イラストテクニック第223回/そるとおにぎり
第223回は、そるとおにぎりさんの登場です!
CLIP STUDIO PAINT EXを使って描く、色から発想を膨らませて描いたキャラクターの作画過程を紹介します。
そるとおにぎり
イラストレーター。
配信活動者や男性キャラクターのキャラクターデザイン、立ち絵、Live2Dを主に制作しています。
X(旧Twitter)
各項目のサムネイルをクリックすると、制作画面のスクリーンショットか、拡大画像を見ることができます。
そるとおにぎりさんの作業環境

描画ソフト:CLIP STUDIO PAINT EX
使用ペンタブレット:One by Wacom
作業環境がそんなに広くないので、小さなスペースでも設置することができてとても助かっています。
ラフ


最初にメインカラー(テーマカラー)を決めました。
モチーフを決めて描き始めるより、使いたい色を決めてから制作しています。
最近は補色関係を選ぶことが多いです。
補色を選ぶときは「明度」が近い色同士を組み合わせると失敗しにくいです。
キャラのおおまかな構想は色を決めながら固めました。
明度が落ち着きつつも彩度は高い色を使うので、「服装は大人っぽく洒落ているけど、口を開けば飄々としたナルシスト…」のような、ひと癖ある男性キャラです。
キャンバスを作ったら今回のメインカラーを左上に置きつつキャラを描いていきます。
ざっくりとしたラフから線画を描き起こすことが苦手なので、ラフの時点でしっかりと描き出しました。
手は苦手なので、実際に自分で撮影した資料も見ています。
ラフのブラシは【IRyS Brush Set(鉛筆R)/コンテンツID:1852951】です。このブラシは陰影の塗りや仕上げ等のベタ塗り以外の用途でも使用しています。
ラフの線が描けたら、シルエットを【らくらく囲い塗りツール/コンテンツID:1697293】でグレーにベタ塗りしました。


線の色を黒色にしたら、ざっくりを色を乗せていきます。レイヤーは「肌」「髪」「服」…という感じに分けました。
基本的にベタ塗りですが、肌色だけ血色感も出しています。
背景も、何を描くかわかる程度に軽く描きます。赤いバラの花にしました。
キャラには赤色の要素があまりないので、顔回りに配置してコントラストがハッキリするようにします。
全体に色が入ったら、バランスを見て明るさや色味を調整します。
今回は「新規色調補正レイヤー」の「レベル補正」を使いました。
絵のなかで一番黒い部分(今回の場合は線の色)が少しグレーがかっているのが好きなので、バーの位置を調整して好みの色に近づけます。

パーツごとにレイヤーを分けて塗った色をフォルダーにまとめます。その上に新規レイヤー(乗算)を作成したら、「下のレイヤーでクリッピング」をして陰影を描き入れました。
バランスを見ることが優先なので、乗算レイヤー1枚で済ませています。灰色一色で全体に陰影を置いてから、肌や髪の合わせた色に変えていきます。
陰影は立体感を意識しながら描くのですが、
精密に描くよりは「ここに陰影があるとバランスがいいな~」という感じで、雰囲気も重視しています。
また、先ほどの「レベル補正」でメインカラーが少し明るくなりましたが、陰影を入れることで明るさが中和されて、元の色のような印象になりました。
ラフの完成

最後に全体を見て、足りないと思う部分を描き足していきます。
今回は主に金属素材のアクセサリーを加筆しました。アクセントとなるようにバランスを見て配置していきます。
「レイヤープロパティ→境界効果(フチ)」を設定したレイヤーに描いたので、塗りながら輪郭線もつけることができました。
あわせて、もっと顔に目が行くようにしたいと感じたので、背景に白枠を足して空間を狭めました。
色数が増えますし、人物の後ろにあるので画面に立体感も出ます。
多少の気になるところは線画の段階で調整を行うので、ラフは一旦これで終わりです。
線画


線画に使うブラシは作風や気分によって使う種類を分けています。
今回はCLIP STUDIO PAINTのデフォルトブラシ【水彩平筆】を少しカスタムした自作のペンを使いました。
水彩境界のフチがあったり、ベースの不透明度を低くしたりすることで、描き込みの情報量を増やせるところがお気に入りです。
仕上げの工程でさらに描き込むので、線画はそんなに丁寧に描きすぎず、ラフの時点で気になったところを修正する程度で進めます。

