イラストレーター
おはぎ
重厚に塗り重ねられた色彩による美しい人物表現が魅力で、小林幸子の「歌ってみた」作品である『紅一葉』(黒うさP)の MVイラストやソーシャルゲーム 『レジェンドワールド』(スクウェア・エニックス)のイラストでも知られるイラストレーター・おはぎさんによる、液晶ペンタブレット「Cintiq 27QHD touch」を使ったライブペインティングを公開!
Drawing with Wacom 067 / おはぎ インタビュー
プライベートワーク
©おはぎ
――おはぎさんが絵に触れることになったきっかけを教えて
ください。
小学4年生ぐらいのときに、友だちの影響で『BLEACH』にハマりまして、お絵かきをするようになりました。その友だちのお母さんがイラストレーターをやっていて、お家に遊びに行ったときにペンタブレットを使って仕事をしているところを見たことがあったんです。そのとき「こんな描き方があるんだ」とすごく感動してしまって、しばらく母にねだって、ペンタブレットを購入してもらいました。確かFAVOだったと思います。
――ごく初期からデジタルで絵を描いていたんですね。
そうなりますね。普通のお絵かきソフトは持っていないし、フリーソフトについてもよく知らなかったので、絵を描くとなるとお絵かき掲示板を使うことがほとんどでした。中学生になって美術部に入ったんですが、基本的にオタク的な雑談をするコミュニティだったので、ほとんど絵は描きませんでした。そんな調子で今に至っているので、アナログでは全く絵が描けません(笑)。
――本格的に絵に取り組むようになったきっかけは何でしたか。
ニコニコ動画に出会ったことですね。美術部の先輩に教わって見てみたら、すごくおもしろくて。ボーカロイドのファンアートを描くようになりました。そんな生活を高校進学後も続けていて、自分のイラストを見た歌い手やボカロPの方からイラストの依頼をもらうようになりました。それをひたすらこなしていたら、しばらくして商業のご依頼をいただくようになって、今の仕事の仕方に繋がっています。
プライベートワーク
©おはぎ
――高校卒業後の進路はどう考えていましたか?
卒業後はイラストとは関係のない仕事に就職するつもりでしたが、在学中にイラストの依頼をこなしていく中で、このままやっていけそうだなという見込みを持ちました。そこで、特に進学や就職をせず、いただいた依頼をひたすらこなしていきました。ニコニコ動画関連の仕事を中心に、携帯電話の待ち受け画像やデコメ、アルバムのジャケットイラストや関連動画の制作などの仕事に取り組んでいくうちに、他のジャンルのお仕事もいただけるようになりました。
――たいへん順調に活動されていたんですね。何かうまくいく
秘訣があったのでしょうか。
ニコニコ動画が、素人がイラストレーターとして修行していく場所としてよかったのかなと思います。投稿されると、コメントですぐに素直な反応をもらえますから。批判を受けて落ち込むこともありますけど、褒めてもらえるとやる気が出ます。褒められるために絵を描いているわけではないけど、反応がないと描き続けるモチベーションが無くなってしまうんですよね。それから、人から依頼を受けるというのも仕事の練習になりました。ニーズを聞いてそれを絵に落としこんだり、あるいは与えられた題材からイメージをふくらませるというような、制約がある状況での仕事の訓練を積むことができました。
――イラストを描いていく上で影響を受けた人や作品はありますか?
秋赤音さんです。秋赤音さんのイラストの、ハッとさせられるような色使いと眼力の強さが特に好きで、新作が投稿されるたびに大きな衝撃を受け続けています。ご縁があって秋さんとは一緒に活動させていただいたこともあり、とてもいい経験ができました。
ワコム キャンペーン企画
「Create more」制作イラスト
©おはぎ
――印象的だった仕事は何かありますか?
