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画家・イラストレーターHR-FM

専門学校卒業後、漫画家アシスタントを経てフリーの画家・イラストレーターへ。現在、主に北米を中心としたアートプリント、COMIC、GAMEの世界で活動中。「未来人が掘り出すかもしれない化石」をイメージし、未来の過去という相容れない時間軸を描くことにより新たな驚きと追憶感を表現している。

使用タブレット
Cintiq 13HD
使用歴
10年以上

個性的な「色面分割」技法から繰り出されるスケール感と躍動感、スタイリッシュな近未来感が、国内外のアートファンを魅了するイラストレーター・HR-FMさん。先日詳細が発表された、6月1日から運行開始しているJR西日本大阪環状線ラッピング車両「OSAKA POWER LOOP」のデザイナーの1人として、その名前を知った方も多いかも知れません。現在は、海外からのオファーによる創作活動をメインに活躍を続けるHR-FMさんですが、アーティストとなるまでの道のりには、ドラマティックな転機が幾度もありました。そんなHR-FMの半生を紐解きながら、ご自身のアトリエで個性的な作風のヒミツを語っていただきました。

テキスト:阿部美香
撮影:CINRA編集部

絵を描き続けるも、なりたいモノに巡り会えなかった学生時代

HR-FMさんが生まれ育ち、そして現在の活動拠点とするのは、横浜郊外の住宅街。その個性的な作風で北米を中心に高い評価を集めるHR-FMさんですが、絵を描き始めたきっかけを尋ねたところ、幼少期の意外な体験に遡りました。

HR-FM:小学3年生のときの転校だったと思います。学区が変わって新しいクラスになかなか馴染めず、休み時間が暇だったんです。そこで、教室の窓から校庭の風景を描いて時間をつぶしていたのが、絵を描き始めたきっかけです。とはいえ、真面目に画家を志したわけではなく、中学、高校で美術部に入ることもなく、そのくせ教室中の壁に落書きをしたりするような、先生にすればやっかいな子で(苦笑)。それが今、絵を描いていることに繋がっているといえば、そうなのかもしれません。

そんなHR-FMさんが、本格的に絵描きの世界へと足を踏み入れるのは、高校卒業後のことでした。

HR-FM:若い頃の僕は、本当にちゃらんぽらんな生活を送っていました(苦笑)。高校卒業時に進路を決めなければいけなくなって、何となく思いついたのがイラストで。絵を描くのは好きだったし、とりあえず専門学校に進んでおこうと通い出したのが、当時上野にあった千代田工科芸術専門学校のイラストレーション科でした。

そしていよいよ、HR-FMさんのイラストレーター人生がスタートと思いきや……?

HR-FM:専門学校に進んだといっても、イラストレーターになれたらいいな……くらいの感覚で、当時はただ出された課題をこなすだけで遊んでばかり。ちょうど『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などのハリウッドSFX映画が大ブームで、スタン・ウィンストンのような特殊メイクを作る人や、シド・ミードといった神様級のデザイナーが、そのSF的世界観の構築に一役買っていました。自分は絵が描けるので、そういう世界に入れたらいいな、なんてボンヤリと。

今の作品に通底するSF的世界観も、そのときに培われたものだったとか。「出席日数的にはギリギリだったが、幸い課題の成績は良かったのでなんとか卒業できた」という2年間を終えたHR-FMさん。卒業後の展開を聞いたところ……。

HR-FM:専門学校を卒業したのはいいんですが、イラストレーターになれたわけじゃなく……かと言って、サラリーマンになることはまったく考えていなくて。そこからはアルバイトをしながらダラダラと。今振り返ってみると、あのときの僕は自分がなりたいもの、なれるものを探していたけど、まだ自分がなにをしたいのか、手応えのあるものに巡り会えていなかったんですね。

人生が180度変わった、漫画家アシスタントとしての過酷な日々

そんなモラトリアム生活の中で、人生の転機は突然やってきました。きっかけを作ったのは、偶然出会った漫画家志望のアルバイト仲間でした。

HR-FM:その彼は『週刊少年ジャンプ』などに持ち込みをしていたんですが、作品を見せてもらったら……、ふと「これなら俺にも描けるかも知れない」と不遜なことを思ってしまったんです。それまで漫画を熱心に読んでいたわけでも、描いていたわけでもなかったので、とんでもなく無謀なんですけど(笑)。そこで自分も漫画を描いて、大手出版社に持ち込んだんです。ナメてますよね。今、当時の自分に会ったら……きっと殴っていると思います。

