イラストレーター
loundraw『君の膵臓をたべたい 』『我もまたアルカディアにあり』のイラスト作品などで知られる新進気鋭の若手イラストレーター、loundrawさんによる、液晶ペンタブレット「Cintiq 27QHD touch」を使ったライブペインティングを公開!
loundraw インタビュー
- ――loundrawさんが絵を描くようになった経緯を教えてください。
- きっかけははっきりと覚えていませんが、小学2年生くらいから鉛筆で落書きをしていたようです。自分がサッカーをしてよく遊んでいたということもあって、サッカーを題材にしたマンガなどを描いていました。また、実家にはもともとパソコンが置いてあったので、それを使ってお絵描きをしてみたこともあります。ただ、マウスをうまく操作して思い通りの絵を描くことができず、やり始めて早々投げ出してしまいました。
- ――早い段階からデジタル作画に触れていたのですね。
- デジタルで作業することができたら、アナログでの作業に比べて色々なことが楽になるんじゃないかと思い、憧れていたんです。アナログで制作する場合、水彩画でも油絵でも、着彩のための画材準備が大掛かりになるらしいと知って、そこにハードルを感じていました。パソコン上でなら、専用のアプリケーションをひとつ用意すれば作業がだいたいそこで完結できるという点で準備が簡単ですし、スポイトツールやカラーパレットなどの機能が充実しているため彩色がしやすいです。一方で入力ツールとしては、絵筆に似ているという点でアナログと同様に直感的な作業が可能なペンタブレットの方が、少なくともマウスよりは都合がよさそうだとも思っていました。実際に使ってみると、ペンタブレットは期待以上の使い心地だったので、その後はデジタルでのイラスト制作にのめり込んでいきました。

プライベートワーク
©loundraw
- ――ペンタブレットを導入した経緯を教えてください。
- 中学2年生のころに、両親がIntuos4のMediumサイズを買ってくれました。両親ともに大学の教員をしていて、資料や試験問題用のグラフ制作のためにペンタブレットを購入したそうなのですが、結局は使用する機会がなかったようで、僕がもらえることになったのです。もともと僕がペンタブレットに興味を示していたことを知っていたと思うので、実際には両親が気を利かせてプレゼントしてくれたものだと思っています。

プライベートワーク
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- ――デジタル環境を整備してからはどのように活動されていたのですか。
- 最初のころは、PCでイラストを描いたら、そのままPCの中に保存しておしまいでした。その後、ネット上でpixivやDeviantArtといった、イラストを共有するSNSを偶然見つけ、それからはSNSで公開するのを励みにしてイラスト制作をするようになりました。特にpixivとの出会いは、単に作品の発表場所を得たという以上に、僕にとっては画期的なものでした。当初は閲覧数に恵まれなかったのですが、2012年の12月30日にpixivへ投稿したイラストがとても大きな反響を呼びまして、オリジナル作品のランキングで1位を獲得できたんです。その作品は現時点で10万以上の閲覧数を獲得していて、たくさんの人にフォローしていただいています。それ以降に発表した作品は、コンスタントにランキング上位に入るようになりました。この機会のおかげで、それまではひとりのアマチュアイラストレーターに過ぎなかった自分が、多くのユーザーに注目されるようになり、結果として編集者の方にまで声をかけていただけるなど、プロの仕事を始めるきっかけになりました。
- ――プロのイラストレーターとしてはどのように活動されていますか。
- 私は現在大学3年生ですが、いちばん最初の仕事の依頼は高校3年生のときにいただきました。積極的に仕事の依頼をお引き受けするようになったのは大学入学後で、現在は小説のカバーイラスト制作を中心に活動しています。依頼を受けて仕事をする中で、依頼者のニーズを満たすことの重要性に気づきました。それ以前は好きなものを自分が好きなように描けばいいとしか思っていませんでしたが、意識がガラリと変わりましたね。
- ――意識が変わった結果、具体的にどのようなことに気をつけて制作されるようになりましたか。
- ぱっと見たときに「この絵いいな」と直感的に思ってもらえるような構成をすることです。じっくり見たらどんな作品にもいい部分が見つかると思うのですが、むしろ、興味を持ってもらうために絵を見た瞬間の第一印象をよくしたいんです。具体的には、制作時に画面をすごく小さくして確認するようにしています。この確認方法で自分が「これはいいな」と自信を持って思えた作品は、だいたい他の人からも非常によい評価をいただいています。こういうことは、実はpixivに投稿していたときから注意していました。ですが、小説のイラスト制作をする中で、より重要な注意点だと再認識するようになりました。

