよ インタビュー
まさよさんのペンタブレット・ヒストリー
『キラキラモンスターズ』パッケージイラスト(2020)
©kirakiramonstars
――まさよさんがデジタルで絵を描き始めたのはいつ頃ですか?
中学生の頃から少女漫画や萌えイラストが大好きで、「自分でもこんな素敵なイラストを描けたらいいな」と思ったのがデジタルで絵を描き始めたきっかけで、Windowsのペイントとマウスで描きはじめました。どうすればあのキラキラした雰囲気のイラストを描けるんだろうと調べてペンタブレットというものがあるのを知り、お小遣いを貯めてBamboo Comicを買ったのが初めてのペンタブレットです。それまでマウスだったので、すごく描きやすいことに感動しました。
――初めて液晶ペンタブレットを使ったのは?
高校生になって、もう少し大きなサイズのペンタブレットを使いたくなり、Intuos ProのMサイズに買い替えました。専門学校に進んでより本格的に絵を描いていこうと決意して、プロのイラストレーターが使っているような液晶ペンタブレットが欲しいと思い、将来イラストで仕事をするために頑張ると言って父にCintiq 22HDを買ってもらいました。
――現在の作画環境はどのようなものですか。
現在は、Wacom Cintiq Pro 24とWacom MobileStudio 16を使っています。メインのPCはTSUKUMOのG-GEARブランドのゲーミングPC(CPU:Intel Core i7 3.20GHz/RAM:32GB)で、Wacom Cintiq Pro 24の他に3枚のサブディスプレイをつなげています。ペンは軽さと形が手に合っているクラシックペンを愛用しています。作画に使うツールはCLIP STUDIO PAINTがメインで、最終的にCMYKのデータを作る必要があるときだけAdobe Photoshopを使っています。ショートカット等はロジクールのG13という左手デバイスを愛用しているのですが、生産終了してしまったので直しながら使っています。
――Wacom Cintiq Pro 24の使用感はいかがですか。
Cintiq 22HDの頃はエラストマー芯が好きで使っていたのですが、Wacom Cintiq Pro 24にしてからは描画面のマットな質感がいい感じで、標準芯でも描きやすくなりました。Wacom Cintiq Pro 24以前は、視差がない液晶ペンタブレットというもの自体が想像できなかったので、こういうものだと思って自然と体のほうが慣れていったのですが、Wacom Cintiq Pro 24はまったく視差を感じなかったので本当に驚きました。
TSUKUMOのゲーミングPC(CPU:Intel Core i7 2.20GHz/RAM32GB)にWacom Cintiq Pro 24と3枚のサブディスプレイを接続。
サブディスプレイはそれぞれ作画資料の表示、SNS等の画面、作業BGM用の動画再生に使っている。
CLIP STUDIO PAINTの操作にはWacom Cintiq Pro 24のタッチ機能(拡大縮小・回転・移動等)と、片手デバイスのLogicool G13(ショートカット)を併用。
まさよさんのクリエイティブ・スタイル
「White」プライベートワーク(2020)
©まさよ
――まさよさんが普段イラストを描く時のワークフローはどのような流れですか。
こういう絵を描きたいな、というイメージが浮かんだらCLIP STUDIO PAINTで大雑把にラフを描いていきます。レイヤーカラーでラフの色を薄くして、その上から少しラフを細かくする感じで線画を描いて、さらにレイヤーを重ねてペン入れをします。線画のクリンナップは後からバランスの微調整をしやすいように髪、顔、体は必ずレイヤーを分けて描くようにしています。パーツ毎にレイヤーを作って塗り分けをしていくんですけれど、線画が全て終わってから塗り分けるのではなく、線画と同時進行で塗り分けしていくことが多いです。その方が描きながら仕上がりのバランスを確認できるので。線画と塗り分けが終わったら、肌、髪、眼、服みたいな順番で塗り分けの上に少しずつ濃い色を置いていきます。肌はキャラクターイラストにとって重要な部分なので、絵の印象を把握するためにも最初に塗っています。
――線画や塗りに使っているブラシはどのようなものですか?
