イラストレーター
ミュシャ
VTuberのデザインやイラストを数多く手がけ、ライトノベルのイラストなどで活躍する一方で、自身もVTuber葉桜このはとして配信活動を続けるイラストレーター、ミュシャによる「Wacom Cintiq Pro 27」を使ったライブペインディングを公開!(2026年2月3日撮影)
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Drawing with Wacom 154 / ミュシャ インタビュー
ミュシャさんのペンタブレット・ヒストリー
「秋の狐っ娘」webponコラボイラスト(2025)
©ミュシャ
――ミュシャさんがデジタルで絵を描き始めたのはいつ頃ですか?
中学1年生の頃に、ニンテンドーDSiの『うごくメモ帳』でよくパラパラアニメを作って投稿したりしていて、それを見ていた母がBamboo Comicを買ってくれたのがきっかけです。もともとコピックでアナログ絵を描いていたので、デジタルならもっと上手く描けると思っていたんですけれど、実際にやってみると板タブに慣れるまでぜんぜん思い通りに描けず、初めての挫折を味わいました(笑)。
――液晶ペンタブレットを使うようになったきっかけは?
フリーになるまで、ずっと最初に買ってもらったBamboo Comicを使っていたんです。大学を辞めて会社でイラストの仕事をするようになってからも、ノートPCのキーボードの上にBambooを置いて描くような作画環境でした。その後、イラストレーターとしての仕事が本格化していくと、母が「仕事で使うなら」といってWacom Cintiq Pro 16(2017)を買ってくれて、そこから液晶ペンタブレットを使っています。最初は板型のペンタブレットと違って手で画面が隠れるのが気になりましたが、すぐに慣れて上手く使いこなせるようになりました。
――現在の作画環境について教えてください。
自作PC(CPU:Intel Core i7-17000K/RAM:64GB/GPU:NVIDIA GeForce RTX3070)に、Wacom Cintiq Pro 16を繋いで使っています。ディスプレイはPixio 248 Wave/WhiteとAcer SigmaLine KG241の2枚ありますが基本的に作画作業はWacom Cintiq Pro 16で完結しています。サブデバイスはLogicool G13をずっと愛用していて、ツールはCLIP STUDIO PAINTをメインに、仕上げのフィルター処理や納品時の調整にAdobe Photoshopを使うことがあります。
――Wacom Cintiq Pro 27を使ってみた感想はいかがでしたか?
まず画面の大きさが印象的でした。普段は腕をデスクに固定して描いていて、腕を大きく動かすことに慣れていないので、このサイズで描くなら少し鍛えないといけないなって(笑)。描き心地はとても良くて、自分が思う以上に自然な線が引けました。Wacom Pro Pen 3の反応も素直で、普段よりもうまく描けたように感じるくらいです。大画面のおかげでロングヘアのような長いストロークも一気に描けるのは大きなメリットですね。画面の感触も違和感がなくて、気持ちよく描くことができたので、もし導入するならフィルムを貼ったりせずに、そのままで使いたいと思いました。
自作PC(CPU:Intel Core i7-17000K/RAM:64GB/GPU:NVIDIA GeForce RTX3070)にWacom Cintiq Pro 16を繋いでいる。
ディスプレイは2枚とも資料表示や配信用のゲーミングモニターで、正面がPixio 248 Wave/White、右手がAcer SigmaLine KG241。配信活動にも使われるデスクで、ディスプレイアームを導入して使いやすいレイアウトになっている。ショートカット類の操作は、奥のLogicool GのキーボードG915ではなく、左手のLogicool G13を愛用している。
ミュシャさんのクリエイティブ・スタイル
和尚『二番目な僕と一番の彼女2』(ファンタジア文庫)
カバーイラスト(2024)
©和尚・ミュシャ/KADOKAWA
――ミュシャさんがふだんイラストを描く時のワークフローを教えてください。
イラストのアイデアは日常的に思いついたものをスマホのメモに書き留めておいて、そこからキャラクターやモチーフを選んで描いていく感じです。仕事の場合はクライアントの指示に沿って制作しますが、「こうした方がかわいいのでは」という案があれば別パターンを提案することもあります。作画工程はシンプルで、最初からCLIP STUDIO PAINTでラフ、線画、塗りという一般的な流れで描き進めていきます。
――作業の中で、線画と塗りの比重はどのようなバランスでしょうか。
もともと漫画家に憧れていたこともあって、モノクロで線をしっかり描くという意識がベースにあるので、自分の中では線画の作業をしている時間が一番楽しいんです。カラーの塗りを褒めていただけることが多いのですが、私としては塗りに苦手意識があって、常に試行錯誤しながら塗っている感じです。塗り込みすぎて色が濁ってしまったりすることもあるので、日々、勉強ですね。