線画も色の塗り分けと同じように「顔」「髪」「服」と、部分ごとに分けながら描いていきました。
線画同士が重なるところは基本的にマスク機能を利用して消します。
目と重なる前髪は、透けて見える表現が好きなので、例外的に全部を消しません。溝を彫るように輪郭に沿ったフチだけを消していきます。
色を塗る

背景のバラの線画はバランスを見て後で加えるので、色だけを仮で配置します。
人物部分も、ラフで置いた色を抽出して、ベースカラーを乗せます。レイヤーもパーツごとに分けました。
この時点では、人物のシルエットのレイヤーに対して「下のレイヤーでクリッピング」をしているので、はみ出しが見えないようになっています。


ベースカラーを塗り終えたら「下のレイヤーでクリッピング」を外して、はみ出している部分を消していきます。
人物のシルエットのレイヤーを「Ctriキーを押しながらクリック」して範囲を選択します。
「選択範囲→選択範囲を反転」したら、先ほどクリッピングを外したレイヤーをすべて選択して「Delキー」を押すと、シルエットからはみ出ている部分を消せます。
この方法でも、ベースの色にだけ、またクリッピングをすることができるようになります。
個別にレイヤーフォルダーに入れて管理することもできますが、フォルダーを入れたり閉じたりするのが面倒なので、私はこのようにしています。

ラフを「サブビュー」で横に置いて観察しながら、陰影をざっくりと乗せました。
ベース色のレイヤーを「透明ピクセルをロック」させることで、クリッピングせずとも色をはみ出さずに塗ることができます。
ベース色と陰影の色が馴染むように着色していきます。
肌は、鼻や頬に血色感の塗り込みをしています。それがつぶれないように、同じレイヤーではなく新規レイヤー(乗算)を追加します。「下のレイヤーでクリッピング」をして、陰影を乗せました。


塗りがある程度終わったら、線画の色トレスをしていきます。
アイラインはフチを濃く残しつつ、内側を彩度の低い色で塗りつぶします。
髪と重なって透けている部分は、髪の陰影よりも少し濃い色にして差をつけました。
その他、肌や服の線画も同様に色トレスしますが、アウトラインだけは黒色のまま残しておきます。

最後に残しておいた背景のバラを描きます。ざっくりと線を描いて形を整えました。
バラは想像で描くと「なんかちょっと違う…」ということが起こりやすい花なので、資料をよく見て描きます。
仕上げの工程に入る前に、直すところがないかを大まかに確認して終了です。
仕上げ

キャラのレイヤーを全て結合したものを複製します。それを一番上の層に置きました。
仕上げの工程は、目のハイライトなど部分的にレイヤーを分けることはありますが、ほぼこの1枚のなかで行います。
厚塗りする感覚で描き込んでいきます。


塗りと陰影の線を馴染ませていきます。
デッサンなどで使われる稜線(りょうせん)が好きで、それを絵に取り入れたいと思ってからは、光と陰影の境界線にフチのようなラインを足すようになりました。
描き込みで変化は大きくあるわけではないのですが、理想の雰囲気に近づかせるために根気強く加筆します。

陰影の色は、ベースカラーよりも彩度の低い色を上から被せて塗り込んでいきます。
濃い色が入ることでテーマカラーが際立ったり、全体の彩度が高くなりすぎることを防げます。
見ていて疲れないような絵にするためのポイントです。

今回に限らず手はしっかりと作画することが多いのですが、手が前に出ている絵なので、より丁寧に描き込みます。
手のシワを自分なりにデフォルメして描いたり、関節や線と塗りの境界に赤色を足したりしました。
陰影の色はその他と同様に彩度を低くしますが、低すぎても血色感が無くなってしまします。
いい塩梅になるように気を付けながら色を乗せます。

キャラの描き込みが終わったら、「色調調整レイヤー」でコントラストや色味を若干調整します。
今回は光と陰影のコントラストを中心にいじりました。
色調整すると顔の色が白飛びしてしまうことがあるので、マスクで顔の部分だけを消しゴムで薄くして、顔には色調補正の影響があまり出ないようにします。
あわせて、背景のバラの花も描き込みました。
描き込みすぎるとキャラの邪魔になるので、少し陰影を入れる程度にとどめます。
バラの線画は、背景の青緑色となじませるために黒色ではなく濃い青くらいの色にしました。