とはいえ、漫画は一朝一夕に描けるものではありません。そこで大手出版社の編集部の人に勧められたのが、プロの漫画家のアシスタントとして修行を積むことでした。しかし、ここでHR-FMさんの人生は180度ガラッと変わることになります。

HR-FM:あの頃はとにかく毎日が必死でした。僕がついた先生は描き込みへのこだわりがすごい方だったんです。だから、他のアシスタントは画力の相当高い方ばかり。ふわっとアシスタントになってしまったド素人の僕とはレベルが違いすぎて付いていくのが大変でしたね。

漫画家の仕事といえば、それだけでも過酷なイメージがありますが、HR-FMさんもご多分に漏れず、週に数日はスタジオに寝泊まりしつつ、それでもわずかに空いた時間で自分の作品を描きため、編集部に持ち込む日々を繰り返していたそうです。そんな過酷なアシスタント生活は7年以上も続いたのだとか。

HR-FM:僕がアシスタントをやめなかったのは……悔しかったからですね。周りのアシスタントさんは本当に絵の上手い方ばかりでしたから、少しでも追いつきたかったし、負けたくなかった。やっと自分が一生懸命になれるモノを見つけたという手応えを感じられたのも大きかったのかも知れません。

ちなみに、そのアシスタント生活でHR-FMさんが得たもっとも大きなものは? と質問すると……。

HR-FM:画力以上に精神力、ギリギリまで耐える根性ですね(笑)。アシスタントの横では、担当編集さんが凄い形相をしながら原稿に台詞を貼り付けて、いらだつように原稿を机に打ち付ける音が聞こえてくる。こっちは不眠不休で描いているので、鬼の形相の編集者からのプレッシャーと疲労でペンを持つ手がブルブル震えてくるんですよ。そんな修羅場を何度も経験していると、ちょっとやそっとのことでは動じなくなりましたね(笑)。

漫画家アシスタントを続けるうちに、HR-FMさんにも人脈が培われ、海外向けの漫画やゲームなどのオファーが舞い込むようになりました。それらの仕事が順調に増えていったこともあり、HR-FMさんはアシスタント生活に終止符を打ち、プロのイラストレーター / 漫画家として独り立ちします。ただ、そのタイミングは運悪く、世界中の経済に大打撃を与えた2008年のリーマンショックと重なってしまいました。

HR-FM:当時、海外向けに英語で描いた漫画「OEL(Original English-language)マンガ」を出版する動きが盛んだったんです。僕もその1人としてオファーを受け、北米で流行っていた10代向けの少女漫画を描いていました。かなり畑違いではあったんですが、過去の名作少女漫画を研究してなんとか(笑)。ただ、リーマンショック以降は雑誌や大型書店が潰れ、仕事の依頼もなくなってしまった。そこで、これからは自分でしか描けないオリジナリティーがなければ、この世界で生きていけないと痛感し、今まで「こんなことができたら面白いな」と自分の中にためていたアイデアを作品として打ち出していこうと決めたんです。

「絵描き」として生き残るために掴みとった、自分だけの表現技法

そこで打ち出したアイデアが、HR-FMさんの最大の特徴であり魅力である、細かく複雑な「色面分割」です。一見カラフルな細かいモザイク状のパーツでモチーフが表現されていますが、近づいてよく見てみると、その細かなモザイクは何層にも重なり、また色面はピカソのキュビスム絵画のようにあらゆる角度に開かれることで、秩序と混乱が同居したような、なんともいえない独特の質感を生み出しています。このアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

HR-FM:最初からあえてデジタルだけで描こうとは思っていましたが、いわゆるCGみたいな絵を描く気はありませんでした。デジタルだと絵の隅々まで自分でコントロールできるというメリットがありますが、僕は「人がコントロールできない感じ」を描きたかったんです。とは言え、ランダムに無秩序に描くだけでは、ただのまとまりのない絵になってしまいます。その矛盾したものを両立させるには、と試行錯誤を重ねるうちに、このレイヤーを駆使したやり方に辿りついたんです。