――作画でよく使うブラシやツールについて教えてください。
ラフは、イラストレーターの遠坂あさぎさんが配布している「線画用鉛筆ブラシ」を使っています。線画のクリンナップにはCLIP STUDIO PAINTのデフォルトの丸ペンを使っていて、ベースの塗りもそのまま丸ペンやGペンを使うことが多いです。塗り重ねには「これだけで塗る筆」「柔らか肌ブラシ」といったカスタムブラシを使ったりしますが、基本的に自分でカスタムするのが苦手なので、デフォルトのブラシを使って上手く表現しようという発想ですね。最近、便利だなと思うのは「情報量が増えるペン」というブラシで、ハッチングのような平行線が描けるのでイラストの情報量が手っ取り早く増やせるのが気に入っています。
――塗りや仕上げの工程で意識していることはありますか。
全体的なバランスがとれていて、色味が綺麗ならそれでいいと思っている節がありますが、よく「暖かい雰囲気」とか「光の表現」を褒めていただけるので、そこは自分の強みなのかなと思って意識するようになりました。木漏れ日だったり、どこかから光が当たっているような表現や、髪がなびいていて風が吹いている感じみたいに、キャラクターのいる世界を想像して絵の中に取り込もうとしています。
――ドローイングの工程を見ると、様々な効果を積み重ねて完成に向かっていく様子が興味深いです。具体的にどのようなことをしているのでしょう。
よくやるのが、乗算で塗った影の選択範囲を反転して、他の色で塗りつぶしたレイヤーをスクリーンで重ねる技です。影の縁の色味が少しだけ変わって自然に情報量を増やせるのでおすすめです。仕上げでは、色味が散らかっていたらソフトライトを使って統一感を出したり、絵の雰囲気に合わせてスクリーンで光を足したりすることが多いです。最後に全体に「パステルノイズパターン」という素材をソフトライトで重ねて、画面の質感を変えています。
――線画から細かくパーツが分かれていて、レイヤー構成にも特徴がありますね。
線画の段階からパーツごとに細かくレイヤーを分けると、後から修正がしやすいんです。特にVTuberのLive2Dモデルのデザインや、MVで動かすためのイラストを描いていると、パーツ毎に分解してデータを作る必要があって。表情差分を作ったり、動かしたりすることを想定して普段からかなり細かくパーツを分けて描いています。前髪も束ごとに分けていたり、前後でも分かれていますが、仕上げの時に後ろの髪のレイヤーを複製してぼかすことで、奥行き感を出すのに使ったりもできるんです。
『無原唱レコード Valentine's Day 2026』イラスト(2026)
©RIOT MUSIC
――VTuberのデザインを多くやられていると、キャラクターの特徴を出したり衣装のデザインを考えるのも大変そうですね。
ファッション誌を見るのが好きなので、Amazon Kindleで女性誌を何冊か買って流行の服装やポージングを参考にすることが多いです。これだけVTuberさんの数が増えてくると、キャラクターのモチーフが近かったり、衣装の好みが似ていたりすることはあるので、「その子らしさ」をどう出すかを特に意識しています。本人の好みや活動のコンセプト、ファッションの流行に自分の表現といった要素をすべて組み合わせてデザインしている感じですね。
――これを描きたいというテーマやモチーフがあれば教えてください。
「絵師100人展」に参加した時の展示テーマが、「輝く」だったんです。それを聞いたときに、自分は「花」とか「光」みたいな、明るいモチーフを描くのが好きなんだと改めて認識したんです。子どもの頃から自然に囲まれた環境で育って、お婆ちゃんが花の世話をしていたり、お爺ちゃんが畑仕事をしているのを見ていたので、そういう光景が自分の根底にあるのかなと思っています。
――ミュシャさんが絵を描く上で影響を受けた作家や作品はありますか。
小学校に入った頃から「ちゃお」や「なかよし」などの少女漫画を読んでいて、特にPEACH-PIT先生の作品が好きでした。『しゅごキャラ』や『ローゼンメイデン』を1ページまるごと模写したり、カラー扉を真似してコピックで描いたりしていたので、PEACH-PIT先生の影響は大きいですね。もちろんペンネームの由来になっているアルフォンス・ミュシャも好きで、女性の髪の毛や身体の曲線美だったり、植物モチーフの表現に影響を受けていますね。
ミュシャさんおすすめの影の縁に色を乗せるテクニック。
乗算で塗った影のレイヤーから選択範囲を作り[選択範囲の反転]で反転して乗せたい色で塗りつぶしたレイヤーを作成して上に重ねる。塗りつぶしの選択範囲を[レイヤーマスク]にして、合成モードを[スクリーン]にすると、影の縁に自然な色が加わって、お手軽に塗りの情報量を増やすことができる。髪の毛の影や艶を塗るのにも応用できるとか。
※動画では15:11からミュシャさんが衿に落ちる影を塗る様子を見ることができます。
ミュシャさんのクリエイターズ・ストーリー
「光彩」絵師100人展 14 出展イラスト(2024)
©産経新聞社/ミュシャ
――ミュシャさんが将来の進路として、絵の道を選んだのはいつ頃ですか?
