
PALOW.
イラストレーター / キャラクターデザイナー
Illustorator / Character Designer
アニメ・ゲーム・広告・音楽・出版など、幅広い業界でアートワークを手掛ける。
アーティストとしては、幾何学模様とファンタジーやSF的モチーフを組み合わせた作風で知られる。
ワコム製品の使用歴を教えてください
高校生の頃、ワコムのFAVOを最初に購入しました。
そこから歴代のIntuosをそれぞれ買って、今は初代Intuos Proを主に愛用しています。描画面がツルツルして描き味が気に入っています。
新しいWacom Intuos Proの使い心地はいかがでしたか?
とにかく、薄くてコンパクトになった点がいちばん印象的でした。今愛用しているモデルは本体に厚みがあり、描画面に対して余白が大きかったのですが、今回はひとまわりスリムになり、とても快適に使えました。
描き味も、いい意味で"板タブらしさ"が薄れていて、液タブのような繊細さがありました。ペンの入り抜きのような表現も、よりつけやすくなったと思います。
カチカチと回るダイヤルはクリック感も良く、しっかり止まるので使いやすいです。僕は、ペンのサイズ変更や、ツールの切り替えなどを割り当てても便利だと思いました。
あとは、距離感もいいですね。全体がコンパクトになったことで、抱え込むように使える。以前のLサイズモデルは大きすぎて、机の上に置かないと使えない印象がありました。
今回のサイズ感なら、画板みたいに持って使うとか、小型PCとモニターと組み合わせて、今までよりコンパクトな作業環境を作る人が出てきてもおかしくないなと感じました。そういう新しい使い方の可能性もありそうですね。

ずっと板型ペンタブレットを使い続けているのは、どうしてですか?
イラストレーションは、絵とのある種の心の距離が多少近めの方が、気持ちやテンションが入るし、何より描いていて楽しいと思っています。そういう意味では、自分の意のままに、自分の距離感でちゃんとのめり込める、集中できるというのが液タブの良さだと思います。
一方で、板タブはデザイン作業に向いているなと感じています。デザインって、ある程度客観性が必要だったり、今自分が何をどう考えているかを一歩引いて見るほうが、思っている結果につながりやすい気がするんですよね。
僕は、その"一歩離れている"っていう感覚が気に入っていて、何度かメインを液タブに変えてみようとしたこともあるんですが、結局はやっぱり板タブに戻ってきてしまうんです。そんなふうにして、気づけばもう20年くらい使い続けています。
サイズの中でも、Lサイズを選んでいるのはどうしてですか?
画面との比率ですね。小さい描画面で大きな画面に描くと、どうしても精度が落ちるんです。もう、24インチの画面にはLサイズの描画面、という感覚が体に染みついていて。サイズを変えるとカーソルの動きの感覚も変わってしまって、それによっても精度が落ちてしまうんですよね。だから24インチとLサイズの組み合わせをずっと愛用しています。

作業環境について、こだわっていることがあれば教えてください。
僕はリビングで仕事しているのですが、そういう環境だと板タブって、けっこう利点が多いんですよね。たとえばコーヒーを横に置いたり、ちょっとしたお菓子を置いたり、そういうことが液タブよりもしやすくて。僕はこの“シームレスな感じ”を大事にしています。
アナログの油絵とかを描くときって、集中して描いたあとに、ちょっと席を立って離れて見てみる、みたいなテンポ感があるんですよね。そういう感覚が今も自分の中に根付いていて、だからあえて、集中しすぎないようにしているところもあるんです。
制作のフローについて、普段どんな流れで進めているか教えてもらえますか?
キャラクターデザインの場合、共通して言えるのは、まずクライアントさんと打ち合わせをして、「どういうイメージで、何をやりたいのか」というのを丁寧にヒアリングすることを一番大事にしています。ヒアリングが終わったら、それを成すためにどうするか考えたり、資料を見て設計していく。
それがまとまって、ようやく描く作業に入るというのが自分のスタイルです。

アイデアやインスピレーションはどのようなときに浮かんできますか?
パッと思いつかない仕事のときは、机に向かわないで、四六時中ずっと考えていることが多いです。できるだけお題を概念的に広く捉えて、「これいいんじゃないか」と思ったら、机に向かって描いてみます。描くのは速いんですけど、答えに辿り着くまではけっこう回り道しますね。
ただ、僕は別に完璧主義ってわけじゃないんですよ。最低限「面白いな」とか、「これだったら一捻りあるし、洒落てるな」って自分で思えるアイデアだったら、5分で考えようが、すごい時間かけようが、どっちでもいいと思っています。
モチベーションを維持するコツはありますか?
企画に対して、ちゃんと"遊び"として楽しめるように、自分で自分を楽しくするような考え方で仕事に挑む、というのを大事にしています。
「楽しめそうだな」とか「意味を見出せそうだな」とか、この仕事をどうやって楽しんで成果を出すか、毎回ちゃんと考えながらやっています。
それと、人と一緒に仕事をすることの僕なりの醍醐味は、「思っていたのと違うことが、いい意味で起こること」なんです。
人のアイデアがプラスされて、自分はこういうつもりで描いたものが、別の誰かの解釈で全然違う形になる。僕は、それを楽しむようにしています。
そこで印象が変わっていったり、思いもよらない結果が出たりして、それによって盛り上がると、その現象自体が面白いなって感じるんですよね。

今後、新しい製品を使ってやっていきたいことはありますか?
日々行なっているキャラクターデザインやクリエイティブディレクションの仕事というのは、これまでも常にそうであったように、ワコム製品を使い続けていくと思います。
僕はやりたいことが絵に限らずたくさんあるタイプで、こういう企画がやりたいなとか、思いついたことに対して絵を描くことでそれを成立させるということが好きなんです。
何をやるにしても、右手にペンを持っている限りはいろんなことにチャレンジしていきたいと思っています。