イラストレーター
ニリツ鮮やかな色遣いや艶のある線によって織りなされる、ポップでセクシーなイラストレーションが魅力的で、『あたしら憂鬱中学生』(T-LINE ノベルス)や『ジンクスゲーム』(GA文庫)の挿絵でも知られるイラストレーターのニリツさんによる、液晶ペンタブレット「Cintiq 27QHD touch」を使ったライブペインティングを公開!
ニリツ インタビュー
- ――ニリツさんの少年時代の様子を教えてください。
- 平均的な悪ガキでしたね。趣味といえばマンガを読んだり、ミニ四駆をやったり、ファミコンで遊んだり。『ストリートファイターⅡ』にはハマったので、少し思い出深いかな。高校に入った後はモテたい一心で軽音部に入り、ドラム三昧の3年間を送りました。特にモテたりはしなかったんですが、3年間で400曲くらいはやりましたね。よくコピーしていたバンドは「Mr.Children」「THE YELLOW MONKEY」「Offspring」など。下手なりに、とにかく演奏することが楽しかったですね。
- ――高校卒業後の進路はどうされましたか。
- デザイナーをやっている父の影響もあって、高校2年生の時に美大受験を決めました。予備校にも入って準備を始めたんですが、天才的なクラスメイトの画力を目の当たりにしたりして、落ち込みましたね。工夫して技術の無さをごまかさないと合格は難しいと思い、見栄えのする構図や塗り方を研究しました。おかげで一浪後に多摩美術大学の情報デザイン学科に合格できました。正直、浪人時代は孤独でつらく、何が何でも抜け出したいという気持ちがかなり強かったです。
- ――待望の大学生活はいかがでしたか?
- 落ちこぼれました(笑)。基礎能力が足りていなかったので授業についていけないんですよ。しかも生活費を自分でバイトして稼いでいたので昼間は眠いという。放課後は、やりたかった古武術部の活動に逃避していました。つらかったのが、休みがちだとクラスの中で浮いてしまうということですね。デザイン学科は共同制作も多く、コミュニケーション能力が非常に重要で、僕にはその能力が欠けていました。それで留年もしてしまい、これでは大学にいても仕方ないということで、5年目に中退しました。
東京グラフィックデザイナーズクラブ主催
展覧会「プレゼント」出展イラスト
©ニリツ
- ――その後は就職されたんですよね。
- 在学中に、同級生に誘われてゲーム会社でアルバイトをしていました。そこでウェブサイトのリニューアルの仕事があって、デザイン案をいくつか作って社長に提案をしたところ、モックアップを複数提出するというプロのような仕事の仕方を気に入ってもらえたんですよ。それが縁で、中退後その会社に就職しました。ただ、デザイン以外にも音響エンジニアをやったりしていて、多忙からか体を壊して退社しました。イラストの仕事を始めたのはそれからなんですよね。
- ――なぜイラストをお仕事になさったんですか。
- 経験したことのあるフリーの仕事がイラストだけだったので、それに飛びついた感じです。在職中に、会社と社屋が一緒だった編集プロダクションが僕に仕事を振ってくれて、それで副業として絵を描いたことがあったんですよね。フリーになってからはまずコミケに申し込んだのですが、そこで同人作家兼イラストレーターになり、その活動が縁で商業仕事も頂くようになりました。
- ――イラストレーターとしてやっていく上で何が大変でしたか?
- 僕は天才ではないので、技術的な蓄積を得るために時間がかかったことですかね。逆に言えば、イラストはアートとは異なって、センスよりも技術が重要なので、努力すれば誰でも描くことができるというのが僕の考えなんです。だから、僕自身今の絵が描けるようになるまで本当に努力を積み上げてきたので、自分の絵をセンスや才能の一言で片付けられるのは本当に嫌ですね。今でも、かっこよさやかわいさのセンサーを磨くために、新しい作品は一通りチェックするようにしています。
- ――影響を受けた作家について教えてください。
- もともとはかっこいい絵柄が好きで、その点で村田蓮爾さんと田島昭宇さんの絵柄に憧れていました。一方、友人に薦められて、いとうのいぢさんの絵を知って「なにこれすっごくかわいい!」と激しい衝撃を受けました。スタイリッシュなものが好きだったのに、かわいいものも描いてみたいと思わされたんです。そのときの矛盾した気持ちを表現した「ニリツハイハン」(二律背反)という言葉が、オフィシャルサイトの名前兼ペンネームの由来となっています。
- ――制作する上で気をつけていることは何ですか?
