Flashアニメーター青池良輔
1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメや CFを多数手がける。代表作は DVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカハラペコトリオの満腹革命』 (2008年)など。『藤子・ F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』 (2009年)では、谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『 BABY&GIRLアロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当
- 使用タブレット
- Intuos
- 使用歴
- 2000年
- きっかけ
- -
日本では、チーム体制でのFlashアニメ制作も体験
○ひとりの作業も共同作業も出来なくては駄目
マイコミジャーナルにて連載中の「創作番長クリエイタ」でおなじみのカナダ在住Flashアニメ作家 青池良輔が日本に一時帰国。精力的に作品を創り続ける青池が、新作やツールについて語り尽くした。
日本に一時帰国した青池だが、カナダ以上に多忙な日々を送っているようだ。
「日本に帰国してから、とにかく忙しいですね。契約上、表に名前の出ないFlashアニメ作品にいくつか関わっています。こないだ手掛けた企画では、14人のFlashアニメーターと仕事をしました。僕は絵コンテを作るまでで、実作業はしていません。監督という立場ですね。元々、ひとりでFlashアニメを創り始めたのですが、最近はそういう共同作業も増えています」
ひとりで作品を創るというスタイルを基本にしていた青池。彼にとって共同作業でFlashアニメを作るという制作体制も必要なもののようだ。
「コツコツひとりで作るのも楽しいし、人を集めて大きな仕事をするのも楽しい。どちらも出来ないと駄目ですし、どちらも好きですね。クリエイターは自分の出来ない事を早く知る事が大事なんです。出来ない部分は他の人に頼めばいいんですから」
かわいいキャラクターと色彩が印象深い青池の新作Flashアニメ『BABY&GIRLアロ恵』。この作品はどういう体制で制作されたのだろうか?
「この作品はあくまでも、商品紹介用のPR作品で、完全なオリジナル作品ではありません。脚本は広告代理店の方が書かれていて、キャラデザインと動画を僕が担当させていただきました。『キャラがかわいい』という声が多く、子供にも楽しんでもらえる様に作っているつもりですが、制作途中の動画コンテの段階では、僕が自分の太い声でアフレコしてたので、親戚の子供は怖がってました(笑)」
『BABY&GIRLアロ恵』
脚本以外の部分を青池が担当
魅力的な絵を描く青池だが自身の絵には、未だ満足していないようだ。
「絵は自信ないですね(笑)。ごまかし、ごまかし、やっているという感じです。手が遅いので(笑)。僕の場合は、いかに作画を効率よくできるかとか、どうしたらスムースに絵がかけるかとかそっちに頭がいきがちになってしまいます」
そう語る青池には、長年温めている新作のアイデアがある。
「全身タイツのキャラクターを使ったFlashアニメをずっと考えているんですよ。全身タイツを着た自分を動画撮影して(笑)、それをFlashに連番の動画で入れて、1フレームごとにベクター化しながら、シルクスクリーンのように一版ずつ重ねるという気の遠くなるような事をやってたんですが、最近は、別のアプリケーションも併用して使うことで違う表現ができるんじゃないかと思い始めています」
まだ、制作の手法で模索を続けているという青池。彼は『創作番長クリエイタ』で物語の作り方や、ツールの選び方など、創作に関して様々なアドバイスをクリエイターを目指す読者に発信している。そんな青池が今回、ツールに関して語ってくれた。
クリエイターのツールには適材適所がある
○ペンにある程度の重さや大きさがあるのは大切な事
ペンと画の関係を熱く語る青池
青池はペンタブレットを自身の創作に活用しているという。
「ペンタブレットを使いだしたのが9年前で、5年前から「Intuos3」を使用しています。今は「Intuos4」で作業しているのですが、とにかく4ではペンが大きく変わりましたね。手に入れた瞬間、付属の太いグリップに交換して使っています。ペンが軽いと、自分の描く作業が、なんか軽いというか、楽にペンを動かしているという気分になってしまうんです。ペンに重みがあると、画を描くときの心構えも変わります。ペンにある程度の重さや大きさがあるというのは大切な事なんです」
Intuos4に関して、青池はとにかくその使い易さを感じているようだ。
「作業効率の向上よりも強く感じるのは、身体的な意味での使い易さですね。僕は筆圧がかなり強くて、以前は長時間描いているとすぐに腱鞘炎になってしまったのですが、Intuos4に移行してから、長時間描いていても、手の痛みがほとんどなくなりました。また、スペックの進化は当然、誰しもが感じるのだと思うのですが、初めてペンタブレットに触れる人にとっても、Intuos4はいいと思います。ペンタブレットは誰でも使い出しの時期に違和感を感じるものです。手元に書いているのに、画は目の前のモニターに表示されるという、マジックハンドのような変な違和感というか……。ここで挫折してしまう人も多いと思うのですが、Intuos4では、その違和感がまったくないですね。これは凄い事だと思います」
最後に青池はクリエイターとツールの関係を語ってくれた
「プラスのネジをマイナスドライバーで開けようとする人っているじゃないですか。プラスのドライバーを買えばいいのに、それで苦労してる。クリエイターの道具にも適材適所があるので、必要だと思うツールはすぐに手に入れるべきだと思います。ツールがなきゃ成立しない仕事もありますし。例えば、無理に借金して必要なツールを買ったとします。だったら、その罪悪感をすべて創作に注ぎ込めばいいんですよ。僕だって、この夏は子供をプールに連れて行かないことに対する罪悪感を、すべて創作に注いだんですから(笑)」
「Intuos4」で描かれた「創作番長クリエイタ」
「Intuos4」 -青池良輔はこう使う
ここでは青池さんの「Intuos4」のファンクションキー設定を紹介しよう。青池さんは「とりかえしのつかない失敗を減らす」事を念頭に置いてファンクションキー設定をしているという。
「Intuos4のファンクションキーはとにかく使えますね。僕はほとんど手元を見ないで作業しているので、微妙に傾いたキートップが凄くいい感じで、手でわかるのがいいですね。僕のファンクションキー設定なんですが、undo、undo(笑)。凄いundoするんですよ。自信ないので。ラジアルメニューは、データをセーブするために使用しています。プレシジョンモードは目のような細かい部分を描くときに活用しています」
「あと、細かい部分ですがペンスタンドも良いアイデアだと思います。芯を格納できるので、ペンを持ち歩くのも、本当に楽になりました」
掲載:マイコミジャーナルクリエイティブ
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/09/25/araro/