線画は初期設定のGペンを使っています。髪の毛を描く時だけベクターレイヤーにすると、毛先の線が合わさる部分に消しゴムツールの「交点まで消去」を使えるので便利ですね。塗りは不透明水彩と、水彩筆、ぼかし系のカスタムブラシに加えて、肌やふわっとした影などに柔らかめのエアブラシと、色がはっきりとしている部分でGペンブラシを使っています。基本的に通常レイヤーで塗って削ってを繰り返しながら色を乗せていくのですが、ペンのサイドスイッチに消しゴムツールを登録しておくと効率よく作業できるのでおススメです。
――今回、ドローイングで描いていただいたイラストで特に意識したポイントはどこですか。
黒×ピンクのセーラー服に猫耳ツインテールを組み合わせて、自分の思う「可愛い」を全開にしたオリジナルキャラクターを描きました。時期的に春が近いので、暖かそうな印象になるようにピンクや黄色を使ってライティングをしています。
――ドローイングの際に、大部分を塗り終わった後の仕上げ作業に時間を使うと言われていましたがどのような部分に手を加えているのでしょうか。
仕上げ作業では変形や移動を使って顔のパーツのバランスを修正したり、色調補正で色を整えたりします。線が黒のままだと絵が固く見えてしまうので、髪の毛が茶色なら線画も茶色にしたり、線画の色をベース塗りに近い色にしてなじませる色トレス処理をオートアクション化して使っています。線画を塗りに馴染ませるだけでかなり雰囲気が変わるので、欠かせない作業ですね。
「Black」プライベートワーク(2020)
©まさよ
――色トレスに加えて、何枚かのレイヤーを重ねながら、光の効果を乗せる工程でも絵の雰囲気が変わっていくのを感じました。
最終段階で、ソフトライト、リニアライト、加算発光などのレイヤー効果を使って光を乗せたり全体の色バランスを整えたりします。光源の方向を意識して、明るい方にはピンクや暖色系の光を、比較的暗い方には寒色系を乗せています。かすかに青っぽい色を乗せるとちょっと奥の方にあるように見える効果があるので、明るい光の部分と合わせて使うことで絵が立体的に見えて、単調な感じがなくなると思います。
――まさよさんは女の子の絵を描かれることが多いですが、イラストを描く上で特に意識されていることはありますか。
小学生の時に母に『少女少年』というマンガを買ってもらって、やぶうち優先生の描く女の子の可愛さに衝撃を受けて、私も可愛い女の子の絵を描きたいと思ったことが、自分のルーツなんです。だから女の子の可愛さは常に意識して描いていますが、どうすれば可愛く描けるのかを言語化するのは難しいですね。なんとなく、小動物的な可愛さと、柔らかさを表現できればいいなと思っているので、私の描いた絵を見た人が、柔らかい雰囲気を感じて癒されてくれたら嬉しいですね。
――まさよさんの描く女の子のキャラクターは、柔らかい色調や、可愛らしい雰囲気と合わせて、吊り目がちの顔だちも特徴的な気がします。
吊り目というか、猫っぽい感じの女の子は好きですね。可愛いけれどちょっと生意気そうだったり、どこかひと癖あるイメージを意識して描いています。以前は丸い目の女の子をよく描いていたんですけれど、『キラキラモンスターズ』というゲームのキャラクターデザインをした時に、吊り目がちにしてという指定があって。仕事をしている内にだんだん馴染んでいって、それが自分の絵柄に定着した感じですね。光源を意識して立体感を出す処理などは、このゲームのお仕事をこなしていく過程で身につきました。
仕上げ作業に時間をかけるというまさよさん。
[加算(発光)][乗算][スクリーン]と部分によってレイヤーモードを使い分けて光や影などの照明効果を乗せることでキャラクターの塗りが立体的になるのに注目。
オリジナルのオートアクションを使って線画の色を塗りに馴染ませる[色トレス]効果も絵の雰囲気を柔らかくするのに欠かせないテクニック。
※動画では16:02あたりからまさよさんの仕上げ工程を見ることができます。
まさよさんのクリエイターズ・ストーリー
「See-through」プライベートワーク(2020) ©まさよ
――まさよさんが絵を描く仕事をしたいと思ったのはいつ頃ですか?
進路を考える時は、絵が好きだからイラストの学校に行こうくらいの軽い気持ちでしたが、専門学校に入ってから意識が変わりました。ゲーム会社に入って可愛い女の子の絵を描く仕事がしたいと思い、それまではやっていなかったSNSに絵をアップして人に見てもらう活動も始めました。
――意識して人に絵を見せるようになってから、お仕事で絵を描かれるようになるまでの経緯は?
