イラストレーター
森野ヒロカードゲーム『バトルスピリッツ』(『ウルトラ怪獣超決戦』など BANDAI)のコラボブースター「ウルトラ怪獣超決戦」や、ゲーム『LORD of VERMILION ARENA』(スクウェア・エニックス)で、幻想的な生物の写実的な描写が評価されてきたイラストレーター森野ヒロさんによる、液晶ペンタブレット「Cintiq 27QHD touch」を使ったライブペインティングを公開!
森野ヒロ インタビュー
- ―― 森野さんがイラストと関わるようになった経緯を教えてください。
- 実はイラストに縁がない生活を送っていたんですよね。ものづくりは好きで、工作や機械いじりはよくしていたんですが、概ね平凡な少年でした。強いて言えば、転機になったのは高校ですね。美術部に入ったんです。でも絵を描きたかったのではなくて、廃部寸前だったので乗っ取って軽音部にしてやろうとしていました(笑)。その計画は失敗したんですが、自分はなんとなく部に残って、我流で絵を描いていたんですよね。そして高校卒業の時期が来ました。ということは部活も卒業するため、絵を描かなきゃいけない理由がなくなりました。そういう状況になったときに「もっと絵を描きたい」という気持ちに気付いたんです。そして、どうせやるならしっかりと技術を身に着けたいとも思った。でも自分は真面目に誰かから習うようなことをしなかったので、絵の基礎も知らないでいた。だから基礎を学ぶために専門学校に入ったんです。
- ―― 専門学校での学びはいかがでしたか?
- 絵画科に入り、特に油絵を学びました。幸運なことに、先生に褒められるような腕前になったんです。特に、静物画や人物画といった、見たものを描く内容が褒められました。ただ、実はこういった絵は特別描きたいと思っていたものではなかった。かといって、他にこれが描きたいというものが見つかっていたわけでもありませんでした。やっていることに疑問が生じてしまったため、画家になるという方向性に、リアリティを感じられなかったんですよね。
- ―― ということは絵描きの道からはいったん離れられたのでしょうか。
- そうですね。とりあえず働いていました。測量の仕事のアシスタントをしていたんです。これがまたきつくて、ツルハシを持ってアスファルトを掘削するような肉体労働がたくさんあるんです。この時期は家に帰ったら疲れて寝るだけでしたね。絵の方向性に悩んでいたこともありますが、単純に他のことをする余裕が無かったとも言えます。ただ、この時期に個人的に重要な出会いがありました。
プライベートワーク
© 森野ヒロ
- ―― いったい何でしょうか?
- 僅かな娯楽として画集を見ていたんですが、そのとき寺田克也さんや村田蓮爾さんの作品に出会い、「こういう絵を描いてもいいんだ」というカルチャーショックを受けました。自分はイラストといったらデフォルメされたものという思い込みがあって、単なる写実画でもカートゥーンのようなデフォルメ画でもない絵が存在するという発想がなかったんです。それで、測量の仕事を辞めて、独学でイラストの修業を始めました。それまで人の絵を模写したりしたことはなかったんですけど、このときから熱心に寺田さんや村田さんの絵を真似して練習するようになりました。
- ―― 「絵画」ではなく「イラスト」を描いていく上で何か違いはありましたか。
- 構図の作り方や配色の仕方という点から見れば両者とも一緒だという結論に至りましたね。違うのは見られ方だけなんですよ。実は僕が絵画に対してやる気を失っていた理由に、美術界のマンガやアニメに対する異常な低評価に納得が行かなかったという事情があるんです。マンガ家の冨樫義博さんの『レベルE』なんて美術的にも素晴らしいと思うんですけど、僕の周辺では全然評価されていなかった。でも今はかなり状況が変わって、イラストも柔軟に見られるようになったように思います。
プライベートワーク
© 森野ヒロ
- ―― 職業イラストレーターとして活動を始めた経緯を教えてください。
- 前の仕事を辞めたあと、4年くらい独学で練習して絵のレベルを上げてから、『コミッカーズ』『季刊S』といった雑誌に投稿するようになりました。その後、友人の紹介で日本イラストレーター協会という互助団体に入りましたが、これが功を奏したんですよね。その団体で東京国際ブックフェアというイベントに作品を出展したことがあったんですが、そこで展示した作品をきっかけに宝島社さんから声をかけて頂いて、幻獣などのイラストのムックで絵を描かせて頂けるようになりました。それ以降は作品や仕事の履歴が縁となって、現状のように、小説の挿絵やソーシャルゲームのイラストを担当させて頂くことができております。