その「技法」の詳細は、後のページでじっくりご紹介させていただくとして、もう少し作品のことについて伺いました。

HR-FM:僕はプラモデルが好きなんですが、プラスチックの断片でしかなかったものが、組み上げれば立体作品となって、新しい意味や価値が生じてくる。それは「新しい価値の発見=アート」でもあるのかなと。その構造をイラストで表現できれば面白いなと試行錯誤するうちに、複雑な色面分割の技法を用いるようになったんです。シャツや髪の毛など、常識的にきちんと色分けされていなくても、全体的な色の明度と彩度さえハッキリしていれば、立体物として認識できるのではないか? デジタルによる切り絵を重ねるような感覚で、思いがけないような効果を出せる手法を模索してきました。

だからこそ生まれるこの躍動感。緻密な描き込みを得意とする作家の作品は、箱庭感覚のスタティックな魅力を振りまくものが多い中、HR-FMさんの作品にはあふれる情感や絵からはみ出してくる、圧倒的なスケール感が感じられます。作品のコンセプトとして、「未来人が掘り出すかもしれない化石」を掲げるHR-FMさん。そのモチーフや色合いも個性的です。

HR-FM:色のルーツとなったのは恐竜図鑑なんです。今でこそ、恐竜は茶色でリアルに描かれていますが、僕が子どもの頃読んでいた恐竜図鑑は、描き手の想像による色がつけられていて、赤や緑などかなりカラフルでした。また、コンセプトは後づけなんですが、遠い将来に僕の絵を見た人が「昔の風景や物は、こんな色や形をしていたのか!?」と思ってくれたら、面白いじゃないですか(笑)。だから宇宙飛行士やビルなどの未来的なモチーフを描いても、いわゆるレトロフューチャーにはならないんですね。

現在、HR-FMさんの活動フィールドは、割合でいえば国内3:海外7になるとか。海外ではローラ・ゾンビの作品も取り扱っている「Eyesonwalls.com」などのアートプリント会社に作品を提供し販売。海外コレクターからの作品依頼はもちろん、CDジャケットやポスターなどのコマーシャルな依頼も数多く寄せられています。

HR-FM:海外からは、いまだ会ったこともない方からのオファーも多く、肖像画を描いて欲しいという話が来たり、「Analog Sweden」というアナログシンセにこだわるブランドから、デジタルシンセの先駆け、ヤマハDX7を破壊するイラストを描いてくれと頼まれたり(笑)。最近だと映画『ブレードランナー』のトリビュートCDを出すというインディーズレーベルから依頼が来たり、さまざまです。国内では大阪のラジオ局「FM802」主催のアートプロジェクト『digmeout』。オーディションに参加したら、プロデューサーの方が僕の絵を「面白い!」と褒めてくださり(笑)、今年は、今後長いスパンで運行されるJR西日本大阪環状線改造プロジェクト『OSAKA POWER LOOP』のラッピング車両のデザインも手がけさせていただきました。僕の絵は非常に細かいので、大型作品を描けるのは嬉しいですね。アートプリントでも大きくプリントしないと、絵が潰れてしまいますし。

横浜の郊外で暮らしながら、ワールドワイドな活躍を見せるHR-FMさん。これからの目標をうかがいました。

HR-FM:もともとSF的なモチーフは好きだったのですが、今後は山やビルなどの、自然にある大きな空間を色面分割の手法で描いていきたいと思っています。さらに制作環境も変化が欲しいと感じていて、たとえばシルクスクリーンやアクリルアートなども描いてみたい。今の手法もまだまだ発展途上なので、常に新しい変化を模索していきたいです。

国籍にもアートやイラストといったカテゴリーにもとらわれず、作品の発表・販売のフィールドを広げ続けるHR-FMさん。既存のアーティストにはないフレキシブルなアクションと個性的な感性は、これからも国内、海外のファンを増やし続けることでしょう。今後の活躍にますます期待が高まります!

HR-FMさんのヒミツ道具をご紹介!
お宝発掘現場のようなクリエイティブ空間とヒミツ道具たち

HR-FMさんのご自宅は、横浜市郊外の高台にある日本家屋。その2階部分をアトリエとして使われています。壁にはHR-FMさんのプリントアート、本棚の周りには敬愛するシド・ミード、大友克洋を筆頭に、たくさんの画集が無造作に置かれ、よく見るとアイアンマンのフィギュアや音楽ファンらしい多数のヘッドフォン、キックボードなど趣味のアイテムもたくさん! まさに「ヒミツ基地」らしいヒミツ基地。その中でも、HR-FMさんの創作活動に欠かせないヒミツ道具をご紹介いただきました。