専門学校の1年生の頃に、好きな同人作家さんのサークルで売り子をする機会があって、その時に「あなたもマンガを描いてみたら」と背中を押されて自分でも同人活動をスタートしました。ネットでは自分のWebサイトはまだなくて、TwitterとPixivだけの活動でしたが、頑張って毎日イラストを描き続けている内に、絵を見てくれた方から少しずつお仕事の依頼もいただけるようになったんです。最初の頃はメールアドレスを公開していても全然、依頼が来ることはなかったので、初めて仕事として描いた絵が世に出た時はすごく嬉しかったですね。
――現在のようにフリーのイラストレーターとしての活動を始めたのはいつからですか。
専門学校の卒業後、就職せずにそのままフリーランスとして活動することを選んだのですが、最初の頃は依頼が来たら何でも断らずにやるくらい、お仕事が少なかったですね。今考えると、何でそんな道を選んだのかと思います(笑)。最初の1年は持ち込みをしてお仕事をいただけたマンガ雑誌にお世話になっていました。そのお仕事が終わってからはライトノベルの編集部にイラストの持ち込みをしたんですけれど、けっこう厳しい評価をされてしまって。それでライトノベルは無理だなって。
「キラキラモンスターズ」
ポップアップストア用ビジュアル(2020)
©kirakiramonstars
――かなり苦しい時期もあったんですね。現在は色々なイラストのお仕事をされていますが、まさよさんにとっての転機となったお仕事はありますか?
『キラキラモンスターズ』でキャラクターデザインとメイン原画を担当したことが、自分にとって大きな転機になりました。声をかけてもらったことは嬉しかったのですが、その頃の私は自信がなかったので、自分がやって大丈夫ですかみたいな返事をしたんですよ。キャラクターデザインの仕事はすごやりたいけれど、もし自分の責任でゲームの評判が悪くなったらどうしようと、二つの気持ちでぐちゃぐちゃでした。
――ゲームやアニメのキャラクターデザインはイラストレーターにとって憧れのお仕事ですが、作品の顔として責任も重大ですね。
結果的に『キラキラモンスターズ』の絵を可愛いと褒めてくれた人や、ゲームから私のことを知ってくれたファンもたくさんいたので、挑戦して良かったなと思います。制作中にスタッフの方から絵について色々なアドバイスをいただいて技術的に進歩できたことに加えて、自分のイラストに自信が持てるようになり、精神的に成長できたことも大きかったですね。『キラキラモンスターズ』の絵を見てお仕事の依頼をしてくれる企業様も多くて、色々な意味で現在の自分の活動の土台になっている代表作です。
――自分にとって代表作と言えるようなお仕事を成し遂げたことで、変化はありましたか。
周りの人もゲームを買ってくれたり、メイン原画を一人でやったのはすごいと評価してくれたことも嬉しかったですが、なによりも『キラキラモンスターズ』をやったことで、自信をもって自分からやりたいことに向かっていけるようになったのが大きな変化でした。こちらから営業をかける機会も増えて、一度は無理だと思ったライトノベルのイラストの持ち込みにも再チャレンジして、初めてライトノベルの依頼をいただくことができて頑張っているところなので、本の発売が今から楽しみです。
バーチャルYouTuber「乙姫つづり」(2021)
©Pictoria Inc.
――最近ではどのようなお仕事をされていますか?
これまでにも企業勢、個人勢のバーチャルYouTuberを何人かデザインさせてもらっているのですが、つい先日デビューした新人バーチャルYouTuberの乙姫つづりのデザインを担当しました。最近は私自身もバーチャルYouTuber風の立ち絵を作ったりしてマイペースに配信活動をしたりもしていますが、ゲームやイラストのお仕事とはまた違ったことが色々できて面白いですね。
――これから先、まさよさんがやってみたいと思っていることはありますか?
個展やサイン会のようなリアルのイベントをやりたくても、いまのご時世ではなかなか実現が難しいので残念ですね。いつか『絵師100人展』に参加することができたらいいなと思っています。あとは個人画集を出すこと、自分のイラストが立体化されることにも憧れますね。ファッションにも興味があって、アパレルデザインをやってみたいので、イラストレーターという枠にとらわれない形のお仕事もできたら嬉しいです。
――最後に、まさよさんにとってペンタブレットとはどのような存在か教えてください。
ワコムのペンタブレットを使い始めてそろそろ10年以上経つので、私の表現活動にとって欠かせないものですね。もしペンタブレットと出会わななければイラストの仕事もしていなかったと思います。自分が今の自分になるまでずっと支えてくれたワコムのペンタブレットと、これからの人生も共にしていきたいです!
取材日:2021年2月26日
インタビュー・構成:平岩真輔(Digitalpaint.jp)
画像をクリックすると今回制作した作品をご覧いただけます。
まさよ
イラストレーター/マンガ家。専門学校のイラストコースに在学中からゲームのイラスト等を手掛け、卒業後フリーランスのイラストレーターとして活動を開始。マンガ家としても活動している。「Lycee Overture Ver.Fate/Grand Order 3.0」(ムービック)や、『ブレイブソード×ブレイズソウル』(グリモア)等のゲームでカードイラストを担当。2020年にビジュアルアーツが制作したビジュアルノベルゲーム『キラキラモンスターズ』ではキャラクターデザイン、メイン原画に抜擢されたことで注目を集め、萌え系の可愛い女の子イラストで様々なジャンルに活躍の場を広げている。