- ―― デジタルで制作をするようになったのにはどのような経緯がありましたか。
- これは完全に寺田さんの影響です。彼の手法を取り入れていこうと考えていたときに、まさに彼の『ペインタボン!』という本に出会いました。タイトル通りですが、寺田さんがPainterでイラスト制作する様子などについて記された本です。即座に影響を受けて、勢いでパソコンを揃え、Painterで制作をするようになりました。もともと油絵を描いていたので、絵具のようにかすんだ色合いを出すことができるPainterというソフトはとても性に合いました。
プライベートワーク
© 森野ヒロ
- ―― イラスト制作において大事にしていることはなんですか。
- ちゃんと呼吸しているように、体温があるように描きたいと思っています。幻獣を描くことが多いのですが、これは自然に対抗したいと思っているからです。密林や深海の奥地で発見された新生物の情報がインターネットを見ているとどんどん出てくるじゃないですか。ああいうものを見ると並大抵な想像力を超越している感じがして、だからこそ対抗したいんです。そのためには単に突飛な幻獣を描くだけでなく、そこにリアリティがなくてはいけないんですよね。筋肉や骨の存在を意識しつつ、でも解剖学的な正しさだけでなく、絵としてのリアリティもしっかり演出していきたいという気持ちでいます。
プライベートワーク
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- ―― 現在の制作環境を教えてください。
- 普段はWindowsでPainterを動かし、ペンタブレットはIntuos4 Largeを使用していますが、携帯用としてCintiq Companionも所持しています。メインの環境は板型ペンタブレットですが、液晶ペンタブレットも素晴らしいなと常日頃から思っていました。正直、下塗りから完成直前までの工程では液晶ペンタブレットの方が能率がよいことも多いですし、Cintiq Companionなら急な仕事が入ったときに外出先でも作業ができるので大変な恩恵があります。
- ―― 今回Cintiq 27QHD touchを使ってみた感想はいかがですか?
- やっぱり画面の大きさが凄いですね。これだけ作業領域が広いとさすがに描きやすいです。Cintiq Companionと比較するのは極端なのかもしれませんが、こちらではしょっちゅう画像を拡大する作業をしているのに対し、Cintiq 27QHD touchではその必要がないので作業がスムーズに進行できます。サイズが大きいこともあって遅延の心配をしていましたが、そういうことも全くありませんね。またExpressKey Remoteは非常に使いやすくて、すでにコントローラーを使用してイラスト制作をしている人は乗り換えが簡単そうだなと思いました。それから、これは直感的な感想なんですが、画面の大きさや発色のよさにアナログのような使い心地があるので、油絵のような質感を再現できるPainterというソフトとの相性が良さそうだとも感じました。
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- ―― 最後に今後の展望を教えてください。
- やったことのない仕事をどんどんやっていきたいという気持ちがあります。実はゲーマーでして、コンシューマーやアーケードゲームのしごとに携わってみたいという本音もあるのですが(笑)。やはり自分の発想だけで練習をしていると袋小路に入ってしまうんですよね。むしろ仕事という形で外部の発想を頂くことで描ける絵の幅が広がると思っています。
取材日:2016年5月30日
インタビュー・構成:梵天編集部
森野ヒロ
神話の存在や幻獣といった空想的なキャラクターを、まるでその目で見たかのように写実的に描き出すセンスと筆致が評価されてきたクリエイター。その腕前が認められ、カードゲーム『バトルスピリッツ』のコラボブースターでは、「ウルトラマン」シリーズの怪獣が活躍する『ウルトラ怪獣超決戦』のイラストに抜擢された。その他代表的な仕事に『LORD of VERMILION ARENA』(スクウェア・エニックス)や『幻獣イラスト大辞典』(宝島社)などがある
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