絵を描くのが好きな母が、3歳の私が描いた絵を見たときに、この子の絵の才能を伸ばしてあげたいと思ったらしくて。小学生の頃には自分でも絵を仕事にしたいと思って、県立の美術専門高校に進学しようと決めていました。中学に入ってからは推薦を得るために学級委員や生徒会に立候補したり、実技を学ぶために美術予備校の冬期講習に通わせてもらったりと、計画的にコツコツ頑張って、目標の高校に進学することができたんです。
――高校で本格的に絵を学び始めたんですね。大学も美術系に進んだのでしょうか。
高校で本格的にデッサンや美術を学び始めたのですが、ビジュアルデザインの先生が厳しいけれど愛がある素敵な先生で、この先生みたいな美術教師になるのもいいかもと思って、先生と同じ美大に進学したんです。でも初めて上京しての学生生活が厳しくて、けっきょく体を壊して1年で辞めてしまうことになって。
――そこからどのようにして絵の仕事をするようになったんですか?
当時、Twitter(現X)で60分で絵を完成させる「ワンドロ」が流行っていて、ミュシャ名義のアカウントで毎日1枚、「チェインクロニクル」のファンアートを投稿していたんです。学校を辞めたタイミングで、「誰か拾ってください」とツイートしたらフォロワーのイラストレーターさんの紹介で、マンガ制作会社に採用していただけました。そこで企業パンフレットの漫画を描いたり、女性向けマンガや青年マンガのアシスタントで絵柄をあわせて描く経験をして、自分の仕事の幅を広げることができたことが、今の活動にも活きている気がします。
――仕事以外で、インターネットや同人活動などで個人的に作品を発表することはしていましたか?
「うごメモ」をやっていた頃に、投稿サイトでわりと人気があったので、調子にのってアメブロに自分の作品を載せるサイトを作ったのが最初です。高校ではオタクの友達も多かったので、一緒にやろうよと誘って地元の即売会にサークル参加したりしていました。『イナズマイレブン』やボーカロイドが好きで、今みたいに印刷所に頼んで本を作れなかったので、家のプリンターでステッカーを作ったりしていましたね。
当時からフットワークは軽い方だったと思います。
――フリーのイラストレーターとして活動するようになったのは、どんなきっかけがあったのでしょうか。
就職して1年くらい経って、メンタルを崩して仕事に行けなくなってしまい、結果的に会社を辞めることになったんです。外に行くことも辛かったので失業手当を受け取りにも行けなくって……家にいたままできる個人依頼や、ネット経由でいただく企業のお仕事で生活をするしかないという状況だったので、なし崩し的にフリーランスになるような感じでした。ただ、SNSにイラストを投稿していたおかげで、少しずついただけるお仕事も増えていって、なんとかイラストレーターとして続けていくことができるようになりました。
VTuber「白雪ひな」(StelLive)新衣装(2024)
©StelLive
――フリーになって初めての商業のお仕事はどのようなものでしたか?
『転生令嬢は庶民の味に飢えている』(著・柚木原みやこ/アルファポリス)という女性向けのライトノベルのイラストです。pixivやTwitterに投稿していた絵を見て依頼をいただいたのですが、まだまだ自分の絵が未熟で、私でいいのか?という不安と、頑張らなきゃというプレッシャーがありましたね。当時は『グランブルーファンタジー』にはまっていて、ファンアートで男性キャラなど幅広いキャラクターを描いていたので、任せられると思っていただけたのかなと。
――ミュシャさんにとって転機になったお仕事はありますか?
