- ――ワダさんが絵を描き始めたきっかけはなんですか?
- もともと子どものときから絵を描くのが好きでいろいろなキャラクターを模写していました。中学に上がり『Final Fantasy』シリーズや『幻想水滸伝』シリーズなど好きなゲームのイラストを描くようになりました。 作家ではいのまたむつみさんや高河ゆんさんの影響を強く受けています。高校では美術部で水彩や油彩の描き方を学びました。
- ――プロのイラストレーターを目指した経緯を教えてください。
- 絵を描き始めてからは、ゲーム会社で絵を描く仕事につきたいと考えるようになりました。それもあり大学は絵を描く環境と時間がほしかったのでデザインを専攻しています。在学中は自分のサイトでイラストを発表しながら定期的に同人誌を製作していました。ゲーム会社への入社試験では、それらのイラストに動物の絵などを追加する形で課題として提出し試験に臨みました。入社後家庭の事情により3年ほどで辞めることになりましたが、再び絵を描く時間を取れるようになったため、以後はフリーランスとして絵の仕事に携わっています。
- ――ゲーム会社ではどんな仕事を担当していたのでしょうか。
- 背景デザインを担当していました。それまではほとんど背景を描いた経験もなく、オーダーに応えて絵を描くこともなかったため新鮮で楽しかったです。いろいろな経験をさせていただき感謝しています。
©TYPE-MOON ©Marvelous Inc.
- ――フリーランスになったころのお仕事で印象に残っているものはなんですか?
- 『ウルトラジャンプ』のカラーピンナップのご依頼です。「好きに描いていいよ」とおっしゃっていただいたので拙いながらも頑張って描かせていただきました。またワニマガジン発行の村田蓮爾さん責任編集の『robot』に描かせていただいたカラーマンガでは、作業量に対してスケジュールの見積もりが甘く、提出予定日をオーバーしてしまいました。結果的に掲載いただくことはできましたが、いろいろと思うところがあったため強く印象に残っています。それ以来スケジュール管理にはとても気をつけるようになりました。
- ――その後の活動をいくつか紹介していただけますか。
- 2009年にゲーム『Fate/EXTRA』のキャラクターデザインを担当しました。開発ディレクターから声をかけていただき、もともと『Fate』シリーズのファンだったので二つ返事でお請けしました。キャラクターデザイン担当とはいえ私がデザインさせていただいたキャラクターが半分、『Fate』シリーズの生みの親である武内崇さんにキャラクター原案をいただいたものが半分でしたので、気分的に楽だったうえとても勉強になりました。デザインはもちろんそれ以外も武内さんや奈須きのこさん、スタッフの皆様に学ばせていただいたものがたくさんあり、このゲームに関わらせていただいたことをとても幸せに思っています。
©TYPE-MOON ©Marvelous Inc.
- ――ワダさんがデザインされたキャラクターについて教えてください。
- 「赤セイバー」と呼ばれるキャラクターは、「『Fate/stay night』に登場するセイバーのデザインをベースにして、顔は同じ、赤を中心にしたカラーリングで、奔放な性格のキャラ」というディレクターからのオーダーを元にデザインを考えていきました。原作のセイバーはとても清廉なキャラクターなので、その逆の派手で破天荒なイメージをとっかかりに製作しました。髪型やシルエットは変更すると印象が変わりすぎてオーダーから離れてしまいますのでそのままで、それ以外の箇所は原作のセイバーが絶対にやらない、チョイスしない、というディティールの逆振りをコンセプトにしていました。
- ――他のゲームはいかがですか?
-
アーケードゲーム『ガンスリンガー ストラトス』で4体のキャラクターをデザインさせていただきました。私自身はガンシューティングもののゲームが非常に不得手なのでプレイヤーとしては全く通用しないのですが、自分がデザインしたキャラクターをプレイヤーの方々が動かしている様子を見ることができるという、ほかのゲームでは味わえない独特な喜びがあります。
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©MIYABI HASEGAWA , WADARCO 2014
©2014 FIELD-Y - ――小説の挿絵イラストについて教えてください。
- 今は『クィンテット・ファンタズム』(富士見ファンタジア文庫)、『アイドル潜入捜査官 小田切瑛理 』(ポプラ文庫ピュアフル)各シリーズと『英雄伝説 空の軌跡』(ファルコムBOOKS)のゲームノベライズ版の挿絵を担当しています。これまでモノクロの絵をあまり描いてこなかったため、勉強の日々ではありますが、キャラクター主体の挿絵、背景込で一枚の絵として仕上げるもの、作品によって求められるものが違い、とても面白く描かせていただいています。
- ――アニメはいかがですか?
