デジタルネイティブ世代の若き作家が活躍する
新しいイラスト業界にとってのペンタブレットとは
この数年で隆盛著しい、
新しいイラスト業界の勃興
インターネットやソーシャルゲームなどを中心に、この数年で隆盛著しいコミックイラスト業界。デジタルネイティブの若きイラストレーターが数多く登場しているシーンということで、描き始めた最初期からペンタブレットを使用している作家も少なくありません。当然ながら、業界的にもデジタルデータのやり取りが基本です。また若い作家が多いため、Photoshopなどに比べて比較的安価に手に入れることができるペイントツール「openCanvas」や「SAI」などを使用する作家が多く、その中でも藤ちょこさんは、「openCanvas」のメインビジュアルに採用される実力派イラストレーターです。
ラフから仕上げまで、1台で完結できるのが魅力的
幅広いメディアで活躍する藤ちょこさんは、中学2年生からIntuos2を使用。最初は線画だけアナログ、塗りはデジタルという使い方をしていましたが、次第に下描きから全てデジタルで描くようになったそうです。特にCintiq 24HDを導入してからは「液晶ペンタブレットは画面に直接描画できるので、アナログと同じ感覚で作業でき、板型のペンタブレットと比べてさらに描きやすさを感じています」と言います。また、スピードとクオリティが求められる藤ちょこさんにとって、下描きから始まり、簡単な着色をしつつ構図をまとめ、そこから細かく描きこんでいく一連の流れを、1台で完結して行えるのも魅力とのこと。
藤ちょこイラストレーター
多摩美術大学出身。学生時代よりイラスト投稿雑誌やイラスト投稿サイトで人気を博し、現在は漫画、書籍の装画・挿絵やカードゲームのイラストなどの分野で活躍。2 012 年に個展『藤色 FujiShiki2012-画に虹を宿らせて。-』をpixiv Zingaroにて開催。ファンタジックで物語性あふれる世界観をベースにした美しい色彩と細密な筆致の作風が特徴。代表作:ワコム『Bamboo Manga』パッケージイラスト、SQUAREENIX『ブレイブリーデフォルト フライングフェアリー』一部デザイン、『R.O.D REHABILITATION』(原作:倉田英之) 作画、電撃文庫『ミス・ファーブルの蟲ノ荒園』シリーズ挿絵。
下絵は太めのペンツールを使って、仮の線も残したままドンドン描いていく。「勢いのある線を描くのにペンタブレットは必需品。特に長髪のキャラクターなど、ストロークの大きな線が必要な場合、大型の液晶ペンタブレットはとても描きやすいですね」。
大胆な構図が魅力の藤ちょこさんは、パースの補助線を詳細に描き、それをガイドに人物や背景を描いていきます。背景とキャラクターの美しいバランスを確認するために、タッチホイールで画面の拡大縮小機能を駆使します。また、構図をデジタルで描いておくと、修正したいときも便利。その上にレイヤーを重ねて実線を描けば、1つの画面でスムーズに次の作業に移れます。 初出:日本マンガ芸術学院広告イラスト
藤ちょこさんは描き込む量の多いタイプの作家さんですが、特にキャラクターとその付近は、際立って目に入ってくるように、線画も着色も細かく描き込むのだそう。「キャラクターは顔や身体もそうですが、服の細かい柄も質感を大切にしたいので、拡大して全て手描きで仕上げていきます。特に着物は織物ですから、繊維の流れや糸の質感までしっかり描きたいので、フリーハンドでなければ描けないです」
構図の広い絵は、いかに遠近感を表現するかが作品のクオリティに直結します。「そのためには、印象づけたいものはハッキリ描き、遠景などは線画にせず、色の塗りだけでディテールを描き分け、輪郭をあえてぼんやりさせます」。近景を描き込むときは画面を拡大してディテールを描き込み、より密度を濃く。遠景も随所を画面拡大し、細かなモチーフが“塗り”で描き込まれます。
液晶ペンタブレットなら
アナログ・デジタル両方のメリットが
「私の初ペンタブレットは、中学2年のときのIntuos2で、3年ほど前にCintiqを導入してフルデジタル環境になりました。デジタル環境は色や線の修正や変更が簡単なのも嬉しいです。私はキャラクターを描く際に、肌、髪、服もパーツごとに細かくレイヤーを分けて描きますが、髪の毛を後から金髪にするとか、服の一部だけ色を変える作業もデジタルならラクにできます。私の経験でお話すると、アナログで絵を描いている感覚や描き味をデジタルでもそのまま味わえるのは、やはり板型ペンタブレットより液晶ペンタブレット。デジタル環境ならではのメリットとアナログで描くメリットの、いいとこ取りができますね」
Cintiq 24HD初出:日本マンガ芸術学院広告イラスト