pixivで開催された「ミライアカリVTuberコンテスト」で特別賞をいただいたことです。審査員のミライアカリちゃんが選んでくれて、受賞作がそのままIRIAMのVライバーとしてデビューすることになったので、私にとって初めてのVTuber関連のお仕事になったんです。ちょうどVTuberというジャンルが伸び始める時期で、これからフリーランスとしてやっていこうというタイミングでVTuberと関わることができたのは、大きな転機になりました。
――ミュシャさん自身も、VTuber「葉桜このは」として配信活動をされていますよね。
コンテストの受賞作以外にもIRIAMでアバター用イラストを描くことになり、打ち合わせの場で「いい声をしていますね」と褒めていただいたんです。それを真に受けて、自分もちょっとやってみるか、みたいなノリでセルフ受肉(VTuberデビュー)しました(笑)。2019年の10月が初配信なので、個人勢としてもわりと早いほうだったと思います。
――VTuber活動を通して、イラストレーターとしてのお仕事になにか影響はありましたか?
Live2Dの仕様や、VTuberのデザインに必要なことを理解できるようになったのはもちろんですが、自分自身のVTuber活動を通して人となりを知ってくれたVTuberさんからの依頼がすごく増えたんですよ。Live2Dモデルを自作していることも、私に依頼するとこんな感じになるんだというポートフォリオとして機能しているみたいで。クライアントに対する安心感や信頼にも繋がっているので、VTuberとして配信をやってよかったなと思っています。
――これまで手掛けたお仕事の中で、特に印象に残っているものはありますか?
「絵師100人展」に参加するのが昔からの憧れだったので、「絵師100人展 14」に出展できたことは嬉しかったですね。デザインを担当したVTuberの子たちも、みんな大切な存在だと思っています。韓国の「StelLive」からデビューした白雪ひなちゃんというVTuberの子は、日本だけじゃなく韓国でも人気があるので、この子をきっかけに私も韓国のイラストレーターやファンの方と交流ができたんです。これから日本での活動も増えそうなのでとても楽しみですし、私にとっての代表作といえる存在だと感じています。
『hololive OFFICIAL CARD GAME』ブースターパック
「ディーヴァフィーバー」カードイラスト(2026)
© COVER
――ミュシャさんがこの先やってみたいお仕事や、挑戦してみたいことはありますか?
イラストを担当したライトノベル作品のアニメ化が夢なんです。そのために、イラストレーターとしてどれだけイラストの力で作品を後押しできるかが重要だと思っています。去年までしばらく休んでいたVTuber活動を再開したのは、生成AIが出てきたことで、「誰が描いたのか」が重要な時代になると感じたからなんですよ。「ミュシャが描いたから応援したい」と思ってもらうことが作品に関わる全ての人の利益にも繋がるはずなので、もっと人気者になって、少しでも多くの人に担当したお仕事のグッズや書籍を手に取ってもらいたいですね。
――最近のお仕事について教えてください。
3月に発売された『hololive OFFICIAL CARD GAME』ブースターパック「ディーヴァフィーバー」でカードイラストを3枚、担当しています。これまでカードゲームのイラストを描いたことがなかったので、嬉しかったです。ライトノベルでは、ダッシュエックス文庫から2月に発売された『どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します』(著・水神瑠架/集英社)という作品のイラストを描かせてもらいました。集英社Web小説大賞の受賞作で、フリーになった当時に描いていた女性向け転生ものみたいな物語なので、初心に帰った気持ちになったお仕事です。
――ミュシャさんにとってワコムのペンタブレットとはどのような存在ですか。
これが無ければお仕事ができない、かけがえのない相棒のような存在です。もしペンタブレットが無かったら、アナログで描いて持ち込みとかするしかなかったと思うんですけれど、それを自分がやれたかと言われると、たぶん無理だったので。今使っているWacom Cintiq Pro 16も、壊れることなくずっと使えているので、頼りにしています。
取材日:2026年2月6日
インタビュー・構成:平岩真輔(Digitalpaint.jp)
画像をクリックすると今回制作した作品をご覧いただけます。
ミュシャ
大分県出身のイラストレーター。2018年4月よりフリーのイラストレーターとして活動をはじめ、VTuberのキャラクターデザインや、MVなどの動画イラスト、グッズイラストなどを数多く手掛けるほか、ライトノベルのイラストでも活躍している。人気VTuber「寧々丸」「白雪ひな」のママ(キャラクターデザイン担当)として知られるほか、自身もVTuber「葉桜このは」として配信活動を続けている。
⇒ twitter:@misa_chainchroA
⇒ Web:mucha 公式サイト
⇒ YouTube:葉桜このはチャンネル