-
「この絵を見せることで何をしたいのか」というコンセプトを定めて、それを実現することですね。嬉しくさせたいならそういう絵にする必要がありますし、書籍のカバーだったら棚で目立つ必要がありますよね。根本的には、見てもらう、手にとってもらうことが大事で、そのために僕が心がけているのは情報のレイアウトですね。まずはキャラクターの目に情報量を詰め込むことで読者の目を留める。
『ジンクスゲーム1』(GA文庫)
カバーイラスト
©Adachi Ataru / SB Creative Corp. - ――デジタルで制作をするようになった経緯を教えてください。
- デザイン学科でPCが必要になって、大学の助手さんに貸してもらったのがきっかけですね。そこで当時のintuosも借りました。後に同じものを自分でも購入した後、Intuos3に乗り換えました。イラスト制作用のソフトについては、最初はPainterから入りました。その後Photoshop7.0を一時期使って、最終的にSAIに行き着きました。乗り換えの理由は、よい噂を聞いたものを触ってみて感触がよかったからですね。
- ――現在の制作環境はどのようなものですか。
- OSはWindows 10で、ソフトはSAIとPhotoshop CCです。色味の加工のためにPhotoshopも手放せないですね。あと外部デバイスも使っていて、キャンバスの拡大縮小機能などはフットペダルにアサインしています。それからPowerMateというツマミ型のコントローラーを使っていて、これで色調やブラシの調整を行ったりしていますね。それに加えてキーボードのショートカットキーなども多用しています。あと自宅ではモニターを3台使っていて、作業、全体像確認、Youtube視聴(笑)などの役割を与えています。
『あたしら憂鬱中学生』(T-LINEノベルス)
カバーイラスト
©日日日/辰巳出版株式会社
『大陸英雄戦記2』(アース・スターノベル)
カバーイラスト
©Waruichi / Nilitsu 2015
- ――今回Cintiq 27QHD touchを使ってみた感想はいかがでしたか?
-
初体験でしたが、すぐに乗り換えて問題なさそうですね。画面が大きく細部まで表示できちゃうということで、今回の撮影ではかなり線にこだわりました。今回に限ったことではないですが、狙い通りの線を一発で引けることは少ないので、画面の拡大縮小を駆使してかなり手を入れています。
『電撃萌王』2016年6月号 ピンナップイラスト
©KADOKAWA - ――最後に今後の展望を教えてください。
- ぜひキャラクターデザインをやりたいと思っています。キャラクターが動くところを見たいんですよ。僕は二次元のイラストを作っているときも奥行きや空間を意識して絵を描いていて、ちょうどこの前自分のキャラクターイラストを元にフィギュアを作る仕事に携わったんですけど、ばっちりハマって本当に気持ちよかったです。普段から、上から見ても下から見てもかわいくしたいと思って考えているんです。その行き着く先として、アニメのキャラクターデザインで自分のキャラクターが動いているところを見られたら一番いいですね。
取材日:2016年8月24日
インタビュー・構成:村上裕一(梵天)
ニリツ
鮮やかな色遣いや艶のある線によって織りなされる、ポップでセクシーなイラストレーションが魅力的なイラストレーター。戦略的に構成されたイラストの数々は読者の目を離さない。イラストを担当した作品に『あたしら憂鬱中学生』(T-LINE ノベルス)や『ジンクスゲーム』(GA文庫)がある他、近年はフィギュアのキャラクターデザインなども手がけている。
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