イラストテクニック第226回/ひお

第226回は、ひおさんの登場です!
CLIP STUDIO PAINT PROを使った、ブラシのタッチを残しつつ細やかに仕上げる作画の工程を紹介します。
ひお
イラストレーター。
一枚絵を中心に、キャラクターの印象や物語性を大切に描いています。 厚塗りベースで、柔らかな雰囲気に仕上げることを得意としています。お仕事では、配信・創作・記念用など幅広く制作しております。
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ひおさんの作業環境
描画ソフト:CLIP STUDIO PAINT PRO
使用ペンタブレット:Wacom Intuos Pro large
ワコム製品を10年以上愛用中です。 Wacom Intuos Pro largeは広い作業領域でのびのびと制作できるだけでなく、8192の筆圧レベルにより繊細な表現から大胆な筆致まで気持ちよく描けます。また、Wacom Pro Pen 2はグリップが太く握りやすいので、細部の描き込みに最適でとても気に入っています。ときどきフェルト芯に替えて、アナログのような心地よい摩擦感も楽しんでいます。
ラフ
今回描くのはドールハウスで遊んでいる男の子の絵です。まずはアナログで大まかなイメージを描くのですが、この段階で光源を決めておきます。
CLIP STUDIO PAINTに作業を移し、大ラフを元に改めてラフを描いていきます。大まかなドールハウスの形や人物の形も取ります。
最初のイメージよりもやや俯瞰よりの構図にしたのは、キャラクターとの距離感が近く感じられるよう、存在感を強調したいと思ったからです。
また、クリーム色の下地を敷いて作業しているのは、アナログ作画での紙色や下地のような印象になるからです。アナログ感を出すことは、描き込む際の楽しみのひとつです。
下描き
家や人物のデッサンを整えながら、丁寧に下描きします。
家の外装が固まったら、ミニチュア家具をたくさんの資料を参考にしつつ並べていきます。模様や色のイメージも考えながら、大まかな形を描きました。
右下にあるリビングは人物と重なって隠れるので、この段階での詳細な描写は控えめにしています。
部屋の構成は以下の通りです。
・1階左:キッチン
・1階右:リビング
・2階左:音楽を楽しむ部屋
・2階右:子供部屋
家の外装や家具のアタリを描いた下描きのレイヤーを薄く敷きながら、新規レイヤー上に家具や小物を配置していきます。
昔のイギリス建築を参考にしながら描きます。
1階の左側はひと部屋まるごとキッチンに使うので、密度や配置に気をつけました。
ドールハウスの外装
ドールハウスの外装を塗ります。
筆跡を残した手描き感のある絵が好きなので、すす粒子油彩-dry(コンテンツID:1614143)など、質感のあるブラシを使います。
冷たい印象になったり絵が固くならないように意識しながら描きます。
はじめは薄く塗り、少しずつ光源を意識したメリハリのある陰影をつけていきます。
線画を描かないので、描き込みながら形も整えました。
レイヤーの管理方法
描き込むにあたり、「背景」「家」「ミニチュア家具」「人物」とレイヤーフォルダーを作って分けました。
私はレイヤー名をあまり変えず、下記のようにパレットカラーで管理しています。
・人物フォルダ:紫色
・線の下書き:青色
・清書まとめフォルダ:赤色
・描き込み:橙色
・加工:黄色
・非表示レイヤー:緑色、または設定しない
人物を描く
人物はいつも顔から描きはじめます。
最初に顔が決まると、人物全体の雰囲気や方向性が一気に掴みやすくなるためです。
色合いや塗り方のイメージも顔の作画で固まるので、後の工程がとてもスムーズになります。
そして何より、顔を描くのが一番楽しいです。
気持ちが乗った状態でスタートできることも大きな理由です。
今回描くのは幼い少年なので、ドールハウスのミニチュアの硬さとは異なるやわらかさが出るように試行錯誤しました。
主に使用するブラシは鉛筆R(コンテンツID:1358981)です。人物だけでなく作品全体に使用しています。
目を描き込むタイミングで、下描きが可愛くないと思って顔を描き直しました。
緑色の儚げな目をイメージして仕上げていきます。
背景と馴染むように、黄色・オレンジ色・緑色を基調にしつつ、存在感を出すために暗めの色もポイントで使います。
着ている服は、昔のヨーロッパで流行した水兵さんの制服を参考にしました。
アイボリーの生地に緑色のラインを入れて、全体の雰囲気にマッチするデザインにしています。
シワと影は、振り向いている体勢が伝わるように意識して加えています。
全身を描き終えたら、人物の周りをふんわりとした光で囲って背景との境界線を作りました。
キッチンを描く
ドールハウスをひと部屋ごとに描き込んでいきます。
生活感や人の気配が伝わるような、あたたかみのある部屋にしたいと意識しました。
壁や床、家具を塗り終えたらレイヤーの不透明度を薄くして、下描きを表示させました。
これをアタリにして小物を描き込んでいきます。
小物をひとつずつ仕上げていきます。
陶器の光沢やビンの透明感など、質感に注意しながら描きました。
モチーフを塗るときには
・線で細かく形を取るレイヤー
・下塗りして描き込むレイヤー
の2つを作ります。
ある程度まで塗り進めたら2つのレイヤーは統合します。
キッチンの描き込みが完成した状態です。
描くときに意識した点は、ただ部屋を縮小しただけに見えないようにすることです。
家具やモチーフの細部を簡略化したり、質感をおもちゃっぽくするのもポイントです。
色の境界を曖昧にするとミニチュア感を出すことができます。
音楽の部屋を描く
音楽の部屋は、大人が使う落ち着いた空間を意識しました。
はじめは水色を基調とした明るい壁紙にしていましたが、ドールハウス全体のカラーリングに馴染む茶色や緑色へ変えました。
草花を感じる色合いに調整しています。
ドールハウスの微調整
別の日に絵を確認しなおすこともポイントです。
デッサンの狂いがある部分や、部屋ごとにもう少し丁寧に描き込みたい小物を探して加筆していきます。
まとめて1日では描かず、思いついたときに進めました。
キッチンは、床材の立体感を描いたり看板に汚れを加えたりしています。
ご家族のご意向を踏まえ、本ページを公開させていただきました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
2026年3月












