クルマやバイク、パワープロダクツやロボットなど
「物」として製造される工業製品の作画・デザインとは

3D化を前提としつつも感情に訴える作画を目指し
デザイナーほぼ全員が液晶ペンタブレットを使用
人々の生活に存在する道具、機械、製品を作り上げるプロダクトデザインは、対象も内容も多種多様。プロダクトデザインは実際に多数の人々の手に渡り、使われることが前提なので、斬新でありながらも、よりリアリスティックな感性が求められるだけでなく、デザインそのものも3D化された際のフォルムや実際の使い心地、機能性はもちろん、消費者の好みや時代性にも敏感でなければなりません。 そんなプロダクトデザインの現場でも、液晶ペンタブレットは重要なツールとして活躍しています。3D化が前提となる商品デザインも、制作の原点はプロダクトデザイナーの豊かな感性を、創造性の高いビジュアルに落とし込む=描くことからスタートします。もちろんカーデザインの第一歩も、コンセプト作りを踏まえた上でのラフスケッチから。クルマの外観をデザインするエクステリアデザイナーも、内装を手がけるインテリアデザイナーも、デザインの初期段階から液晶ペンタブレットを使用しているそうで、本田技術研究所のカーデザインの現場では、デザイン室に所属する100名以上のデザイナーほぼ全員が液晶ペンタブレットを使用。人に訴えかけるエモーショナルな作画と、リアルスケールの精密さが要求される繊細な作画の両方に対応しているため、現場でも重宝されているそうです。

株式会社本田技術研究所神吉孝雄(写真左/インテリアデザイナー)阿部允宏(写真右/エクステリアデザイナー)
1948年の設立以来、数々のプロダクトを送り出している日本を代表するモビリティー総合メーカーの研究所。クルマ、オートバイから耕耘機などの汎用製品を筆頭に、近年はASIMOなどの歩行ロボット技術の研究・開発でも知られている。神吉孝雄さん、阿部允宏さんはデザイン室に所属。S2000、ザッツなどを手がけた神吉さんは、内装デザインを担当するインテリアデザイナー。『東京モーターショー2013』で発表された新型車S660のコンセプトデザインを出がけた阿部さんは、クルマの外観デザインを担当するエクステリアデザイナーとして活躍中。

新しいカーデザインのコンセプトイメージを具現化させるための下描きでは、印象に残したい部分を強調するように描いていくそう。「感じたままに筆を走らせることができる液晶ペンタブレットは紙と同じように作業できていいですね」。
“完成車イメージの原形”となる「レンダリング」では、より高解像度で細密な描き込みが必要に。範囲を選択しながら色をのせ、着色しながら丸みや光沢を表現するなど、質感の表現を高めるためにひたすら塗り込み、仕上げていくそうです。

インテリアデザインで重要になるマテリアルとカラー。シートの表面、ハンドル、メーターなど細部に至るまで、質感を表現するためさまざまなテクスチャーを用意してあるそうです。「テクスチャーの貼り替えや着色は繰り返す作業が多いので、液晶ペンタブレットの場合、該当箇所を画面内で集中的に作業できてラクですね」。
最終的に物体として製造するために必要な3D化作業では、液晶ペンタブレットでPhotoshopの作画データとCADソフトの図面を重ね合わせながら、魅力的な2Dデザインのイメージを壊さず3D化していく。「図面とデザイン画のデータを重ねる際も、ペンでデザイン画を直接触りながら動かすことができて便利です」。

大画面だから、エモーショナルな絵が描きやすい
「プロダクトデザインとは言え、私たちデザイナーにとって重要なのは『このクルマに乗ってみたい!』と思っていただけるような、感情に訴えるエモーショナルなデザイン画を描くことです。Cintiq 24HD touchは大画面でペンのストロークが活きるため、我々が心掛けるエモーショナルな絵が描きやすいんです。特にラフスケッチの際は、最も印象に残したい部分を強調しながら大雑把に描くので、感じたままに筆を走らせられるのは重要です。また着色の際は、使いたい色を画面上に置いてパレットを作るのですが、大画面だと作業の邪魔にならずに配置できますし、作業にも集中できます」
Cintiq 24HD touch