ヒミツ道具1 セーラー漫画用万年筆

まず取り出してくれたのは、漫画家としてのキャリアもあるHR-FMさんらしい漫画用の万年筆でした。見た目は普通のペンそっくりで、軸はプラスチックで大変軽量なのも特徴です。インクはカートリッジ式で、耐水性の強い万年筆用顔料インクが採用されています。

HR-FM:6~7年前から使っています。漫画用のペンはインクを先に付けるものが主流なので、扱いやすいタイプですね。ペン先が交換できないので、プロの漫画家さんでは用途が限られるかもしれませんが、僕は作品のラフスケッチを描く際に使っています。インクカートリッジなので汚れませんし、軸が軽くて扱いやすい。最近売っているのを見かけないので、画材屋などで見つけたら、即買いですね。

ヒミツ道具2 GoPro「HERO3+」

広角単焦点レンズを備えた軽量コンパクトでウェアラブルなムービーカメラ。価格はリーズナブルながら、抜群の機動性とハイクオリティーな映像表現を実現。エクストリームスポーツ実況やハリウッド映画の撮影、テレビのバラエティーなど、アマチュアからプロまで幅広いジャンルで使われています。

HR-FM:2年ほど前、GoProで撮影された動画を見たら、広角での画面がインパクト大で、買ってしまいました。今は作品の構図のアイデアを探るために使っています。キックボードの足もとにGoProを構えて走りながら撮影すると、とても面白い風景が撮影できるんですよ。キックボードやGoProは持ち運びにも便利なので、地域性の高い作品のオファーが来た場合には、この2つを抱えてロケハンに行きます。

ヒミツ道具3 iPhone 4S

GoProと同様に、HR-FMさんの作品作りに必須なのがiPhoneだそうです。HR-FM作品には、現実のオブジェクトや建物がモチーフとして使われることも多いので、その参考資料を撮影するためにもiPhoneのカメラ機能が欠かせません。

HR-FM:iPhoneは毎日持ち歩くものだし、デジカメよりも圧倒的に扱いがラクなので、写真資料を撮影するのは全てiPhoneです。面白いモチーフや建物を見つけたらすぐ撮っておき、主には構図資料として使っています。撮った写真も簡単にMacに送れるし、制作中のpsdファイルを出先で確認することもできる。とても便利な世の中になりました。

ヒミツ道具4 液晶ペンタブレット「Cintiq 13HD」

「OELマンガ」を描き続ける中で、色の塗り直しなどが簡単にできるデジタル制作の必要性を感じ、10年以上前から液晶ペンタブレットは創作活動の必需品というHR-FMさん。アトリエを訪れた私たちの目に最初に飛び込んできたのも、ワコムの歴代液晶ペンタブレットの数々でした。

HR-FM:ラフスケッチ以降は全てデジタル作業なので、液晶ペンタブレットは必需品です。「Cintiq 13HD」は、試し始めたばかりですが、最近まで使っていた5年ほど前のモデル「Cintiq 21UX」よりも表面のペン抵抗がちょうどいい具合で、筆圧の感度も素晴らしく、ダイレクトに紙に描いている感じがします。モニターの発色もとても良いし、色ムラもない。視野角が広いのでどんな姿勢でも描けるところも気に入っています。Windows 8搭載モデル(Cintiq Companion)だと、1台でクリエイティブ作業が完結できるので、あとはキックボードとGoProさえあれば、撮影からスケッチ、完成までの作業をどこにいてもできそうです(笑)。

要塞のようにしつらえられたクリエイティブスペースを取り囲むように、趣味のガジェットから画材、資料などがたくさん置かれたHR-FMさんのアトリエ。そこはまるで「これはなんですか? こちらは?」とつい聞きたくなる、お宝発掘現場のような心躍る場所でした。

ランダムなようでランダムじゃない?
独自の「色面分割」技法のヒミツを大公開

HR-FMさんの制作は、その9割がデジタル作業です。あの独特の作風、特に複雑な色面分割を使った独自の手法は、どのように実現されているのでしょうか? 気になるポイントをHR-FMさんが最近手がけたという壁画作品を例に、紹介していただきました。