- TVアニメ『レディジュエルペット』では、主人公の女の子4人組のキャラクター原案と衣装のバリエーションの原案を担当しました。イラストレーターは本質的にデザイナーではありませんので、個人的にはイラストレーターに求められる原案というのはプロデザイナーとしての技術ではなく、その人の手癖に基づいたカラーだと思っています。今回はイラストレーターならではの原案がほしいというオーダーをいただいたので、それを踏まえ心の中にいる子どものころの私が好きだった大きなおだんごピンク髪の少女を描かせていただきました。
- ――アニメのデザインをやった感想を教えてください。
- 自分が描いた絵をキャラクターデザイナーの方にアニメ向けにアレンジしていただくというのは初めての経験だったのでとても新鮮でした。かなり先行でキャラクターを描かせていただいたため、そのころはまだどんな内容になるか決まっていませんでした。キャラクターがアニメの中でどう動くかは放映までわからなかったのですが、とてもかわいくリファインしていただけてうれしかったです。
- ――同人活動はいかがですか。
- 絵を描くことは仕事以前に大切な趣味で、中でも同人活動は一番自由に絵を描ける場だと思っています。日記のように自然に描き続けているものなので、練習や勉強も兼ねて毎回そのとき描きたいものを好きなように描いています。一冊の本としての仕上がりを見るのが何より楽しいので、仕事の合間の作業にはなりますが、装丁や印刷も含め今後もできるだけ凝ったものを作っていきたいです。
©'08,'15 SANRIO/SEGA TOYS
S・S/W・TX・JLPC
- ――普段のスケジュールはどのように調整していますか。
- 自分がどれくらいのスピードで描けるか把握したうえで、1日に取り組むペースを決めているので、タスク表を作り、平日は毎日予定通りに仕事をこなすようにしています。土日はオフにし、どうしてもスケジュールが押してしまったときの予備日として設定しています。
- ――キャラクターを描くときのこだわりを教えてください。
- 女性のキャラクターは、それぞれのパーツの大きさや配置など、最終的なバランス調整にとても時間をかけて顔がかわいく見えるよう気をつけています。男性キャラクターは自分の好みを反映させて描くとバリエーションが偏ってしまうため、「こういうキャラにしてください」というクライアントからのオーダーを意識するようにしています。
©2012, 2014 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
- ――ワダさんが好きなモチーフを教えてください。
- 布の質感を描くのが好きです。できているとはとても言えませんが、シルクやコットンといった材質を意識するよう努力はしています。また鳥の羽色をよく色設計の参考にします。自然の中にある直感的にわかる美しい色を大切にしたいと思っています。
- ――今後新しく描いてみたいモチーフはありますか。
- 大物の硬質な無機物を描きたいです。つい布とか花とか好きなものばかりを描いてしまいますので、画面全体の質感のメリハリの幅をもう少し作りたいと思っています。
- ――使用しているペンタブレットとソフトウェアについて教えてください。
- ペンタブレットは、大学入学時にパソコンと同時に「FAVO」を買いました。5、6年ほど使用してから「Intuos2」に買い替え、2008年に「Cintiq 21HD」を買いました。液晶ペンタブレットに替えたことで、絵を描くスピードがずっと速くなり描きこみも細かくなったため、それまでと同じ時間に描ける量が格段に増えました。ソフトウェアは、PhotoshopとPainterを併用していましたが、途中からPainterの簡易版としてSAIを使い始め、現在は線画と彩色をSAI、仕上げをPhotoshopで行っています。
- ――本日、新製品の「Cintiq 27QHD touch」を使われてみていかがですか?
- これまでの「Cintiq」と比べて、直接紙に描いている感覚により近くなったと思います。そのおかげで細かい塗りが求められるところもずいぶん塗りやすくなりました。また画面が横に広く大きいのも便利だと感じました。これだけ画面が大きいと資料とキャンバスを両方表示したまま描けるところが素晴らしいですね。
- ――最後に、次回ご登場いただけるイラストレーターの方を紹介してください。
- 村田蓮爾さんです。三次元的な存在感と二次元的な美しさを極めて高い精度で融合した絵を描かれておられます。 以前、とても細かく美しいB1サイズのポスターを拝見し、どれだけ大きなサイズで描かれたのだろうと実寸をおうかがいしたことがあったのですが、実際にはCDジャケットサイズのイラストでとても驚かされました。私では10年経っても描ける気がしません。折に触れていただいた絵のアドバイスは大切な財産になっています。心より尊敬しているイラストレーターのおひとりです。
作品紹介
『ガンスリンガー ストラトス2』
発売元:スクウェア・エニックス
2012年7月に稼働開始したアーケード対戦ゲームの続編です。ワダアルコさんは初期作から多数のキャラクターデザインを担当。2015年4月にはアニメ化も決定しています。
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