イラストレーターとしてセミナーの講師をさせていただいたことと、小林幸子さんの「歌ってみた」動画にイラストを描かせていただいたことです。セミナーについては、まさか自分が人に教える立場になるなんて思ってもみなかったので。教えることによって、自分でも気づくことがあったりして、自分自身も学ばせていただいています。
小林幸子さんについては、幸子さんが「歌ってみた」を投稿する際に、動画やイラストのお手伝いをニコニコ動画が募集していて、そこに応募して運よく選ばれました。私は「紅一葉」(黒うさP)の動画で幸子さんの似顔絵を描かせていただいたのですが、そのとき、扇子を持っている姿の角度を伝えるために、手の画像を資料としていただいたりして、すごい仕事に関わっているんだなと感じました。その後も、デジタルデータではありますが、直筆のお礼のメールを頂戴したり、コミケでご挨拶したらとても優しく対応していただけたりと感激しきりでした。しかも、幸子さんと仕事をしたということで、普段は仕事に対して何も言わないような親戚から電話が来たりして、影響力の大きさを感じました
――イラストを制作する上で気をつけていることはありますか?
自分が見たい絵を実現するということですね。私の場合、魅力的な顔さえ描ければ、ヘアスタイルやコーディネート、背景などは後からついてくるんです。逆にいえば顔がうまく描けないといい絵にはなりません。作業をしている中で満足な顔になったな、と思える段階が必ず来るので、そこまで粘ります。この過程はお化粧をする感覚に近いですね。脳内モデルを対象に、ひとりで撮影スタジオをやっているような感じです。私が感じる魅力的な女の子を描き出し、それが他の人にとっても魅力的であれば嬉しいと思って、いつも絵に取り組んでいます。
プライベートワーク
©おはぎ
――現在の制作環境と、これまでの環境の変遷を教えて
ください。
小学生の頃に買ってもらったFAVOとお下がりのノートパソコン(Windows)を使ってイラストを描いていました。FAVOはだいぶ長く使っていたのですが、しっかり絵を描くようになってから友人のイラストレーターのすすめでIntuos4 Smallに乗り換えました。最近、ワコムのCreate moreに出演させていただいたことをきっかけにIntuos Pro mediumを導入しまして、現在も使っています。ソフトウェアはフリーソフトだった頃にSAIを導入してしばらく使っていましたが、CLIP STUDIO PAINTが登場した段階で乗り換えました。便利な機能があり、印刷物の仕事にも使えて重宝しています。
――今回Cintiq 27QHD touchを使ってみた感想は
いかがでしたか?
このサイズの液晶ペンタブレットに触れるのは初体験で、これまでの作業の仕方が通用するかどうか不安でしたが、違和感なく使用することができました。画面が大きいので思い通りに腕をストロークできて、作業効率も上がりそうです。描いているイラストに対する没入感も凄いですね。かなり集中することができました。デジタルの「いくらでも修正が効く」という性質と、アナログの「直接描く」という感覚があいまって、自分の描きたい絵を目指す上での近道がここにあるという感じがしました。
プライベートワーク
©おはぎ
――最後に今後の展望を教えてください。
ライトノベルや小説などの装画の仕事をしたことがないので挑戦してみたいです。装画の仕事にはキャラクターデザインの要素が強く入ってくると思うのですが、魅力的な人物を描き出したいという気持ちがあるので、きっと相乗効果があると思います。それから、自分が生み出したキャラクターが動いたり声がついたりするなど、成長する姿を見られたらとても嬉しいですね。
取材日:2016年11月29日
インタビュー・構成:村上裕一(梵天)
画像をクリックすると今回制作した作品をご覧いただけます。
おはぎ
重厚に塗り重ねられた色彩から生み出された”キュート”な人物造形が魅力的なイラストレーター。コンポーザーのORYOと結成したユニット”FAULHEIT”ではビジュアル周りを担当する。小林幸子の歌唱曲「紅一葉」「吉原ラメント」の映像用イラストや、ソーシャルゲーム 『レジェンドワールド』(スクウェア・エニックス)のカードイラストを手掛けたほか、ワコムのキャンペーン企画「Create more」では日本人アーティストのひとりとして抜擢された。