作業工程1 ラフスケッチ

HR-FMさんの作業のファーストステップは構図作りです。ヒミツ道具のコーナーで紹介した漫画用万年筆を使い、アイデアの赴くままに勢いよく筆を走らせていきます。

HR-FM:鉛筆ではなく漫画用万年筆を使うのは、あえてやり直しをきかせないためです。構図やモチーフの決定には、それこそGoProやiPhoneで撮影した写真などを参考にしますが、いきなりデジタル上でそれらを配置して構図を決めても、自分の発想のコントロール下に置かれてしまう。「人がコントロールできない感じ」を狙うためにも、勢いを大事にしてあえて万年筆で描きっぱなしにしています。なので、描く紙もそのへんに転がっているコピー用紙で充分。ラフに描くからこそ、予想外のいいモノが生まれてくるんですよね。

作業工程2 ラフスケッチをPCに取り込み線画化

ラフはPCに送られ、それを液晶ペンタブレット上でなぞりながら線画の下絵を作り込んでいきます。ソフトウェアとしてよく使うのは、漫画制作ソフトであるComicStudioやPhotoshop。特にモノトーンの表現に特化したComicStudioでは、スクリーントーン機能を駆使して効果を付けたり、「ストロークのある曲線をよく使うのも、漫画の集中線が基礎になっているのかも?」と、漫画技法の影響の大きさも感じられます。そして、ここで大事な作業となるのが、例の「複雑な色面分割」のもとになる線画の制作です。

HR-FM:イメージとしては、切り絵でできたパーツをレイヤーで重ねていく感覚です。たとえば、「腕の形」をした、ベースになるパーツがあったとして、そのパーツの上にペンツールで色んな角度のストローク線をランダムに描き加えたものをどんどん作っていきます。それらをレイヤーで重ね合わせると、思いもかけない線の集合体で構成された「腕の形」ができあがるんです。この作業を全てのパーツごとに何度も繰り返して、1つのオブジェクトを完成させていく……って分かりますかね? 言葉で説明するのは、すごく難しいですね(苦笑)。

作業工程3 着色

複雑な分割線を持つ下絵が出来上がると着色に移ります。着色は一番気を使うところだと言うHR-FMさん。一見カラフルで複雑に見えるHR-FMさんの作品。じつは繊細に色調をコントロールすることで、カオスと秩序が同居した絶妙な感覚を実現しています。

HR-FM:僕の作品は、ランダムな分割線で細かく分けられた面をグラデーション的に着色することで全体的な立体感を出しているので、色の構成が非常に大事になります。線画が複雑なので、彩色まで複雑にやりすぎるとまとまりのない絵になってしまう。なので、下絵になった写真資料などを参考に、24色くらいの色数を明度順に並べたカラーパレットを作り、その色数内で全体の絵を構成しているんです。とはいえ、同方向の色ばかりを選んでしまうと、絵としての面白み、意外性に欠けてしまう。色に関しても自分のコントロールが効かない部分があって欲しいので、たとえばカラーパレットにベースカラーの補色を追加して差し色的に使ってみるとか、面白さは追求しますね。

作業工程4 ベクター化

HR-FMさんの作品は、アートプリントにしても壁画などにしても、細部の描き込みが潰れない大型判型での作品化を想定・希望して作られています。そこで、いくら大きいサイズに拡大プリントしても表現を損なわないように、PhotoshopやComicStudioで扱う、ラスター形式のデータから、Illustratorなどで扱われるベクター形式のデータへと変換(アウトライン化)します。

HR-FM:完成したラスターデータを一気にベクター化して、元の絵が完全に再現できるソフトがあればいいんですが、どうやらそういうのは今のところ見つからなくて。なので、今はシルクスクリーンの色版を重ねるように、色ごとに絵の部分を取り出して、一つひとつ「Cocoapotrace」という変換ツールを使ってベクター化し、Illustrator上で1枚の絵に戻すという作業をしています。とても手間は掛かりますが、このやり方がいちばんキレイに完成させられるんですよ。もっと高性能な変換ソフトがあれば、ぜひ移行したいんですけどね(苦笑)。

これまでの半生をうかがったとき、「僕が絵を描き始めた頃は、特別にテクニックがあったわけでもないし、特殊な作風も持っていませんでした。取り立てて個性のない絵描きだったんです」とおっしゃっていたHR-FMさん。ですが、この作業工程1つを見ても、とても独創的で高度な技術に支えられた創作活動をしていることが分かります。7年以上続けた漫画家アシスタント時代のテクニックを味方につけ、さらに斬新なアイデアをプラスした、一目でHR-FMさんが描いたと分かる個性の塊。この作業工程を知ってから、あらためてHR-FMさんの作品に触れると新たな発見がいくつも出てきそう。次回作も楽しみです!

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