プライベートワーク
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- ――思い入れの深い仕事はありますか。
- 入間人間さんの『僕の小規模な自殺』です。僕はイラストレーターですから、基本的にカバーデザインにはタッチしません。しかし、カバーイラストは本の表紙になるものですから、単にきれいなイラストを描けばいいのではなく、気にしなければならない要素があります。たとえばタイトルや作家名が上に重なった際に見栄えが悪くならないか、表紙として世に出たときに店頭でお客さんの目に止まりやすいか、などは気にしなければならないポイントであると僕は考えています。そこで、自分なりにカバーデザインを想定した上で制作を行い、その意図を編集者の方と時間をかけてしっかりと共有するようにしました。こういうことはデザイナーさんの仕事の領域に踏み込むものなのかもしれませんが、結果として『僕の小規模な自殺』では僕の意図を汲み取ってもらった装丁に仕上がったので、特に気に入っています。

プライベートワーク
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- ――現在お使いのペンタブレットや制作ツールはなんですか?
- いま使っているのはIntuos4 Extra Largeです。最初に買ってもらった Mediumサイズも気に入っていたのですが、描画エリアが小さいとどうしても線がぶれやすくなってしまい、大きいサイズの方が画面をズームアウトして作業をする際に正確な線を引きやすいと思い、買い替えました。実際に大きいペンタブレットを導入してみると、それこそ大きいサイズのイラストを描くのにも便利ですし、アプリケーション上のツール切り替えもしやすいなど、事前に想定していなかった様々な恩恵がありました。
- 主要な制作ツールはSAIとPhotoshop CS6です。ペンタブレットを導入した当初はPhotoshopのみを使用していたのですが、市販のイラスト教本を参考にしていく中で出会ったWindows用ソフトウェア、SAIも併用するようになりました。SAIは動作が軽く、非常に使いやすいのでそのまま使い続けています。Photoshopは、色調補正などイラスト制作の仕上げで活用しています。
- ――今回Cintiq 27QHD touchを使ってみていかがですか?
- 非常によかったのは絵を見ながら直接描けるという点です。画面に直接描くとなると、もしかしたら描画にタイムラグが生じてしまうのではないかといった心配がありましたが、実際に作業してみると全く気になりませんでした。ふだん僕が使用している板型ペンタブレットについては、アナログの画材に似てはいるものの、あくまでもデジタルな作業のための入力ツールであると認識しています。なぜかというと、こちらの作業では手元のペンから板に直接線が引かれるわけではなく、その操作に応じて、手から離れた画面上で描画が行われるからです。つまり遠くから作業を指示している感覚に近いので、客観的に絵を見ざるを得ない部分が大きいんですね。一方で液晶ペンタブレットでは、アナログで制作しているかのように画面に直接線を引き、色を塗ることができるので、自分が作品に深く没入しながら作業できるということに驚きました。また、ツールの操作をサポートしてくれるExpressKey Remoteを、自分に都合のいい場所に設置できるのも便利でした。こういう形で、絵を描くこと以外のストレスが少なくなるのはとてもよいことだと感じています。

プライベートワーク
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- ――最後に今後の展望を教えてください。
- ふたつの展望を持っています。ひとつはプロのクリエイターとして、能動的な提案ができる人材になりたいということです。現在は仕事の依頼を受けてそのニーズを満たすという取り組み方をしていますが、
プライベートワーク
©loundraw - もうひとつは、制作をする上での表現の方法論を探求していきたいと考えています。個人的な関心として、どのような形で平面的な絵画の中に「立体感」を生み出すか、ということをテーマにしています。現時点でも自分の中にはっきりとした方向性はあり、たとえばできるだけ現実の物理法則に則した絵にする、というような原則がそのひとつなのですが、絵というものは現実そのものではないので、絵ならではのリアリティを表現する必要があります。こういった追求すべき自分なりのテーマに挑んでいく中で、表現の方法論をもっと洗練させていきたいです。
取材日:2015年8月27日
インタビュー・構成:梵天編集部
loundraw
イラストレーター。透明感の光る美しい色彩と、論理的な設計に基づいた緻密な空間構成を魅力とする、新進気鋭のイラストレーター。永田ガラ著『星の眠る湖へ ―愛を探しに―』(メディアワークス文庫)のカバーイラストで10代にしてデビュー。以後、『僕の小規模な自殺』(メディアワークス文庫)、『君の膵臓をたべたい』(双葉社)、『我もまたアルカディアにあり』(ハヤカワ文庫JA)など、様々な小説作品の装画で活躍している。
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